顧客満足度調査を実施し、詳細な分析を行い、報告書を作成する。
そして、経営層や関係部門に報告書を配布し、結果報告会を開催する。
ここまでくると、「調査結果を社内で共有できた」と安心してしまいそうです。
しかし、その後しばらくすると、
「結局、何を改善することになったのだろう」
「調査結果はわかったが、現場の行動はあまり変わっていない」
「次の調査が近づいて、前回の課題を改めて思い出した」
といったことが起こります。
もしかすると、「共有した」ことと「報告書を配った」ことを、同じものとして考えてしまっているのかもしれません。
改善には「3つの壁」がある――その手前にある壁とは
以前のコラムでは、顧客満足度調査の結果をもとに改善活動をはじめたあと、その成果が顧客評価につながるまでには、「実行 → 体感 → 評価」という3つの壁があることを紹介しました。
改善策を決めても、まず現場で「実行」されなければなりません。
実行されても、その変化が顧客に「体感」されなければなりません。
そして、顧客が感じた変化が、満足・信頼・継続意向などの「評価」につながっていかなければ、効果があったことになりません。
実は、その手前にもう一つ重要な壁があります。
それは、「そもそも、改善に取り組む人たちは、調査結果を理解し、何を改善するのかを共有できているのか」という問題で、第1の「実行の壁」へと進む前の「第0の壁:理解・共有の壁」です。

第0の壁を加えると、改善アクションは「理解・共有 → 実行 → 体感 → 評価」という4つの壁でとらえられます。
「第0の壁」を越えた状態とは
ここでいう「理解・共有」は、単に調査結果を知っているという意味ではありません。 「総合満足度は○点だった」「この項目の評価が低かった」という情報を知るだけなら、報告書を読めばできます。しかし、改善につなげるためには、そのもう一歩先まで進む必要があります。
- 顧客は自社の何を評価しているのか。
- 何を強みとして維持・強化すべきなのか。
- どこに期待とのズレがあるのか。
- 自分たちは、何から変えていくのか。
こうした調査結果の「意味」について理解し、改善に取り組む人たちの間で共通認識をつくる必要があります。
すなわち、第0の壁を越えるとは、「調査結果を知ることではなく、顧客の声を自分たちの課題として理解し、次の一歩を自分たちで決められる状態になる」ことです。
ここまで進んで、ようやく第1の「実行の壁」へ向かう準備が整います。
まず必要なのは、調査結果を「わかる形」にすること
その出発点になるのは、調査結果をわかりやすく整理することです。
顧客満足度調査では、全体の満足度だけでなく、要素別満足度、属性別クロス集計、自由回答など、多くの情報が得られます。
詳細な分析はもちろん重要ですが、改善活動に参加するすべての人に、何十ページ、ときには百ページを超える報告書を読み込み、そこから重要なポイントを読み取ってもらうのは現実的ではありません。
そこで、
- 今回の調査から何がわかったのか。
- 何が自社の強みなのか。
- どこに改善すべき課題があるのか。
- これから何について議論すべきなのか。
を、わかりやすくかみ砕いて共有する必要があります。
つまり、詳細な分析結果を、「組織が対話するための材料へ翻訳する」ことが、「共有・共創」の出発点になります。
しかし、
- 結果は理解した。それでも、自分たちの課題として受け止められない。
- 課題はわかった。それでも、部門によって認識が違う。
- 改善の方向性は見えている。それでも、具体的な行動が決まらない。
となることも少なくありません。
前に進むために、組織の状況に応じて「共有」を「共創」へと進めるための仕組みが必要になります。
ミラー質問調査で「自分ごと化する」
調査結果を聞いて、「そういう評価だったんですね」「会社として改善した方がいいですね」で終わってしまえば、調査結果はどこか「他人事」のままです。
問題意識を「自分ごと化」するのに有効なのが、ミラー質問調査です。
ミラー質問調査では、顧客に聞いた質問と同じ内容を社員にも問いかけ、「私たちは、お客様からどう評価されていると思うか」を考えてもらいます。
すると、単に顧客の評価を見せられるのではなく、自分自身が考えた評価と顧客の評価を比べることになります。
「自分たちはできていると思っていたが、顧客はそう感じていなかった」あるいは、「自分たちは当たり前だと思っていたことを、顧客は高く評価してくれていた」といった発見が生まれます。
ミラー質問調査を媒介として、顧客の声を単なる調査結果から、「自分たちはどう見られているのか」という問いに変えることができます。
クロスオーバー分析で「認識を重ねる」
次に、顧客満足度調査で得られた顧客評価と、ミラー質問調査で得られた社員の認識を重ねてみます。
すると、たとえば、
- 顧客も社員も認識している強み
- 顧客だけが気づいている強み
- 社員だけが強みだと思っている点
- 改善の優先課題
といった違いが見えてきます。
顧客が高く評価しているのに社員が気づいていなければ、それは自社にとって当たり前になりすぎている「隠れた強み」かもしれません。社員が強みだと思っているのに顧客から評価されていなければ、その価値が十分に伝わっていない可能性もあります。
顧客と社員という異なる視点を重ねることで、単独の調査結果だけでは見えにくかった改善の方向性を考える。これが、クロスオーバー分析の「認識を重ねる」という役割です。
一歩前進対話で「行動を共創する」
ここまで来ると、「何が課題なのか」「どこに認識差があるのか」は見えてきます。次に必要なのは、「では、自分たちは何をするのか」を決めることです。
そこで活用できるのが、一歩前進対話です。
ミラー質問やクロスオーバー分析で見えてきた認識差をもとに、幹部とスタッフがそれぞれの立場から改善策を考えます。
具体的には、次のように進めます。
幹部は、「この部門を1年後にどうしたいか」という未来からのバックキャストで考える。
一方、スタッフは、「明日から何をはじめられるか」という現場からのフォアキャストで考える。
そして両者を突き合わせ、対話を通じて、組織として取り組む「共通の一歩」を決めます。
ここでは、経営側が改善策を決めて現場に指示するのでも、現場だけに改善を任せるのでもありません。
「理想」と「現実」の両方から改善策を考え、行動を共創する。これが一歩前進対話の役割です。
「共有」から「共創」へ
ここまでを整理すると、第0の壁を越えるためのアプローチは、以下の図の4つに整理できます。

どの方法から着手すべきかは、組織が「共有・共創」のどこで止まっているかによって変わります。これらの方法をすべて実施する必要はありません。
結果はわかったが、自分ごとにならないのであれば、ミラー質問。
顧客と社員の認識差を整理したいのであれば、クロスオーバー分析。
課題はわかったが、具体的な行動が決まらないのであれば、一歩前進対話。
というように、組織によって必要なアプローチは異なります。
大切なのは、組織が「共有・共創」のどこで止まっているのかを見極め、必要な方法を組み合わせることです。
CSプロジェクトの改善フレームワーク
顧客満足度調査のプロジェクト全体を俯瞰すると、大きく、「把握 → 共有・共創 → 実行・定着」という3つのステージとしてとらえることができます。
把握では、調査・分析によって顧客の声をとらえ、強みや課題を見極める。
共有・共創では、その結果を共有し、自分ごととして考え、異なる認識を重ね、組織として取り組む次の一歩を決める。
実行・定着では、決めた施策を実行し、その変化が顧客に届き、評価につながったかを継続的に確かめる。

つまり、「調査 → 分析 → 結果共有 → ミラー/クロスオーバー → 次の一歩 → 実行 → フォローアップ/その先へ」という一連の流れです。
調査設計や分析は、もちろん重要です。しかし、どれだけ精緻な調査を行い、優れた分析をしても、その結果が組織の中で理解され、自分たちの次の行動につながらなければ、改善ははじまりません。
「共有」とは、報告書を配ることではありません。
顧客の声をわかる形にし、自分たちの課題として考え、異なる認識を重ね、次の一歩を自分たちで決める。
「共有」を「共創」へ進めることが、第0の壁を越え、改善活動を動かしはじめる第一歩になります。
今のCS調査が、どこで止まっているのか整理してみませんか?
顧客満足度調査を一度は実施したものの、「次に何をすればよいかわからない」「結果が十分に活かせていない」と感じている場合、第0の壁の前で立ち止まっている可能性があります。
これまでの調査内容や結果をもとに、次に進むための考え方を一緒に整理する無料アドバイスをご用意しています。お気軽にご相談ください。
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