ある企業からの相談です。

若年層の離職率が高く、若い世代を活性化させたい。
毎年ストレスチェックを実施しているが、高ストレス判定が多い。
どのような不満があるのか?従業員満足度調査を実施したい。

従業員の定着率を上げることは重要な経営課題です。離職率が高いままだと、採用コストがかさむだけでなく、商品やサービスの品質を維持・向上していくことも困難になります。

ふだん生の声を聞く機会の少ない大多数の従業員を含め、全社的に会社に対する不満・要望を聞く方法として従業員満足度調査(ES調査)は有効です。

しかし、不満・要望の声に応えて従業員の定着率や満足度を高めることだけがES調査の役割ではありません。

従業員が単に満足するだけでなく、経営参画意識を強めたり、顧客サービスの向上などを通して業績拡大に寄与するようなモチベーションを高めたりするにはどうすればよいか、ビジネス視点をもってES調査を実施します。

ES向上のためにはストレスチェックだけでは不十分

ES調査について話をする際、「うちでは既にストレスチェックを実施している」「ES調査はストレスチェックとどう違うのか?」といった声を聞くことがあります。

ストレスチェックとES調査は実施目的が異なります。

[ストレスチェックとES調査の実施目的]

種別実施目的
ストレスチェック従業員一人ひとりのメンタルヘルスケア
ES調査組織全体で生産性を高めるための職場改善

マズローの欲求5段階説にあてはめると、ストレスチェックは従業員のモチベーション向上につながる上位の欲求までカバーできません。
ストレスチェックによるメンタルヘルス対策はES向上の必要条件ではありますが、十分条件ではないのです。

マズローの欲求5段階

ES調査を成功させる2つのポイント

ES調査を成功させるためには、

・多くの従業員が協力し、本音を答えてくれること

・具体的な改善策につながるアウトプットが得られること

の2点が不可欠です。

多くの従業員の本音を聞き出すために

ES調査は、協力率自体がES水準を表す、といわれます。

自分たちの意見がきちんと反映されて職場環境の改善につながるという信頼感があれば、積極的に調査に協力して有益な意見を述べてくれることが期待できます。

そのためには、人事・総務ではなく経営トップが前面に出て調査の趣旨に理解を求めることで、ES向上への本気度が伝わることでしょう。

また、外部の第三者機関に委託して匿名調査を実施すれば、個人が特定される不安を払しょくすることができます。

さらに、調査結果のフィードバックを行うことです。毎回、何かしら調査結果を踏まえた改善策を示し、期限も決めて着実に実行していけば、経営陣に対する信頼感が高まりES向上の好循環につながるはずです。

具体的な改善策につながる情報を引き出すために

ES調査は「総合満足度」「個別評価」「意見・提案・要望(自由回答)」というシンプルな構成にして、通常業務の支障にならないよう、5~10分程度で答えられる質問量にすることが望ましいです。

総合満足度

総合満足度の質問例としては、

Q. 職場について、総合的にどの程度満足していますか。
Q. 今後も、当社で働き続けたいと思いますか。
Q. 職場として、当社を知り合いにすすめたいと思いますか。

などが考えられます。

具体的な改善策に結び付くのは、個別評価や自由回答になります。

個別評価

既定の調査項目がセットになったテンプレートがありますが、どの企業にもあてはまるような汎用性の高い質問項目というのは、効果的なアクションプランにはつながりにくいものです。
業種・職種や社内制度、組織風土などの違いにより、職場課題やそれに対処する適切な改善策は千差万別だからです。

個別評価の質問項目は、以下のように「衛生要因」「動機付け要因」といった分析視点を絡め、自社の状況に合わせて合計で20~30程度のセットになるようにするのがよいでしょう。

[個別評価の質問項目]

<衛生要因><動機付け要因>
それが一定の水準に達しないと不満を覚える → 「不満足」を減らすべき要因この欲求が満たされると積極的な満足感を得られる → 「満足」を高めるべき要因
<個別項目例>
・労働時間や業務量(の偏り)
・生産性を高める業務ツールの導入
・ワークライフバランス、(有給)休暇の取得など
・公平、公正な評価・人事制度 ・給与の水準
・福利厚生、子育てや介護へのサポート
・職場の人間関係、コミュニケーション(上司・同僚・部下)
・パワハラやセクハラ等のハラスメント
<個別項目例>
・経営方針、企業理念やビジョンへの共感
・業界や会社の将来性
・仕事のやりがい
・知識やノウハウの共有
・同僚、チームとの連携
・教育研修など人材育成、スキルアップへの支援
・自由に意見を言い合える組織風土(心理的安全性)

自由回答

貴重な機会ですので、質問数を絞る一方、自由回答で従業員の生の声を聴きたいところです。

調査の最後で、「最後に、ご意見やご要望などございましたら、どのようなことでも結構ですので、ご自由にお書きください。」といった質問を見かけますが、こうした漠然とした聞き方ではなく、総合満足度理由などの形で建設的な意見・提案・要望を書いてもらうのが望ましいです。

現場の従業員の自由コメントの中には、経営陣が把握していない課題、あるいは仮説になかった改善策のヒントが含まれていることも多いです。
一人ひとりの自由回答を丁寧に読み込み、課題解決に結び付くと思われる有益なコメントを見つけ出すことが求められます。

ES調査に関する基礎知識や調査の実施ポイントなどについては、以下のページで詳しく説明しています。
※画像をクリックすると、説明ページが開きます。

従業員満足度(ES)調査~よくある問題点と対処法

従業員満足度(ES)調査がビジネス基盤を強化します。ESとCSをうまく結びつけることができれば、2つの満足を車の両輪として業績を上げていくことができます。

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