問題を早期発見

定期的な患者満足度調査を行うことで、自覚していない患者対応の問題を早期に発見することができます。

病院に対する患者の満足度は、消費者の立場で商品・サービスを購入する場合とは異なります。
一般的な商品・サービスでは、事前の期待を上回ることが顧客の満足につながるのに対し、医療サービスでは、健康や疾病に関する不安を軽減・除去することが患者の満足に結びつきます。
もちろん治療がうまくいくことが大前提ですが、さらに満足度を高めていくためには、患者を安心させる職員のコミュニケーションや院内環境が重要になります。

日頃、健康に自信がある人でも、定期的な健康診断により、自覚症状のない身体の異常を早期に発見できるのと同様に、患者のことはよく理解しているつもりでも、病院にとって自覚していない問題があるかもしれません。病院自身も健康診断としての患者満足度調査を定期的に実施しましょう。

患者満足度とPX(ペイシェント・エクスペリエンス)は二者択一ではない

患者満足度調査について、たまに「患者の主観的な評価で客観性がなく、具体的な改善につながりにくい」という意見を聞くことがあります。
待ち時間やナースコールのレスポンスタイムなど、客観的に病院の実態を把握するPX(Patient Experience)の方が、患者満足度:PS(Patient Satisfaction)よりも具体的な改善策を見出すのに役立つ、というわけです。

ただ、これは満足度の評価質問以外に、待ち時間などの実態把握質問を盛り込めば済む話です。
そもそも待ち時間についても、患者本人に質問する以上、正確に時計で測った時間ではなく患者自身の体感時間であるわけですし、実際にかかった時間よりも本人がどれだけ長く感じたかの方を尊重すべきでしょう。
実際の待ち時間が減ったとしても患者に実感されなければ評価を高めることはできません。むしろそのギャップを埋めていく改善策を考えていくことが重要なのです。

また、調査結果を具体的な改善に結びつけられるかどうかは、満足度かPXかの二者択一ではなく、両者をバランスよく盛り込んで

■医師の対応や待ち時間など患者接点における現状の評価を把握する

■患者満足度の評価構造を分析して、優先的な改善点を特定する

■具体的な改善策を検討する

ことができるよう調査設計できるかどうかにかかっています。

患者満足度とPX(ペイシェント・エクスペリエンス)は二者択一ではない

医師の対応や待ち時間など患者接点における現状の評価を把握する

厚生労働省が全国の病院を対象に3年に1度行っている「受療行動調査」は

外来患者診察等までの待ち時間、診察時間、来院の目的、初めて医師に診てもらったときの自覚症状、医師から受けた説明の程度、病院を選んだ理由、満足度、等
入院患者病院を選んだ理由、入院までの期間、医師から受けた説明の程度、今後の治療・療養の希望、退院の許可が出た場合の自宅療養の見通し、満足度、等

と、患者満足度とPXの両方をカバーする質問内容になっています。

直近では令和2年にコロナ禍の中で実施され、484病院の外来・入院患者あわせて16万人近くが回答しました。
満足度に関する全体ベースの調査結果は以下の通りです。

【外来患者の満足度】

外来患者の満足度

【入院患者の満足度】

入院患者の満足度

両者を比べると

  • 全体満足度をはじめ共通項目では、外来患者よりも入院患者の満足度の方が高い
  • 外来・入院とも、医師など病院スタッフに関する項目の満足度は高く、全体満足度とほぼ同レベル
  • 外来では「待ち時間」、入院では「食事」の満足度が、他の項目に比べて大幅に低い

といった傾向が見受けられます。

これらの結果は、自院で調査を実施する場合のベンチマークとして参考にすることができるでしょう。
ただし、ベンチマークより評価が高い/低いということだけを改善点の判断基準とするのは必ずしも正しくありません。
患者調査の目的は、他院との比較よりも患者に頼りにされる病院づくりのためであるべきです。そのためには、病院の総合満足度を高めるにはどの患者接点の評価が重要かを分析する必要があります。

患者満足度の評価構造を分析して、優先的な改善点を特定する

満足度調査を実施し、患者接点の評価と総合満足度への重要度をプロットすることで、4象限における位置関係から優先的に改善すべき問題が見えてきます。

患者満足度調査のCSポートフォリオ例

重要度については、各項目について「非常に重要」~「まったく重要ではない」の5段階評価などで直接重要度を質問する、あるいは全体満足度と各項目評価との相関係数や重回帰係数を分析して用いる方法があります。

さて、上図の例では、総合満足度への重要度が高いのに現状の評価が低い、すなわち最も改善優先度の高い右下の象限に含まれる項目は見あたりません。
この場合、重要度も現状の評価も高い「医師による診療・治療内容」「医師以外の病院スタッフの対応」の評価を維持することが重要といえます。
次に取り組むべきなのが、重要度は高くないものの現状の評価が低い「待ち時間」「診察時間」の改善になるでしょう。

具体的な改善策を検討する

CSポートフォリオなど定量的なデータ分析によって改善優先度の高い個別項目が特定されたら、具体的な改善策を検討していきます。
ここで、実際の待ち時間などPX質問の結果から改善目標を設定するのもよいでしょうが、ぜひ活用していただきたいのが質的情報としての自由回答データです。
満足度の評価理由など、一人ひとりの自由回答を丁寧に読み込み、問題解決に結び付くと思われる有益なコメントを見つけ出していきましょう。

CSポートフォリオなど定量的なデータ分析によって改善優先度の高い個別項目が特定されたら、具体的な改善策を検討していきます。

患者満足度の向上には病院スタッフの職場満足度の改善が不可欠

患者満足度を向上させるための具体的な改善策が決まっても、病院職員が納得して協力してくれなければほとんど効果は期待できません。
そして、職員に積極的な協力を求めるならば、病院も目に見える形で職場の改善に取り組む必要があるでしょう。

医療機関でも働き方改革が動き始めていますが、実際に職員アンケートを行ってみると、時間外労働や前残業、有休消化、シフト管理やハラスメントなど、病院スタッフの職場への不満は以前からほとんど変化がないように感じます。
制度があっても機能していなければ職員の満足度向上にはつながりません。記録に残らない勤務実態を含め、病院に対するスタッフの率直な評価を知るには、匿名で行う従業員満足度調査の実施が非常に有効です。

患者満足度調査と従業員満足度調査を車の両輪として2本立てで活用し、頼りにされる病院として医師や看護師に対する患者の満足度や信頼が高まり協力的になってくれれば、治療そのものや患者ケアにもよい効果が表れ、患者の満足度が職員の満足度につながり、職員間の連携も強まる好循環が期待できるでしょう。

患者満足度の特徴や調査の実施ポイントをまとめた資料をご用意しています。
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