顧客満足度調査は、企業の成長に欠かせない重要なツールです。しかし、調査の実施にあたっては、基本的な部分でつまずくことが多いようです。
このコラムでは、顧客満足度調査の基本的な疑問点をQ&A形式でわかりやすく解説します。調査の必要性から回収数、回収率の目安や費用のことまで、初めての方でも安心して取り組める内容となっています。
1 顧客満足度調査はなぜ必要?
顧客満足度調査は、顧客の感情やニーズを数値化し、商品やサービスの改善に活用するための重要な手段です。この調査を通じて、顧客が何を求めているのかを明確にし、業績拡大や顧客ロイヤルティの向上につなげることができます。
2 どのくらいの回収数が必要?
顧客満足度調査の回収数は、少なくとも30人以上、できれば50人以上を目指します。回収数が少ないと誤差が大きくなり、信頼度が低下するため注意が必要です。顧客数が少ない場合は、%ではなく、「○人中△人」のように実数での分析が効果的です。
3 顧客満足度調査の回収率(協力率)はどのくらい?
顧客満足度調査の回収率は、調査方法によって異なりますが、一般的に30%程度を目標とするとよいでしょう。回答時間を5分から長くても10分程度に抑えるなど、設問の工夫も回収率向上に寄与します。
4 謝礼の提供は顧客満足度調査に効果的か?
謝礼の効果
謝礼の提供は、調査の回収率(協力率)を向上させる効果があります。たとえば、抽選で一定数の回答者にギフトカードを提供するという方法が考えられます。このような謝礼があると、謝礼がない場合に比べて、より多くの人が調査に協力してくれる可能性が高まります。
謝礼の影響に関するデータ
ある学術調査によれば、調査に協力した理由として「謝礼がもらえるから」と答えた人は全体の5%だったとのことです。ただし、この数字は「謝礼がもらえるから」という理由を正直に答えるのが難しいため、実際の影響はもっと大きいと考えられます。
BtoB調査と謝礼の問題点
特にBtoBの調査の場合、謝礼の提供には注意が必要です。ビジネスの取引関係において、謝礼を提供することがコンプライアンス上の問題となることがあります。そのため、BtoBの調査で謝礼を提供したい場合は、それが適切かどうかを事前に確認する必要があります。
以上をまとめると、謝礼の提供は、顧客満足度調査の回収率を向上させる効果が期待できますが、提供する謝礼の内容や方法、対象となる調査の種類によっては注意が必要ということです。調査を実施する際は、謝礼の提供に関する方針を明確にし、適切な方法を選択することが求められます。
5 顧客満足度調査のベストなタイミングはいつか?
顧客満足度調査のタイミングは、調査の目的や対象によって異なります。適切なタイミングで調査を実施することで、より正確なデータを収集できます。
短期間のサービスの利用やイベント参加の場合
たとえば、ホテルの宿泊やセミナーの受講など、短期間のサービス利用者やイベント参加者を対象とする調査では、サービスの利用やイベントの終了直後に調査を実施するようにしましょう。参加者の記憶が鮮明なうちにフィードバック情報を収集することで、具体的で詳細な意見や感想を得ることができます。
長期的な関係のある顧客の場合
一方、長期的な関係のある顧客、たとえば長期契約のユーザーやファンクラブの会員を対象とした調査では、定期的なタイミングで調査を実施することが効果的です。具体的には、毎年同じ月に調査を行うことで、顧客の満足度の変動やトレンドを定点観測することができます。
調査の実施時期の選定
調査の実施時期を選定する際には、大きなイベントや休暇期間を避けることが重要です。たとえば、3月末~4月初めの入学・卒業・人事異動の時期やゴールデンウィーク、年末年始などの長期休暇は避けるのが望ましいでしょう。また、調査結果を活用するタイミングも考慮し、結果をもとに改善策を策定しやすい時期を選ぶことが重要です。
6 顧客満足度調査の方法 - トランザクショナル調査とリレーショナル調査
顧客満足度調査の方法は、調査の目的や対象に応じて選択する必要があります。トランザクショナル調査とリレーショナル調査にわけて説明します。
トランザクショナル調査
トランザクショナル調査は、特定の取引やサービスの利用経験に基づく顧客の満足度を調査するものです。たとえば、ホテルの宿泊やセミナー受講、オンラインショッピングなどの個別の経験に対する顧客の感想や評価を収集します。トランザクショナル調査の場合は、Webアンケートを使用することで迅速かつ手軽にデータを収集することができます。
リレーショナル調査
リレーショナル調査は、顧客との長期的な関係性全般に関する満足度を調査するものです。商品やサービスの品質、情報提供、アフターサポート、ブランドイメージなど、幅広い側面についての評価を顧客から収集します。リレーショナル調査では、調査の趣旨を深く理解してもらい、詳細な回答を得るために、依頼状を同封して調査票を届ける郵送調査で実施することも少なくありません。
7 顧客満足度調査で匿名性は重要か?
顧客満足度調査を実施する際、回答者の匿名性を保つか、それとも記名式で行うかは、調査の目的や回答者の感じる安心感によって変わります。
匿名調査のメリット
匿名にすると、回答者が自分の意見や感想を正直に伝えやすくなるというメリットがあります。自分の名前が知られることなく安心して回答できるため、回収率(協力率)の向上を期待できます。
記名式調査の場合の注意点
一方、記名式で調査を行う場合、回答者にその理由を明確に伝え、納得してもらうことが重要です。たとえば、後日、詳しいヒアリングを行いたい場合や特定のキャンペーンへの参加を希望する場合など、記名が必要な理由をしっかりと説明することで、回答者の理解と協力を得られる可能性が高まります。
ハイブリッド方式の活用
また、調査の目的に応じて、ハイブリッド方式を採用することも可能です。具体的には、回答者に「連絡可/連絡不可」を選択してもらい、連絡を希望する人のみに記名を求めるという方法です。これにより、回答者のプライバシーを守りつつ、必要な情報を収集できます。
8 顧客満足度調査の選択肢に「どちらともいえない」は必要か?
顧客満足度調査の選択肢に「どちらともいえない」を設けるかどうかは、調査の目的や対象者の特性に応じて検討することが重要です。中立的な意見を正確に捉えるための工夫や、日本人の回答傾向を理解することで、より有意義な調査結果を得ることができます。
「どちらともいえない」を設けないメリット
「どちらともいえない」を選択肢からはずすことで、回答者には明確に「満足」または「不満」のどちらかを選んでもらうことができます。これにより、結果の解釈がシンプルになります。
「満足」の細分化のアプローチ
しかし、回答者が中立的な意見を持っている場合には満足か不満足かの選択を強いることになります。「どちらともいえない」を設けない場合、中立的な意見が「満足」の側に偏る傾向があるようです。従って、満足については「とても満足」「満足」「やや満足」といったように「満足」の度合いを細分化することで、より詳細なフィードバックを得ることができます。
5段階や7段階の段階評価での「どちらともいえない」問題など日本人に特徴的な回答傾向について、以下のページで詳しく説明しています。
9 顧客満足度が高いと言える基準は何%以上か?
顧客満足度がどれくらいなら「高い」と言えるかについて、一律の基準を設けることはできません。満足度スコアのレベルは評価の対象となる商品やサービスの種類によって異なりますし、評価する人の性別や年代などの属性によっても異なる場合があります。
一般に、買い物直後の来店客に対するお買い物満足度調査のようなトランザクショナル調査では満足度が高めになります。一方で、契約者・登録者などに対して顧客満足度や継続利用意向などを聞くリレーショナル調査では、トランザクショナル調査に比べると低めの満足度になります。
前回の調査に比べてどうかとか、競合他社に比べてどうかとか、何か基準となるものと比較して「より高い/低い」かどうかをみるのがよいでしょう。
10 BtoB顧客満足度調査の注意点と実施ポイント
BtoBの顧客満足度調査は、BtoCとは異なる特有のポイントが存在します。調査の対象者の特性を理解し、適切なセグメント設定やビジネスマナーの尊重など、BtoBならではの実施ポイントを押さえることで、より有意義な調査結果を得ることができます。
BtoB調査の特徴
多様な対象者
BtoBの場合、顧客企業内には日常的なやり取りを行う担当者、意思決定を行う上層部、そして実際のサービスや商品を利用するエンドユーザーなど、多様な対象者が存在します。
注意点
対象者が多様であるため、役割や立場に応じてセグメントを設定し、それぞれのニーズや要望を正確に把握することが重要です。
実施ポイント
ビジネスマナーの尊重
BtoBの調査では、ビジネスマナーを尊重することが求められます。たとえば、調査の依頼は文書で行う、事前に調査の趣旨や目的を明確に伝える、などです。
BtoBならではの実施ポイントについて以下のページで詳しく説明しています。
〇BtoBの顧客満足度調査(CS調査)の重要性とその実施方法
11 顧客満足度調査の費用はいくらか?
顧客満足度調査の費用は、調査手法、対象者数、調査票のボリュームなどにより変動します。自社ユーザーを対象とするWeb調査の場合、30万円程度から実施できます。
なお、携帯電話や自動車のように普及率・所有率・利用率が高い商品であれば、インターネットのモニターパネルから自社ユーザーのみならず他社ユーザーもリクルートして調査をすることが可能です。このようなケースでは、調査主体の会社名・ブランド名を明示せずに調査をすることができますので、より客観的な情報を得ることができます。
12 顧客満足度調査結果の社内共有方法は?
顧客満足度調査を行った後、その結果をどのように社内で共有し、活用するかが非常に重要です。以下に、効果的な社内共有の方法を詳しく解説します。
社内共有のポイント
結果のサマリー作成
調査結果の報告書全体をそのまま共有するのではなく、主要な結果をまとめたサマリーを作成します。これにより、結果の概要を迅速に把握することができます。
深堀分析
特に重要な調査結果については、詳細な分析を行い、その背景や原因を探ることが重要です。
ミーティングの実施
部門ごとや部門横断的にミーティングを設け、調査結果のサマリーや深堀分析をもとに、具体的なアクションプランの検討を行います。
効果的な共有方法の例
当社での事例ですが、毎月継続して満足度調査を実施しているお客様用にWebサイト上の専用ページで主な調査結果や自由回答録をご覧いただけるようにしています。Webならではの速報性やアクセスの良さがあり、社内共有の一助となっています。
顧客満足度調査の実施をご検討でしたら、当社までお気軽にご連絡ください。専門のスタッフが、皆様のビジネスニーズに合わせた最適な調査方法を一緒に検討させていただきます。
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