―はじめてのBtoB顧客満足度調査シリーズ④―
はじめに
STEP1では「何のために調査するのか」、STEP2では「誰に聞くのか」、STEP3では「何を・どう聞くのか」を考えてきました。
アンケートを実施して回答が集まったら、いよいよ結果を分析します。まず目に入るのは、それぞれの項目の満足度ではないでしょうか。
「製品品質は4.3点」
「営業対応は4.0点」
「情報提供は3.3点」
こうした数字を見れば、自社がどのように評価されているのか、おおよその傾向はわかります。
しかし、顧客満足度調査の目的が「次に何をするかを決めること」だとすれば、数字の高い・低いを確認するだけでは不十分です。
平均値が低い項目が、必ずしも最優先で改善すべき項目とは限りません。また、満足度の高い顧客が、必ずしも今後も取引を続けてくれるとは限りません。
調査結果を改善につなげるためには、数字そのものではなく、数字の向こう側にある「違い」「関係」「理由」を読み解くことが重要です。
今回はそのための基本的な考え方を整理します。
まずは全体の傾向をつかむ
分析というと、難しい統計手法を使わなければならないと思うかもしれません。しかし、最初に行うことはシンプルです。
まずは、
- 総合的な満足度はどの程度か
- 評価の高い項目は何か
- 評価の低い項目は何か
- 前回調査からどのように変化したか
など、全体の傾向を確認します。
ここで大切なのは、評価の低いところだけを見るのではなく、評価されているところにも目を向けることです。
顧客満足度調査は、弱みを探すためだけの調査ではありません。
自社では当たり前だと思っていた対応が、顧客から高く評価されていることもあります。こうした強みは、維持すべきものとして社内で共有したり、さらに伸ばしたりすることができます。
まずは、「どこが評価され、どこに改善余地がありそうか」という全体像をつかむところからはじめます。
平均値が低い=改善優先とは限らない
次に注意したいのが、満足度の低い順に改善テーマを決めないことです。
STEP3で、次のような例を挙げました。
| 項目 | 満足度 |
|---|---|
| 製品品質 | 4.3 |
| 営業対応 | 4.0 |
| 納期 | 3.6 |
| 情報提供 | 3.3 |
数字だけを見れば、「情報提供」が最も低いので、まずここを改善しようと考えたくなります。
しかし、顧客にとって「納期」が非常に重要で、「情報提供」はそれほど重要ではないとしたらどうでしょうか。
満足度が多少高くても、「納期」の改善を優先したほうが顧客評価全体への効果は大きいかもしれません。
そこで役立つのが、満足度と重要度を組み合わせて考える方法です。
たとえば、「満足度が低く、重要度が高い」場合、その評価項目を優先的な改善候補として考え、「満足度は低いが、重要度も低い」場合は、改善の優先度を慎重に考える、といった見方ができます。

大切なのは、「何点だったか」だけでなく、「その評価項目が顧客にとってどのような意味を持っているのか」を考えることです。
「全体平均」だけでなく、違いを見る
全体平均では見えないこともあります。
たとえば営業対応の満足度が4.0点だったとします。全体としては悪くない数字に見えます。しかし、顧客を分けてみると、
| 顧客層 | 営業対応満足度 |
|---|---|
| 取引5年以上 | 4.4 |
| 取引1~2年 | 3.5 |
となっているかもしれません。あるいは、「大口顧客では高いが、中小規模の顧客では低い」とか、「ある営業拠点では高いが、別の拠点では低い」といった違いが見つかることもあります。
全体平均だけを見ていると、こうした違いは平均値の中に埋もれてしまいます。
そこで、
- 取引年数
- 顧客規模
- 利用している製品・サービス
- 地域・営業拠点
- 回答者の役割
などに分けて結果を見てみます。
BtoBでは顧客数が限られる場合もありますので、細かく分けすぎる必要はありません。
重要なのは、「どの顧客で評価が違うのだろう?」という視点を持つことです。違いが見つかれば、「なぜこの違いが生まれているのか」という次の問いにつながります。
「満足している=継続する」とは限らない
もう一つ、顧客満足度を見るときに注意したいのが、満足している顧客なら、これからも取引してくれるだろうと単純に考えないことです。
BtoBの取引では、満足度以外にもさまざまな要因が関係します。
たとえば、現在の取引には満足していても、
- 競合他社から魅力的な提案を受けた
- コスト削減のため取引先を見直すことになった
- 自社の事業方針が変わった
- 購買方針や担当者が変わった
といった理由で取引が変化することがあります。
反対に多少不満があっても、取引条件や製品の特殊性などから継続している顧客もいるかもしれません。
そのため、満足度だけを見るのではなく、「今後の取引意向」「他社との比較評価」「総合評価」などとの関係を見ていくことも重要です。
たとえば、「満足度は高いのに、今後の取引意向はそれほど高くない」という顧客層が見つかったとすれば、「満足しているのに、なぜ取引意向が高くないのか?」という新しい問いが生まれます。
調査結果を読み解くとは、数字から答えを出すことだけではありません。次に考えるべき問いを見つけることでもあります。
項目同士の「関係」を見る
個々の項目の点数を見るだけでなく、項目同士がどのように関係しているのかを見ることも、改善テーマを考える手がかりになります。
たとえば、「営業担当者による顧客ニーズの理解度」の評価が高い顧客ほど、総合満足度も高いとか、「トラブル時の対応」についての評価が高い顧客ほど今後の取引意向も高い、といったような関係性が見えてくることがあります。
こうした結果が得られれば、単に満足度が低い項目を改善するのではなく、総合的な顧客評価や今後の取引に関係している項目を重視するという考え方ができます。
もちろん、項目同士に関係が見られたからといって、一方がもう一方の原因だとすぐに判断することはできません。それでも、「どの項目に注目して、さらに詳しく考えるべきか」を絞る材料にはなります。
数字だけでなく「なぜ」を見る
ここまで、全体を見る→ 違いを見る→ 関係を見るという流れで考えてきました。
しかし、数字を分析するだけでは、なぜ、その評価になったのかまではわからないことがあります。そこで役立つのが、STEP3で設計した自由回答です。
たとえば、「営業担当者の提案力」の評価が低かったとします。自由回答を見ると、
「こちらの業界事情を踏まえた提案が少ない」
「新商品の案内はあるが、自社にどう役立つのかわからない」
といった声が出ているかもしれません。
そうすれば、単に、「提案力を改善する」ではなく、「顧客の事業や課題を理解したうえで提案する必要があるのではないか」というところまで課題を具体化できます。
また、評価の高い項目についても、
「問い合わせると、その日のうちに回答してくれる」
「トラブルのときに担当者がすぐ現場まで来てくれた」
といった声から、顧客が何を評価しているのかが見えてきます。
数値データで「どこを見るべきか」を探し、自由回答で「なぜそうなっているのか」を考える。
両方を組み合わせることで、結果の解像度が上がります。
分析のゴールは「課題を絞ること」
顧客満足度調査では、分析をはじめるとさまざまな発見が出てきます。
「この顧客層では評価が低い」
「この項目が総合評価と関係している」
「自由回答ではこんな意見が多い」
それらをすべて報告書に盛り込みたくなるかもしれません。
しかし、分析の目的は、たくさんのグラフや数字を作ることではありません。最終的に考えたいのは、今回の調査結果から、どの課題について優先して考えるべきか?ということです。
たとえば、
新規顧客では営業担当者のニーズ理解に対する評価が低いという「違い」が見つかり、
ニーズ理解と総合満足度との関係が強いことがわかり、
さらに自由回答から、「自社の業界や用途を理解した提案がほしい」という声が確認できたなら、
そこから、「新規顧客へのヒアリングや提案方法を見直す」という改善テーマが見えてきます。
ここまで来れば、調査結果は単なる「顧客満足度の成績表」ではなく、次の行動を考えるための材料になります。
まずは、3つの問いから結果を見てみる
分析方法はさまざまですが、はじめてBtoB顧客満足度調査を担当する場合、最初から複雑な分析を行う必要はありません。まずは結果を見ながら、次の3つを考えてみてください。
- どこに「違い」があるだろう?
→ 顧客層や回答者によって、評価が違っていないか。 - 何と何が「関係」しているだろう?
→ 総合満足度や取引意向と関係していそうな項目はないか。 - その背景に、どんな「理由」があるだろう?
→ 自由回答や顧客の状況から、その評価になった理由を考えられないか。
この3つの問いを持つだけでも、平均値を眺めるだけの分析から一歩進むことができます。
まとめ――数字から「次に考えるべきこと」を見つける
顧客満足度調査の結果が出たら、まず全体の傾向を確認します。
しかし、そこで終わらせず、平均値だけで改善優先度を決めない→ 顧客層による違いを見る→ 項目同士の関係を見る→ 自由回答から理由を探る→ 優先して考える課題を絞る、という順番で結果を読み解いてみましょう。

重要なのは、複雑な分析をたくさん行うことではありません。「この結果から、私たちは次に何を考えるべきなのか」が見えてくることです。
調査結果の数字の中から「違い」「関係」「理由」を見つけることで、はじめて次の打ち手を考えるための材料になります。
次のSTEP
改善すべきテーマが見えてきても、それだけでは会社は変わりません。
「営業担当者の提案力を改善する」
「情報提供を充実させる」
といった方針だけでは、具体的に誰が何をするのかが決まっていないからです。
最後のSTEP5では、調査結果から改善テーマを絞り、担当者と具体的なアクションを決め、実行し、振り返るまでの流れを整理します。
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