
BtoBの顧客満足度調査(CS調査)の重要性とその実施方法
このページでは、BtoBの顧客満足度調査(CS調査)の実施方法について、詳しく説明します。
※ BtoCを含めた一般的な顧客満足度調査の実施方法については、「顧客満足度調査(CS調査)でビジネス成果を導く実施ポイントと分析法の詳細解説」で詳しく説明しています。
なぜBtoB企業にとって顧客満足度調査(CS調査)が重要なのか?
顧客からの率直なフィードバックは、貴社の商品やサービスについての貴重な改善のヒントになります。BtoCでは、SNS上に表出される情報を積極的に収集する動きもありますが、BtoBでは、日常的な営業活動に加えて、アンケートなどを通じて、顧客の声に耳を傾けることが重要です。
BtoB企業は、顧客満足度調査(CS調査)を実施して顧客の課題とニーズを理解し、商品やサービスの改善努力を続けていくことで、より深い信頼関係を顧客との間に築き、ビジネスの基盤を強化することができます。
BtoBの顧客満足度調査(CS調査)を成功させる秘訣とは?
BtoBもBtoCも、顧客満足度の向上には、商品・サービスの品質や人的な対応など、顧客が経験する様々な接点の改善が必要です。従って、顧客満足度調査では、どのような接点をどのように改善する必要があるのかを知ることが大きな目的となります。しかし、BtoBの顧客満足度調査ならではの実施ポイントがいくつかあります。
ここでは、成功のカギを握るポイントとして、対象者や指標の選び方、調査の回収率を上げる方法、重要度情報の把握、競合比較の視点、そして顧客からのフィードバックへの迅速な対応などについて具体的に解説します。これらを理解して適切に実行することで、顧客満足度を高め、業績の拡大につなげることができます。

BtoBの顧客満足度調査における対象者の選び方
BtoBの顧客満足度調査では、調査対象者の選び方が非常に重要になります。
顧客企業の担当者、意思決定者、そして実際に商品やサービスを利用するエンドユーザーといった異なる役割の人々が対象者の候補となります。対象者の役割に応じたセグメントを設定し、それぞれに適した調査票を作成するのが理想形ですが、意思決定者やエンドユーザーの特定が難しい場合もあることでしょう。そういう場合には、共通の調査票を用意し、以下のような対象者の役割を特定するための質問を盛り込んでおきます。意思決定者と実務担当者では重視しているポイントが異なることも多く、この役割特定質問は集計・分析時の視点として活用することができます。
<役割特定質問の例>
問. 貴社での○○○のご利用に際して、あなたが担当していることがありましたら、すべて教えてください。(いくつでも)
- 利用する業者を決定している
- 利用する業者の選定にかかわっている
- 利用する業者との日常的な連絡調整などの実務を行っている
- その他(具体的に: )
BtoBの顧客満足度調査における顧客ロイヤルティ質問の重要性
顧客ロイヤルティ質問は、総合満足度質問とともに、顧客との信頼関係の強さを測定するための重要な指標です。
BtoCの顧客満足度調査では推薦意向、継続利用意向が顧客のロイヤルティ度合いを測定する代表的な指標です。
一方、BtoBの顧客満足度調査で継続利用意向を聞くのはよいとして、推薦意向については要検討です。
BtoCの場合、インターネット上の口コミやレビュー記事などから購入したい商品についてある程度の情報を得ることができるのに対して、BtoB商材についての口コミやレビューサイトは少なく、購入企業は情報量が少ない中で意思決定をしているのが実情です。
他社の人から、「どこかいい会社ある?」と紹介を依頼されることがよくある商材(もしあれば)を除いて、BtoBの推薦意向は実態を伴わない「なんとなく評価」になりかねません。
もし、仕事関係の同僚や取引先のお知り合いから、「〇〇〇にはどの会社がよいか」とたずねられた場合、当社をおすすめくださる度合いはどの程度ですか。
こんな感じで質問してみてしっくりこない場合、推薦意向は有効な指標とは言えません。
また、NPS(Net Promoter Score)について気になっている方もいることでしょう。NPSなどの指標の選び方や調査での使い方について、「NPSと顧客満足度~成果につながる指標の選び方」や「推奨意向やNPSなどの調査結果を鵜呑みにしてはいけない理由」で詳しく説明していますので、そちらも参照してください。どの指標を採用するかは、それぞれのメリット/デメリットをよく吟味したうえで決めることが重要です。
NPSと顧客満足度~成果につながる指標の選び方
推奨意向やNPSなどの調査結果を鵜呑みにしてはいけない理由
調査の回収率を向上させる方法
BtoBとBtoCでは、そもそもの顧客数が大きく異なります。BtoBの場合、取扱商品の種類によっては、顧客数が数十社ということもあります。限られた数の顧客から最大限の情報を引き出すためには、調査の回収率を可能な限り高くすることが求められます。また、回答してくれるのが自社に対して好意的な顧客層に偏るようだと、実際の状況を正確に反映していない調査結果が出ることがあります。BtoBの顧客満足度調査を成功させるためには、回収率を高めて多様な顧客の意見を集めることが必須です。
調査の回収数が少ない場合、データの誤差が大きくなり結果の信頼性が損なわれる可能性があります。対象となる顧客の数が300社を下回る場合には50%を超えるレベルの回収率を目指し、顧客数が数十程度の場合には、それこそ100%に近い回収率を目指したいところです。
回収率を左右する要因のひとつが調査の実施方法です。BtoBの調査方法としては、次のようなものがあります。
- 郵送で依頼状やアンケートを送る
- メールや郵送での案内を通じてWeb上で回答してもらう
- Excelで作成した回答フォームをメールで送り、回答後のファイルをメールで返送してもらう
- 対面またはオンラインでのインタビューに答えてもらう
郵送調査を基本としたWeb併用が効果的
BtoBの調査では、組織として回答内容を検討したいとか、回答内容を記録として保存しておきたいとの要望が対象企業側から寄せられる場合があります。そのため、先方に紙の調査票を届ける郵送調査が基本的な方法になります。郵送調査の場合、依頼状、アンケート調査票、返信用封筒(できれば封かんテープ付き)の3点を自社の社名入り封筒に入れて送ります。
また、紙のアンケートに加えて、Web上での回答も可能にすることをおすすめします。
当社のこれまでの経験では、紙でもWebでもどちらか好きな方法で回答してもらえる「郵送・Web併用調査」の場合、回答者全体の10~30%くらいがWebでの回答となっています。紙のアンケートだけなら協力してくれない(協力できない)人にもアクセスできますので、その分だけ全体の回収数が増加します。
基本となる郵送調査の回収率を高めるためのポイントは2つです。
回答期間は2~3週間が理想
郵送調査の回収状況をみると、発送から3~5日後と締切日の直前に回収が集中します。
その間の期間は、多少の起伏はあるもののあまり多くの回収数は見込めません。回答期間は2回の週末を含む2~3週間が最適と考えられます。

回答したいと思わせる調査票の作成
郵送調査では、質問内容を先に見ることが可能なため、調査票をパッと見て「回答するのが面倒」そうな印象を持たれないようにしなければなりません。以下の点に留意して、少なくとも「これくらいだったら回答してみてもいいかな」と思ってもらえるような調査票を用意することが重要です。
適切な質問量
できれば4ページ以内・・・A3サイズの2つ折りで1枚に収まる。多くても8ページ以内。
シンプルで視覚的にわかりやすいレイアウト
文字サイズは10ポイント以上とし、行間を縮めたり、無理やり質問を押し込んだ窮屈なレイアウトにしたりしないこと。
他の書類と区別してもらうために色紙を用いるのも有効。たとえば、クリーム系統の色だと黒文字も映えて読みやすくなる。
回答に迷わない質問フロー
回答条件を絞った質問は極力減らす・・・とび先の指示はわかりにくい。
その他、 回収率を上げる方法について、「アンケートの回収率向上: 調査の質を高める実践テクニック」で詳しく説明しています。繰り返しになりますが、顧客満足度調査の成功には、回収率を高めて多様な意見を集める必要があります。対象者全員に回答してもらうくらいのつもりで、できる限りの対策を講ずることが求められます。
アンケートの回収率向上: 調査の質を高める実践テクニック
調査票のサンプル
調査票の出来栄えは、収集するデータの精度や回収率を左右する極めて重要な要素です。改善行動につながる情報を引き出すための本格的な調査の実施を検討している場合には、専門家のノウハウを活用することをおすすめします。当社では、調査票設計のサポートを行っていますので、お気軽にご相談ください。
顧客からのフィードバックへの迅速な対応
BtoBマーケティングにおいて、顧客満足度調査の回答受付期間中は特に重要な時期となります。この期間中に顧客から表明される不満や要望に対して、迅速に対応することが求められます。
顧客が調査に協力して意見や感想を表明する際、その声が企業側でしっかりと受け止められていると感じることで、より一層の信頼感を得ることができます。特に、具体的な不満点や改善要望が挙げられた場合、それに対する迅速な対応は、顧客の満足度を高めるだけでなく、長期的な関係性の構築にも寄与します。
「BtoB顧客満足度調査成功の秘訣:迅速なフィードバック対応とベストプラクティス」では、回答受付期間中の顧客からのフィードバックへの迅速な対応の重要性や、それを実現するための具体的な方法について詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
BtoB顧客満足度調査成功の秘訣:迅速なフィードバック対応とベストプラクティス
BtoB 顧客満足度調査の分析と活用
自社の強みと弱みの発見
BtoBの顧客満足度調査を実施することで、顧客から見た自社の強みや特性を発見できます。
強みと弱みを特定するためには、「満足度」と「重要度」を組み合わせた分析が有効です。満足度は、「商品やサービス」「営業担当者」「情報提供」「価格」等の項目別の評価をもとにします。一方、重要度は各項目がどれだけ顧客のロイヤルティに影響を与えているのかを数値にしたもので、これは重回帰分析などの多変量解析によって求めることができます。
以下に示すのは「営業担当者」に対する満足度と重要度を組み合わせたグラフです。このグラフから、「企画・提案力」と「対応の迅速さ」が高い重要度にもかかわらず満足度が低く、弱みとなっているのではないかと考えます。そして、それぞれの項目に関連する自由回答を読み込むなどして具体的な問題点を掘り下げてみていきます。

重要度を知るために「○○○はどの程度重要ですか?」と直接質問する必要はありません。重要度は回答データの関係性(簡単に言えば、□□□の満足度が高いと、△△△の満足度も高い傾向にあるなど)を分析して合理的に求めることができます。
競合他社との比較による位置づけ
競合他社についての評価情報があれば、競合比較を通じて強みと弱みを特定することができます。
以下の例のように、「お客様ニーズの理解度」が高い重要度を持ち、自社の満足度評価が競争他社よりも高い場合、その項目は自社の明確な強みと見なすことができます。

競争他社との比較を視野に入れることで、「対応の迅速さ」のような高い重要度を持ちながら競争他社より劣る項目の改善を優先すると、自社の弱みを克服し競争他社に追いつくことが可能となります。また、「企画・提案力」のような現状で競争他社と並んでいる項目を強化していくことは、新たな強みを築くための一歩となります。
BtoBの顧客満足度調査では、過去の調査結果との比較だけでなく、競合他社との比較も視野に入れることが重要です。
調査協力へのお礼と調査結果の共有
BtoBの顧客満足度調査では、対象企業への謝礼が必要かどうかは、業界の慣習や会社の方針によることとなります。
物品や金銭ではなく、調査結果と今後の対応方針を簡単にまとめた資料を謝礼のかわりに提供することも有効です。その場合は、調査後すぐに、あるいは遅くとも2~3か月以内に調査結果をフィードバックすることが重要です。
無記名で調査を実施した場合は、調査結果をまとめた資料をデジタルや紙媒体で一斉に配布することが可能です。しかし、回答者を特定できる記名式調査の場合には、調査結果の共有が訪問・オンライン面談のきっかけにもなりますので、営業担当者から個別に報告するのがより効果的です。
BtoB 顧客満足度調査実施の流れ~調査企画から改善計画まで
BtoB 顧客満足度調査の実施プロセスは、以下のような流れになります。

調査を成功させるためには、適切な調査方法の選択からはじめ、必要な情報を手に入れる効果的な調査票の作成(調査票設計)や有用な示唆をもたらす切れ味の鋭い集計・分析が重要となります。
その間にあるのが「実査」で、郵送やWebなどで実際に対象者からの回答を集める重要なプロセスです。
郵送・Webを併用した場合の主な実査作業は以下のような内容です。
- あいさつ状(協力依頼状)・調査票・発送用封筒・返信用封筒の印刷
- 宛名ラベルの作成(あるいは、宛名を封筒に直接印字)
- あいさつ状・調査票・返信用封筒を発送用封筒に封入して封かん、発送
- Web回答画面作成
~調査対象者による回答・返送~
- 回収票の開封・検票・データ入力
- 入力データとWeb回答データのマージとデータクリーニング
- 調査対象者からの問い合わせ対応
当社では、調査企画からはじまる全プロセスの一括サポートはもちろんのこと、貴社にて実施した調査データをお預かりしての集計・分析のような一部業務のみのサポートにも対応しています。
調査対象顧客データの取り扱い
市場調査会社への顧客情報の提供が可能な場合とは
BtoBの顧客満足度調査は基本的には紙のアンケートを使用し、回答方法は郵送とWebを併用するのが効果的です。しかしここで個人情報の取り扱いが問題となる場合があります。
個人情報保護法では、個人情報を取り扱う事業者は、その利用目的を特定し、ウェブサイトなどで公表したり、本人に通知したりしなければならないとされています。原則として、個人情報を第三者に提供する際は本人の同意が必要ですが、特定の業務に限って委託する場合は第三者提供には該当せず、本人の同意は不要となります。たとえば、宅配業者に荷物を預ける際には配達先の個人情報を提供しますが、それに対して個別に相手の同意を得る必要はありません。
個人情報を渡す際は、委託先が法令に従って適切に個人情報を取り扱っていることを監督する責任があります。そのため、委託先がプライバシーマークを取得していると安心です。
すなわち、
●調査・アンケートを個人情報の利用目的として公表・通知している
●プライバシーマークを取得している市場調査会社に宛名リストを提供してアンケート業務を委託する
のであれば、業務委託として市場調査会社に顧客リストを提供することは法令上問題ないといえます。
顧客情報の提供なしで可能なこと
社内規定や手続きの煩雑さから顧客情報を外部に渡すのが難しいため、仕方なく手間と時間をかけて社内で顧客満足度調査を実施している企業が多いようです。しかし、市場調査会社は顧客リストの提供がなくても調査のお手伝いができます。
お客様との直接のやり取り以外の部分について、アンケートの調査票設計や、調査票の発送・回収、データ入力、集計・分析など、多岐にわたる支援が可能です。特に、高度なスキルを必要とする回答データの集計・分析は、専門的な知識と経験を持つ市場調査会社に委託することで、より深い洞察を得ることができます。
B社との成功事例:より深い顧客理解のための調査改革
背景
B社は毎年、営業部門を中心に顧客満足度調査を実施。
高い回収率と顧客評価を得ているものの、具体的な改善策の策定が難しく、調査のマンネリ化が問題となっていました。
問題の特定と解決策の提供
当社の詳細レビューにより、従来の調査項目はB社の関心分野に偏りすぎのきらいがあり、顧客視点での評価要素の網羅性が不十分であるなどの問題点が判明。
当社の専門家チームが、調査票の再設計を行うとともに、満足度の細分化による評価方法の最適化を提案しました。
調査の実施
部門ごとのサービスの違いを考慮し、カスタマイズされたアンケート画面を導入。当社はリアルタイムでの回答共有と、迅速なフィードバック対応をサポートしました。
成果
最適なアンケートデザインの導入により、質問量は増加も回答の負担感は軽減、回収率は80%に達しました。
これにより、B社のサービスの強みや改善ポイントを明確に特定することができました。
調査の概要
調査方法:Webアンケート
回収率: 80%
特記事項:締め切り前にメールによるリマインダーを実施
ノウハウ資料・ご相談窓口
BtoBマーケティング成功の鍵、顧客満足度調査の実施ポイントをまとめた資料をご用意しています。このページではご紹介できなかった案内文や質問文の例、分析アプローチなども掲載していますので、こちらからダウンロードしてご覧ください。
お客様の声は、企業の未来を形作る貴重な財産です。私たちは、その声を丹念に集め、分析し、商品やサービスの改善に結びつけることで、企業価値の向上を支援します。顧客満足度調査の専門家として、お客様からのフィードバックをビジネスの成長に活かすための確かなサポートを提供することに、全力を尽くします。
顧客満足度調査の実施を検討中の方は、ぜひ一度、私たちの無料相談をご利用ください。
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