顧客満足度調査を実施すると、「○%が満足」「満足度の平均が3.9」といった数字が並びます。
もちろん、こうした数値は現状把握に役立ちます。しかし、その数字の確認だけで終わってしまい、
「で、何を改善すべきか?」
という問いには答えられないケースも少なくないようです。
調査の真価は、数字を並べることではなく、改善の方向性を導くことにあります。
よくある誤解と共感ポイント
顧客満足度調査の結果を分析・報告する場面では、しばしば次のような疑問や不満が聞かれます。
❓「価格が満足度の主要因として出てこないのは納得できない」
価格は顧客が商品やサービスを選ぶ際の大きな判断材料です。
そのため、「価格が主要因ではない」という結果に違和感を持つ経営層は少なくありません。
❓「どの項目が大事かなんて、顧客に直接聞けば済むのでは?」
また、調査票に「どの要素を重要と考えますか」と聞けば答えが得られる、と考える方もいます。
どちらも自然な疑問ですが、実はここに「重要度」と「影響度」という概念の違いが関係しています。
「重要度」と「影響度」は違う
中には「どの項目が重要ですか?」と顧客に直接尋ねる調査もあります。しかしこの場合、多くの項目が「重要」と答えられてしまいます。
安全性、信頼性、価格、対応の良さ……顧客にとって「重要でない」と言い切れるものはほとんどありません。その結果、「全部大事」という結論にしかならず、改善の優先順位をつけられなくなるのです。
一方で「影響度」は、統計的な分析を通じて実際に満足度や全体評価を左右している度合いを示します。
顧客が「重要」と感じていることと、満足度を実際に動かしていることは必ずしも一致しないのです。
「重要だが影響していない」典型例
典型的なのが航空会社の安全性です。顧客に聞けば誰もが「非常に重要」と答えるでしょう。
しかし満足度モデルを分析すると、安全性が満足度を分ける要因にはなりません。
なぜなら、どの会社も十分に安全で、評価に差がつかないからです。
価格も同じです。価格は購入前の比較には大きく影響しますが、購入後の満足度や再利用意向には影響が弱いことが多いのです。
逆に「応対スピード」「修理対応」など、日常的に体験する要素こそが満足度を強く左右する傾向にあります。

当社における用語の扱いについて
本来「重要度」と「影響度」は異なる概念です。ただし当社では、クライアントの皆さまにとって直感的に理解しやすいように、統計的に算出された「影響度」を便宜上「重要度」と呼んでいます。
同様に、他のコラムで用いている「重要度」という表現も、実際に満足度にどれだけ影響しているかという意味での“影響度”を指しています。
「影響度」を測る分析アプローチ
では、どのように影響度を明らかにできるのでしょうか。
以下、代表的な手法を紹介します。
キードライバー分析(重回帰分析)
各要因が全体満足やロイヤルティにどの程度寄与しているかを定量的に特定します。
たとえば、以下のような分析結果から、 「アフターサービスが最も効いている」「営業対応が次に効いている」といった優先度がわかります。

優先度マップ(重要度×満足度マトリックス)
影響度とパフォーマンス(=満足度)を掛け合わせて整理します。

高影響度 × 低パフォーマンス=最優先改善領域
高影響度 × 高パフォーマンス=強みとして維持すべき領域
低影響度 × 高パフォーマンス=過剰投資の可能性がある領域
これにより、経営層は「どこを改善すべきか」を一目で把握できます。
満足度変化シミュレーション(ペナルティ・リウォード分析)
顧客の評価スコアごとに全体満足度がどう変化するかを分析します。
これにより、「低評価になると、どれだけのダメージがあるか」「高評価がどれだけのアップにつながるか」というシミュレーション結果を数値化して、可視化できます。

「営業担当は、評価4点以上でようやくプラスに転じる」
「価格は評価が1点だと大きなマイナスになるが、2点ならほぼダメージなし」
といった閾値がわかり、現場改善に直結します。
ビジネスへの実務的価値
こうした分析を行うことで、調査結果は「現状把握」から「改善の指針」へと進化します。
🔷 経営層にとって
「どの領域に優先的に投資すべきか」を明確に示すことで、戦略的判断を支援できます。
🔷 現場にとって
「何を、どのレベルまで改善すべきか」が具体的にわかるため、行動に落とし込みやすくなります。
🔷 全社として
無駄な投資を避け、本当に顧客が反応する改善に集中できます。
結果として、満足度調査が事業成長のための実践的ツールとなるのです。
数字から改善へ、改善から成長へ
顧客満足度調査の本当の価値は、単に「満足度○%」と報告することではありません。
重要度=影響度の視点を導入することで初めて、「どの領域に注力すべきか」という改善の道筋が見えてきます。数字を行動に変え、その改善を事業成長へと結びつける。このサイクルこそが、満足度調査を投資に見合うものにする最大のポイントです。
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