Yahooニュースのコメントをソーシャルリスニングしてみる

先日、Yahooニュースに神奈川新聞による路上ライブについての記事が掲載されました。
内容は、川崎駅前広場での路上ライブが「うるさい」「邪魔だ」と通報され、警察対応が増加しているというものでした。
この広場は「道路」として使用許可が必要ですが、多くのミュージシャンが無許可で演奏しているため、警察は規制と市の「音楽のまち」方針の間で対応に苦慮しています。

この記事に対して、実に4,000件を超えるコメントが寄せられています。
これらのコメントは、ソーシャルリスニングを行う上で非常に貴重なデータになりえます。ソーシャルリスニングとは、インターネット上で発信された消費者の声を分析し、企業や団体がマーケティングや戦略立案に役立てるための手法です。

このコラムでは、Yahooニュースに寄せられたコメントを分析し、その結果から得られた示唆を紹介し、ソーシャルリスニングの有効性について考察します。

コメント分析で陥りがちな落とし穴

まず、膨大なコメントを目にすると、無意識に自分に都合の良い意見や、目立つ否定的な意見に関心が向いてしまうことがあります。

たとえば、路上ライブに関して肯定的な意見も存在するのに、否定的なコメントの方が圧倒的に目立つため、それに引きずられてしまいがちです。また、特に感情的なコメントに影響されて、冷静な意見や建設的な提案が過小評価されることもあります。

このような偏りを避けるためには、コメント全体を体系的に把握し、全体像を理解することが重要です。ここで参考になるのが、AIを活用してコメントを分析し、全体的な傾向をつかむことです。

AIを使った分析結果

実際にAIで分析を行ったところ、以下のような結果が得られました。

コメント総数: 約4,000件

  • 肯定的な意見: 30%
  • 否定的な意見: 60%
  • 中立的な意見: 10%

肯定的な意見の背景には、表現の自由や街の活気を尊重する姿勢が見られました。
一方で、否定的な意見は騒音問題や無許可での演奏に対する不満が大半を占めていました。
また、中立的な意見では、表現の自由と生活環境の両方を尊重するバランスの取れたルール作りを求める声が目立ちました。

手作業での詳細なコメント分析

AIの分析を踏まえ、次に手作業でコメントの詳細な分析を行いました。

ここで重要なのは、Webスクレイピングなどの手法を用いず、すべて手作業でコメントを取得した点です。
Yahooニュースに寄せられたコメントのうち返信を含まない3,000件以上をすべて手作業でコピペした後、無作為に約500件を抽出してアフターコーディングを行いました。これにより、取得データの正確性と倫理性を保ちながら、質の高い分析を実施しています。

さらに、分析に際して取得した3,093件のコメントの文字数も調べてみました。その結果、最も文字数が多いコメントは400字であり、コメント全体の平均文字数は89字、最頻値は29字という結果が得られました。これにより、コメントが簡潔なものから詳細なものまで幅広く存在していることがわかります。

さて、手作業による分析の結果は以下のとおりとなりました。

手作業による分類結果
複数のカテゴリーに分類されるコメントがあるため、たとえば個々の「肯定的な意見」の合計が「8.1%」を超えている。

特に注目すべきは、条件付きで肯定的な意見が43.0%と非常に高い割合を占めていた点です。これらの意見は、音量制限や許可制の導入など、路上ライブを一定の条件の下で容認するものであり、単純に賛成または反対に分けられないことを示しています。
一方、否定的な意見も約36%と高く、こちらは騒音や公共の場でのマナーが主な理由でした。

AI分析との違い

AI分析と手作業での分析結果を比べてみると、以下の通りとなりました。

AI分析は、膨大なコメントの全体傾向を迅速に把握するには非常に有効です。しかし、感情的なニュアンスや条件付きの複雑な意見、そして少数意見の拾い上げといった点で限界が存在します。たとえば、皮肉や曖昧な表現はAIにとっては難解であり、そのため重要な情報を見逃してしまう可能性があります。

これに対して、手作業での分析は、こうした複雑な意見を的確に理解し、深く掘り下げることが可能です。

今回の路上ライブのように賛否が入り混じったテーマでは、AIによる「肯定」「否定」の単純な分類では不十分でしょう。手作業での分析により、具体的な改善点や条件付きの支持など、戦略的な示唆を引き出すことができます。

今後の方向性

今回のコメント分析から見えてきたのは、路上ライブに対する完全な賛成や反対の意見よりも、条件付きで支持する意見の多さです。これは、住民とミュージシャン、そして行政が対話を通じて、適切なルール作りを行うことの重要性を示しています。たとえば、時間帯や場所を限定したり、音量を制限したりするなどの具体的な措置が有効と考えられます。

ソーシャルリスニングの活用方法

このように、Yahooニュースのコメントを分析することで、世論の実態を把握し、適切な対応策を見出すことができます。企業や団体がこうした手法を使って消費者の声を集め、製品開発やサービス改善に活用することがソーシャルリスニングの大きなメリットです。

インターネット上に発信された意見は、多くの示唆を提供してくれます。ソーシャルリスニングを通じて、自社の課題や顧客のニーズをより深く理解し、課題解決に向けた新たな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?
ソーシャルリスニングに興味がある方は、当社までお気軽にお問い合わせください。

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