働きやすい職場をつくり、従業員満足度(ES)を高めることは、組織づくりの大切な土台です。
しかし、ESが高ければ、社員が会社の目標を理解し、自ら考えて行動するようになるとは限りません。
「会社が目指していることは知っているが、自分の仕事とどう関係するのかわからない」
「顧客から寄せられた声は共有されているが、その後の行動にはつながっていない」
こうした状態は、働きやすさとは別のところに課題があることを示しています。
そこで考えたいのが、従業員エンゲージメントです。
本コラムではESとエンゲージメントの違いを整理したうえで、社員の声をどのように調査し、組織の改善につなげていけばよいのかを考えます。
ESとエンゲージメントは同じではない
ES(従業員満足度)は、社員が現在の職場や仕事をどのように評価しているかを見るものです。たとえば、労働時間、報酬、人間関係などの「働きやすさ」に加え、仕事のやりがいや成長実感といった「働きがい」もESに関係します。
一方、エンゲージメントでは、さらに一歩進んで、
- 会社が目指していることを理解しているか
- それに共感しているか
- 自分の仕事との関係を理解しているか
- 日々の仕事の中で、自ら判断して行動できているか
といったところまで見ていきます。
つまり、ESが「働く環境や仕事をどう感じているか」を見るものだとすれば、エンゲージメントは「組織と自分の仕事をどう結びつけ、行動しているか」までを見るものと整理できます。
ESが高くても、エンゲージメントが高いとは限らない
「働きやすさ」に代表されるESと「エンゲージメント」は、必ずしも同じ方向に動くとは限りません。
職場環境には満足していても、会社が何を目指しているのかがわからなければ、自分から改善を提案したり、新しいことに挑戦したりするところまでは進みにくいでしょう。逆に、仕事への思いや責任感が強くても、職場環境に大きな問題があれば、それを長く維持することは難しくなります。
大切なのは「満足しているか」という一つの指標だけで判断せず、働きやすさ、働きがい、会社への理解・共感、日々の行動を分けて見ることです。

社員の行動につながるまでの「4つの壁」
社員が会社の目標を理解し、自分の仕事と結びつけて行動するまでには、いくつかの段階があります。私たちは、これを次の「4つの壁」として整理しています。
- 職場満足の壁
働くうえで、大きな不満や負担が生じていないか。 - 認知・共感の壁
会社が何を目指しているのかを知り、その方向性に納得・共感できているか。 - 理解・判断の壁
会社の目標と自分の仕事との関係を理解し、具体的な場面で何をすべきか判断できるか。 - 自律の壁
指示や問題の発生を待つのではなく、自ら課題を見つけ、改善を提案・実行できているか。
エンゲージメント調査は「どの壁で止まっているか」を見る
エンゲージメント調査の目的は、単に「エンゲージメントが高い・低い」という点数を出すことではありません。大切なのは、社員が行動に至るまでのどこに壁があるのかを見つけることです。
たとえば、「会社の目標は知っているが、共感できていない」と「目標には共感しているが、自分が何をすればよいかわからない」とでは、必要な対応は異なります。
だからこそ、満足度だけでなく、認知・共感・理解・判断・行動まで段階を分けて質問することが重要になります。
顧客の声と社員の声をつなげてみる
顧客満足度調査を実施している企業では、エンゲージメント調査を単独で考える必要はありません。
たとえば、顧客から、「提案力を高めてほしい」という声が寄せられていたとします。
一方、社員に聞いてみると、「顧客が何を期待しているのかわからない」「改善したいが、他部門との連携方法がわからない」といった声が出てくるかもしれません。
- 顧客がどう評価しているか
- 社員はそれをどう認識しているか
- そして、行動するうえで何が壁になっているか
この3つを重ねて見ることで、「顧客が求めていること」と「社員が実行できていること」の間にあるギャップが見え、顧客の声を具体的な改善につなげやすくなります。
エンゲージメント調査は社員の状態を測るだけでなく、顧客の声を組織の行動につなげるための調査としても活用できます。
まとめ――「満足しているか」から「行動できているか」へ
ES調査は社員が働く環境や仕事をどのように感じているかを知るための重要な手段です。そこからさらに、会社の目標への理解や共感、自分の仕事とのつながり、実際の行動まで見ていくのがエンゲージメント調査です。
大切なのは単にスコアを測ることではありません。
職場満足 → 認知・共感 → 理解・判断 → 自律のどこに壁があるのかを見つけ、その壁に応じた次の一手を考えることです。

この4つの壁は必ずしも全社員が同じ場所で止まっているとは限りません。部門や職種によって壁の位置が異なることもあります。
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