―はじめてのBtoB顧客満足度調査シリーズ②―

はじめに

STEP1では、BtoB顧客満足度調査をはじめる前に、「この調査結果を使って何を判断したいのか」を明確にすることの大切さを説明しました。
目的が決まったら、次に考えたいのが「誰に聞くのか」です。

BtoBの顧客満足度調査では、「取引先企業にアンケートをお願いしよう」と考えがちです。
しかし、実際にアンケートに回答するのは企業ではなく、そこで働く「人」です。

同じ顧客企業でも、経営層や意思決定者と、日常的に営業担当者とやり取りしている担当者、実際に製品やサービスを利用している人では、見ているものが違います。
また、取引をはじめたばかりの顧客と、長年取引している顧客でも、評価できる範囲は異なります。

BtoB顧客満足度調査では、単に「どの企業に聞くか」ではなく、「今回の調査目的に対して、誰の声を聞く必要があるのか」まで考えることが重要です。

「顧客企業」を一つの評価として考えない

たとえば、ある製品について顧客企業に聞く場合を考えてみましょう。

その製品を採用するかどうかを決めた人は、

「価格は妥当だったか」
「他社と比較して採用する価値があったか」
「取引先として信頼できるか」

といった視点で評価しているかもしれません。

一方、日常的に自社の営業担当者と接している人なら、

「問い合わせへの対応は速いか」
「こちらの要望を理解してくれるか」
「必要な情報を提供してくれるか」

といった点を見ているでしょう。

さらに、実際に製品を使用している人なら、

「使いやすいか」
「性能は十分か」
「故障やトラブルはないか」

といった評価になるかもしれません。

どれもその顧客企業から見た評価です。しかし、立場によって見えている顧客体験が違います。
そのため、「A社の満足度は4点だった」という数字だけでは、その評価が誰の視点によるものなのかがわかりません。

BtoBでは、まずこのことを意識して対象者を考える必要があります。

誰に聞くかは「調査の目的」から決める

では、誰に回答してもらえばよいのでしょうか。ここでも、STEP1で決めた「何を判断したいのか」に立ち返ります。

たとえば、今後も取引先として選ばれ続けるために何が必要かを知りたいのであれば、契約や採用に関わる意思決定者の評価が重要になります。
営業活動を改善したいのであれば、日常的に営業担当者と接している窓口担当者の声が参考になります。
製品の使いやすさや品質を改善したいのであれば、実際の利用者から評価してもらう必要があります。

大きく分けると、BtoBでは次のような回答者が考えられます。

回答者主に見ていること
意思決定者・経営層取引価値、信頼性、今後の取引、投資対効果など
購買・調達担当者価格、契約条件、納期、供給体制など
日常の窓口担当者営業対応、情報提供、問い合わせ対応など
製品・サービスの利用者品質、性能、使いやすさ、サポートなど

もちろん、実際の役割は企業によって異なりますし、一人が複数の役割を担っていることもあります。
大切なのは肩書で機械的に対象者を決めることではありません。「今回知りたいことについて、実際に評価できるのは誰か」という視点で考えることです。

一社から複数の人に聞くという選択肢もある

BtoB顧客満足度調査では、一つの顧客企業から必ず一人だけに回答してもらう必要はありません。むしろ、調査目的によっては複数の立場から回答を得ることで、その企業との関係を立体的に把握できます。

たとえば、意思決定者からは「会社としての信頼性や今後の取引意向」、窓口担当者からは「営業対応や情報提供」、利用者からは「製品品質や使いやすさ」について聞く、といった方法です。
同じ企業でも、「意思決定者からは高く評価されているが、現場の利用者には不満がある」とか、「利用者からの製品評価は高いが、購買担当者は価格や納期に不満を感じている」といったこともあります。

これらは一つの企業を一つの「満足度」で表すだけでは見えない違いです。
ただし、回答者が増えれば依頼や管理の負担も増えますので、いつも必ず一社から複数人に聞いた方がよいというわけでもありません。
ここでも調査目的に必要な範囲で対象者を決めることが基本です。

新規顧客と既存顧客では「評価できること」が違う

もう一つ、対象者を考えるときに確認したいのが、その顧客がどのくらい自社との取引を経験しているかです。

取引をはじめたばかりの新規顧客と、何年も取引している既存顧客では、評価できる内容が違います。

たとえば新規顧客に、

「アフターサービス全般について満足していますか」
「今後も利用したいと思いますか」

と聞いても、まだ十分な経験がなく、評価しにくいことでしょう。

一方、新規顧客だからこそ、

• なぜ自社を選んだのか
• 他社と何を比較したのか
• 導入時の説明はわかりやすかったか
• 契約前の期待と実際使ってみての体験にギャップはなかったか

といったことを、新鮮な記憶のうちに聞くことができます。

顧客満足度調査の“対象者選定”を考える──新規と既存を同じ調査に含めてはいけない理由」コラムでも、新規顧客は体験量が少ないため、企業との長期的な関係を評価するリレーショナル調査では既存顧客と同じ条件で扱いにくい一方、購入・導入直後の体験を確認するトランザクショナル調査では重要な対象になると整理しています。

つまり、新規顧客を調査対象から外すか、入れるかという二択ではありません。
「その顧客が答えられることは何か」を考え、目的に応じて聞き分けることが大切です。

回答してもらうには「調査の意味」が伝わることが大切

誰に聞くかが決まったら、次に考えたいのがどうすれば回答してもらえるかです。

BtoBの顧客満足度調査では、取引先の担当者が業務時間の一部を使ってアンケートに回答してくれることになります。だからこそ、

「なぜこの調査を行うのか」
「回答を何に活かすのか」

を伝えることが重要です。

単に、「顧客満足度向上のため、アンケートへのご協力をお願いいたします。」と依頼するだけでなく、「今後の商品・サービスやお客様対応の改善に活かすため、ご意見をお聞かせください。」など、回答が何につながるのかを具体的に伝えます。

また、回答負荷を抑えることも重要です。
聞きたいことをすべて盛り込むのではなく、今回の目的に必要な質問に絞る。これはSTEP1で目的を明確にすることともつながっています。

匿名にするか、回答者を特定できるようにするか

BtoB顧客満足度調査では、匿名調査にするか、回答者を特定できる形式にするかも検討しておきたいポイントです。

匿名にすれば率直な意見を書きやすくなることがあります。
一方で、誰から寄せられた意見なのかわからなければ、

「この問題について詳しく状況を確認したい」
「不満を感じている顧客に個別に対応したい」

と思っても、その後のフォローができません。

特にBtoBでは一社一社との関係が長く続くことも多いため、調査結果を個別の顧客対応につなげることにも大きな意味があります。
そのため、調査目的によっては回答者を特定できる形式を検討する価値があります。

ただし、「記名式が正解、匿名式が間違い」ではありません。率直な回答を得ることを優先したい場合や、回答者が特定されることで答えにくくなると考えられる場合には、匿名性への配慮が必要です。

たとえば、

  • 回答者情報は調査事務局だけが管理する
  • 集計結果は個人が特定されない形で共有する
  • 個別フォローを希望する人だけ連絡先を記入してもらう

など、目的に合わせた方法を考えることができます。

重要なのは、回答者が安心して答えられることと、調査後の活用を両立できる方法を考えることです。

回答してもらったら「聞きっぱなし」にしない

そして、BtoB顧客満足度調査で特に大切にしたいのが、回答後のフィードバックです。

顧客が時間を使って意見を伝えてくれたにもかかわらず、その後何も変化が見えなければ、「アンケートに答えたけれど、結局どうなったのだろう」と思われても不思議ではありません。これが繰り返されれば、次回の調査への協力意欲も下がってしまいます。

反対に、「前回いただいたご意見を受けて、このような改善を行いました。」と伝えることができれば、顧客は「自分たちの声が会社に届いている」と感じられます。

もちろん、寄せられた要望すべてに対応できるわけではありません。重要なのは、すべての要望を実現することではなく、声を聴く → 社内で検討する → できることを改善する → その結果を顧客へ返す、という循環をつくることです。

声を聴く → 社内で検討する → できることを改善する → その結果を顧客へ返す

BtoBでは、顧客満足度調査そのものを顧客との継続的な対話の機会として捉えることができます。

調査をはじめる前に、この2つを確認してみる

STEP1では、

「今回の顧客満足度調査では、________を把握し、________を決める。」

という一文を考えました。

STEP2では、それを見ながら次の2つを確認してみてください。

「今回知りたいことについて、誰なら実際に評価できるだろう?」

そして、

「その人が安心して、無理なく回答できる方法になっているだろうか?」

この2つが決まれば、「顧客リストに載っている人へ一斉にアンケートを送る」のではなく、調査目的に合った対象者と実施方法を考えられるようになります。

まとめ――「どの企業に聞くか」から「誰の声を聞くか」へ

BtoB顧客満足度調査では、顧客企業を一つの評価として考えないことが重要です。

同じ企業の中でも、意思決定者、購買担当者、日常の窓口担当者、製品・サービスの利用者では、見えている顧客体験が違います。また、新規顧客と既存顧客でも、評価できる範囲は異なります。

だからこそ、「どの企業にアンケートを送るか」ではなく、「今回知りたいことについて、誰の声を聞く必要があるのか」から対象者を考えてみましょう。

そして、目的を伝え、回答負荷を抑え、安心して答えられる方法を用意し、回答後には可能な範囲でフィードバックする。
そこまで考えることで、顧客満足度調査は単なる「アンケート」ではなく、顧客との関係を深める機会にもなります。

次のSTEP

誰に聞くのかが決まったら、次はいよいよ「何を・どう聞くのか」を考えます。

聞きたいことをそのまま質問にしてしまうと、回答者に意図が伝わらなかったり、答えにくい質問になったりすることがあります。
また、聞きたいことを詰め込みすぎれば、回答者の負担も大きくなります。

STEP3では、「聞きたいこと」を「答えやすく、分析や改善に使える質問」へ変えるためのアンケート設計の考え方を整理します。

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