従業員満足度(ES)調査の実施はES向上の第一歩

企業にとって従業員満足度(ES)の低下は大きな経営リスクにつながりますが、逆に、ESを改善して社内人材のパフォーマンスを最大限に引き出せるようになれば、顧客満足度(CS)の向上にも大きく寄与します。
そして、ES向上のために改善すべき職場の問題を的確に見出すためには従業員満足度(ES)調査の実施が早道です。
調査の実施に伴う集計・分析などは手間と時間がかかりますが、外部の調査会社をうまく使って従業員の作業負担を減らすことも、成功し、長続きする従業員満足度(ES)調査の秘訣です。

従業員満足度(ES)と顧客満足度(CS)の関係

従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)と顧客満足度(CS:Customer Satisfaction)の関係を示したフレームワークを提唱した経営学者ジェームス・ヘスケットは、著書『カスタマー・ロイヤルティの経営』の中で、

・ESとCSとの間には99%の因果関係が認められる
・CSが平均以上の店舗の78%は、ESも平均以上
・ESが1%増加すると、CSが0.22%増加する

等と述べています。

これはアメリカ企業の事例を基にした調査結果ですが、確かに、従業員満足度(ES)が向上すれば社員のモチベーションも上がり、顧客満足度(CS)や業績にも好影響を与えるように思います。

逆に、従業員満足度が低い状態だと、離職率の上昇や知識・ノウハウの流出、採用難による人手不足や採用コストの上昇、従業員の過労・モチベーション低下、(ハラスメントや情報漏洩など)コンプライアンス違反といった経営リスクが高まりそうです。

しかし、日本人の職業倫理としては、たとえ職場に不満があったとしても、仕事には手を抜かず、お客様へのサービスは疎かにしない、従って、従業員満足度は低くても顧客満足度は高い、というケースも多いのではないでしょうか。

厚生労働省から提供されている雇用保険に関連する資料から推計される大学新卒者の入社3年以内の離職率は、全体平均で3割強ですが、業種による違いも大きく、飲食、ホテル、教育関連といったサービス業では半数近くになります。

<新規大卒就職者の3年以内の離職率(平成28年3月卒業者)>

新卒者の3年以内の離職率

厚生労働省発表資料より株式会社グルーブワークス作成

労働市場の流動性が高いのは必ずしも悪いとはいえませんが、定着率が低い背景には従業員満足度の低さもあるでしょう。それでも、飲食、ホテルなどにおける日本の接客レベルは全体的に高いと思います。

つまり、サービス業をはじめ日本の企業の多くは従業員満足度改善の余地が大きく、実際に従業員満足度が向上していけば、生産性が高まるだけでなく、社員は今以上のサービスで顧客満足度を超える感動をお客様に提供して会社に貢献してくれるだろう、ということです。

そして、従業員の満足度向上の第一歩として、まずは調査の実施をおすすめします。

ポイントは以下の通りです。

従業員満足度(ES)調査実施の5つのポイント

●調査時間は5~10分が目標

従業員満足度調査は、協力率自体がES水準を表す、といわれます。

会社に対するロイヤルティやエンゲージメント(“愛着”“思い入れ”)が高く、自分たちの意見がマネジメントに反映されて更なる職場環境の改善につながるという信頼があれば、積極的に調査に協力してくれるでしょう。

逆に、いくら調査に協力したところで形式的なもので職場は何も変わらない、と不信感を持たれてしまっては、アンケートに回答してくれる従業員も限られてしまいますし、彼らの本音を把握することは難しくなります。

従って、従業員満足度調査を行う際には、まずは調査の意義や目的、調査結果の活用方法を明らかにし、従業員の皆さんに理解、納得してもらう必要があります。

その上で、できるだけ多くの従業員にアンケートに協力してもらうためには、通常業務の支障にならないよう、5~10分程度で簡単に回答できる質問量とすることが望ましいです。また、職場のIT環境にもよりますが、スマホを含めたWeb回答も可能にした方がよいでしょう。

●全体の質問数は20~30項目程度

一般的にアンケートを行うとなると、「アレも聞きたい」「コレも聞きたい」と設問数がどんどん増えてしまう傾向があります。

ただ、特に従業員満足度調査は、社員全員を対象にした全数調査とするのが通例ですし、部門や職種、役職、性別や年齢などによって偏りが出ないよう、できるだけ多くの人に回答してもらわなければ全社的な満足度の把握は困難になります。

そのため、アンケートの内容は、「総合満足度」「個別評価」「回答者属性」といったシンプルな質問構成にして誰でも簡単に答えられるようにしましょう。

総合満足度の質問例としては、

Q. 職場について、総合的にどの程度満足していますか。
Q. 今後も、当社で働き続けたいと思いますか。
Q. 職場として、当社を知り合いにすすめたいと思いますか。

などが考えられます。

また、総合満足度への重要度が高い要因、あるいは改善が急務な問題を把握するための個別評価項目について、項目数は合計で20~30程度とし、以下のように「衛生要因」「動機付け要因」といった分析視点を絡め、いくつかのカテゴリーに分けて項目を検討していくとよいと思います。

<ハーツバーグの2要因理論(動機付け・衛生理論)>

ハーツバーグの2要因理論

<衛生要因の個別項目例>
・労働時間や業務量(の偏り)
・生産性を高める業務ツールの導入
・ワークライフバランス、(有給)休暇の取得など
・公平、公正な人事制度
・給与の水準
・福利厚生、子育てや介護へのサポート
・職場の人間関係、コミュニケーション(上司・同僚・部下)
・パワハラやセクハラ等のハラスメント

<動機付け要因の個別項目例>
・経営方針、企業理念やビジョンへの共感
・業界や会社の将来性
・仕事のやりがい
・知識やノウハウの共有
・同僚、チームとの連帯
・教育研修など人材育成、スキルアップへの支援
・自由に意見を言い合える組織風土

●自由回答で本音を聞き出す

従業員満足度調査は、1回限りではなく、継続的に実施してPlan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)のPDCAサイクルを回していくことが重要です。

【従業員満足度(ES)向上のためのPDCAサイクル】

従業員満足度(ES)向上のためのPDCAサイクル

回答者の負担を減らして協力率を高めるだけでなく、調査データの分析負担も減らし、その分、鮮度の高い調査結果を社員へ迅速にフィードバックしましょう。

そのため、アンケートの質問数は厳選して絞り込むことが望ましいのですが、中にはそれ以外の問題、あるいは具体例を自分の言葉で経営陣に訴えたい、という人もいるでしょう。

アンケートは従業員の生の声を聞く貴重な機会ですので、質問の最後には自由に意見を書き込める回答