BtoBの顧客満足度調査では、総合満足度、推奨意向、継続利用意向などの数値データが重視されることが少なくありません。
もちろん、これらは重要な情報です。

しかし、実際に改善施策を考えようとしたとき、「なぜその評価なのか」「どこに不満があるのか」が見えず、手が止まってしまうケースも多くあります。

その理由は、数値だけでは“背景”が見えないからです。
つまり、CS調査の結果に「深み」が足りない状態と言えます。

回答データに「深み」を加えるためには、自由回答を上手に活用する必要があります。

数値だけでは、「理由」がわからない

たとえば、「総合満足度は高い、継続利用意向も高い」という結果だったとして、その理由は顧客によってまったく異なる可能性があります。

  • 製品の品質を評価している
  • 営業対応を評価している
  • サポート体制を評価している
  • 他社より価格が安いと感じている
  • 特に不満はないし、他に切り替えるのが面倒だと感じている

など、背景はさまざまです。

逆に、不満についても、

  • 品質への不満
  • 納期への不満
  • 現場対応への不満
  • 情報共有不足
  • 提案不足

など、内容は大きく異なります。

数値だけを見ても、「何が起きているのか」までは見えてきません。

BtoBでは、“1件の声”の重みが大きい

特にBtoBでは、自由回答の重要性が高くなります。
その理由のひとつが、1社あたりの影響度が大きいからです。

BtoBでは、取引金額が大きい特定顧客への依存度が高く、かつ、長期取引が前提といったケースも少なくありません。
そのため、“たった1件の自由回答”が、重要な経営リスクや競争課題を示していることがあります。

自由回答質問で、顧客の本音をうまく引き出すことができれば、「最近、他社提案が増えている」「導入後のフォローが弱い」といった具体的な意見が示されます。
そうした顧客の声1件1件にじっくりと耳を傾けることで、競合流出リスクやブランド毀損につながりかねない重要な兆候を読み取ることができます。

自由回答は、「不満収集」のためだけではない

しかし、本来重要なのは、「なぜ不満なのか」だけでなく、「なぜ選ばれているのか」を理解することです。
改善活動では課題ばかりに目が向きがちですが、競争優位の源泉となっている強みを理解することも同じくらい重要です。

たとえば、「細かい相談に乗ってくれる」「トラブル時の対応が早い」といった声は、単なる“褒め言葉”ではありません。
そこには、顧客が競合比較の中で、どこに価値を感じているのかが表れています。

つまり自由回答は、“選ばれている理由”を知るための重要な情報でもあるのです。

「深み」が加わると、解釈が変わる

たとえば、「新規顧客の満足度が低い」という結果があったとします。
数値だけでは、導入支援の問題か、営業説明不足か、あるいは、初期トラブルや利用法習熟の問題なのかはわかりません。

しかし自由回答を見ることで、

  • 「使い方説明が不足していた」
  • 「問い合わせ窓口がわかりづらい」
  • 「運用開始直後のフォローが少ない」

といった具体的な背景が見えてきます。

つまり、自由回答によって、“数値の意味”を具体的に理解できるようになります。

定量と定性は、対立するものではない

CS調査では、定量分析と定性分析を別々に考えてしまうケースもあります。
しかし実際には、両者を組み合わせることが重要です。

たとえば、クロス集計で「どこに問題があるか」を把握し、自由回答で「具体的にどのような問題が起きているか」を理解するという流れです。

つまり、

顧客属性データを活用したクロス集計「幅」=構造を捉える
自由回答の分析「深み」=理由を理解する

という役割分担になります。

自由回答を、“読むだけ”で終わらせない

もちろん、自由回答は「読んで終わり」ではありません。
重要なのは、どの意見が多いのか、どの顧客層で出ているのか、満足・不満とどう関係しているのか、といった視点で整理しながら読むことです。

たとえば、

  • 導入初期顧客に多い不満
  • 特定業界に集中している課題
  • 大口顧客で頻出する要望

などを把握することで、改善施策の優先順位も見えてきます。

つまり、自由回答は、“感想欄”ではなく、“意思決定の材料”として活用することが重要です。

「測る」から、「理解する」へ

BtoBのCS調査では、「どのくらい満足しているか」を測るだけでは十分ではありません。
重要なのは、「なぜそう感じているのか」を理解することです。
そして、その理解を支えるのが、自由回答です。

自由回答によって「深み」が加わることで、CS調査は、“満足度スコアを確認する調査”から、“顧客理解のための調査”へと変わっていきます。

次回は、「意思決定につなげる方法」へ

前回のコラムで、顧客データベースを活用して「幅」を加える考え方を、そして、今回のコラムで、自由回答を活用して「深み」を加える考え方をみてきました。

しかし、幅と深みを加えただけでは、まだ十分ではありません。
本当に重要なのは、その気づきをどのように優先順位付けし、具体的な意思決定につなげるかです。
次回は、CS調査の結果を実際の改善施策へと結び付ける考え方についてご紹介します。

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