従業員満足度(ES)調査を実施しているものの、

「毎年同じような結果が出ている」
「社員から不満や要望は集まるが、どう改善すればよいかわからない」
「調査結果を報告して、そのままになっている」

ということはないでしょうか。

ES調査は社員が職場や仕事についてどのように感じているのかを知るための有効な手段です。
しかし、調査を実施して満足度を測るだけでは、職場はなかなか変わりません。大切なのは、社員の声から課題を見つけ、具体的な改善につなげることです。

本コラムでは、ES調査を「調査して終わり」にしないために、設計・分析・活用の3つの段階から、6つのポイントをあげて解説します。

ES調査が「不満を集めるだけ」になっていないか

ES調査では、「給与に満足しているか」「休暇を取得しやすいか」「業務量は適切か」「上司の評価に納得しているか」といった質問がよく使われます。

もちろん、こうした質問から職場の問題を把握することには意味があります。
しかし、「満足/不満」を確認するだけでは、

  • なぜ不満を感じているのか
  • どこを変えればよいのか
  • 社員自身はどうしたいと考えているのか

まではなかなか見えてきません。

ES調査で重要なのは不満の多さを測ることではなく、改善につながる情報を引き出すことです。そのためには、調査票を配る前の「設計」から考える必要があります。

1.汎用的な質問だけでは、自社の課題が見えにくい

ES調査にはさまざまな質問項目のテンプレートがあり、既存の質問を利用すれば、短時間で調査票をつくることができます。
一方で、どの企業にも当てはまる質問だけでは、自社が抱えている課題を十分に捉えられないことがあります。

職場の状況は会社によって異なります。さらに同じ会社の中でも、営業、製造、管理など部門が違えば、仕事の進め方も直面している問題も違います。

そこで調査設計では、

  • いま社内でどのような問題が起きているのか
  • 経営側は何を課題だと考えているのか
  • 現場ではどのような声が聞かれているのか
  • 調査結果を使って、何を改善したいのか

をあらかじめ整理しておきます。

「何を聞くか」の前に、「何を知りたいのか」を考える。これはES調査でも、顧客満足度調査でも変わりません。

2.社員が本音を答えられる環境をつくる

ES調査では調査内容だけでなく、社員が安心して回答できるかどうかも重要です。
たとえば、「回答した内容から自分が特定されるのではないか」「回答しても、どうせ何も変わらないのではないか」などと思われてしまえば、本音は集まりにくくなります。

そのため、調査を実施する際には、

  • 何のために調査するのか
  • 回答をどのように扱うのか
  • 個人が特定されないよう、どのように集計するのか
  • 結果をどのように活用するのか

を社員に伝えておくことが大切です。必要に応じて、外部の第三者機関による匿名調査とする方法もあります。
調査への協力を求める前に、安心して声を出せる環境をつくることが必要です。

3.平均値だけでなく、「なぜそう感じているか」を見る

ES調査では職場への総合満足度をはじめ、仕事内容、職場環境、人間関係、評価、成長機会など、さまざまな項目を数値で評価してもらうことができます。数値にすることで、「どこに評価の低い項目があるのか」「前回からどのように変化したのか」などを把握しやすくなります。

しかし、数字だけを見ても、その背景まではわかりません。
たとえば、「上司とのコミュニケーション」の評価が低かったとしても、そもそも「話す機会が少ない」のか、「相談しても意見を聞いてもらえない」のかによって、必要な対応は変わります。

そこで役立つのが自由回答です。

4.自由回答は「何でも自由に」ではなく、テーマを絞って聞く

ES調査の最後に、「ご意見・ご要望がございましたら、ご自由にお書きください」という質問を置くことがあります。この聞き方でも意見は集まるものの、テーマが広すぎるため、回答する側も何を書けばよいのか迷ってしまいます。改善につながる声を集めたいのであれば、

「現在の職場に満足している/していない理由を教えてください」
「仕事をしやすくするために、改善した方がよいと思うことを教えてください」
「現在の職場で、今後も続けてほしいと思うことを教えてください」

など何について意見を聞きたいのかを具体的に示す方が答えやすくなります。

自由回答には選択式の質問では想定していなかった課題や、具体的な改善のヒントが含まれていることがあります。一つひとつのコメントを丁寧に読みながら、数値だけでは見えなかった背景を探していきます。

5.調査結果を社員に返す

ES調査で意外に見落とされやすいのが、調査後のフィードバックです。社員は時間を使って調査に回答しています。それに対して、「結局、結果がどうだったのかわからない」「何が改善されたのかわからない」という状態が続けば、次回の調査で協力を得にくくなることも考えられます。

必ずしもすべての要望に応える必要があるわけではありません。

  • どのような声が多かったのか
  • 会社としてどの課題を重要だと考えたのか
  • 何から取り組むのか

を社員と共有することが大切です。

調査結果を、「経営側が見る報告書」で終わらせず、社員と一緒に職場について考える材料にすることで、ES調査の役割が変わってきます。

6.すべてを変えようとせず、「次の一歩」を考える

ES調査をすると、さまざまな課題が見えてきます。制度を変えなければ解決できない問題もあれば、設備やシステムへの投資が必要な問題もあります。

一方で、「情報共有の方法を変えてみる」「他部門との連絡方法を決めてみる」など、現場ですぐに試せることもあるでしょう。
すべての課題を一度に解決しようとするのではなく、まずは、「この結果を踏まえて、自分たちがまず一つ変えるとしたら何か」を考えてみます。その「一歩」を実行し、結果を振り返り、次の改善へ進む。こうしたサイクルをつくることで、ES調査は「社員の満足度を測る調査」から、社員の声を職場の改善に活かす仕組みへと変わっていきます。

ES調査から、エンゲージメント調査へ

ここまで見てきたように、ES調査では、社員が現在の職場や仕事をどのように感じているのかを把握し、その声を職場改善につなげていきます。

しかし、「職場に満足していること」と、「会社が目指す方向を理解し、自ら考えて行動できていること」は同じではありません。
たとえば、「職場には特に不満はないが、会社がどこを目指しているのかわからない」とか、「会社の方針には共感しているが、自分の仕事で何をすればよいのかわからない」ということもあります。

そこで、ES調査からもう一歩視野を広げて考えたいのが、従業員エンゲージメントです。
エンゲージメント調査では、働きやすさや働きがいだけでなく、

  • 会社の目標を理解しているか
  • その方向性に共感しているか
  • 自分の仕事との関係を理解しているか
  • 具体的な場面で自ら判断し、行動できているか

といったところまで見ていきます。

ES調査で社員の声を集め、職場を改善する。さらにその先で、社員一人ひとりが会社の目標と自分の仕事を結びつけ、自ら考えて行動できる状態を考える。この二つを連続したものとして捉えることで、調査から見えてくるものも広がります。

社員の声を、改善につなげるために

ES調査の目的は満足度の点数を出すことではありません。

  • 社員が何を感じているのか
  • その背景には何があるのか

そして、

  • よりよい職場にするために何ができるのか

を考えるための材料を得ることにあります。

そのためには、「調査目的を整理する」ところから、「次の一歩を決める」ところまでを、一つのプロセスとして考えることが大切です。

ES調査の実施プロセス。調査目的を整理する→ 自社に合った設問を設計する→ 本音を答えられる環境をつくる→ 数字と自由回答から背景を読み解く→ 結果を共有する→ 次の一歩を決める

社員の声を「集める」だけで終わらせず、社員とともに改善へつなげていく ―― それが、ES調査を「調査して終わり」にしないためのポイントです。

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