顧客満足度の分析に欠かせないクロス集計

企業にとって、顧客満足度調査は成功の鍵になります。顧客のニーズと期待に応えることは、ビジネスの成長に欠くことができない要素です。多くの企業が行っている顧客満足度調査ですが、調査データを有効に活用するためには、クロス集計をして顧客のニーズや期待について詳しく分析することが重要です。

顧客満足度調査の役割

顧客満足度調査は、顧客とのコミュニケーションを強化し、満足度を高めてロイヤリティを強化することを目的として実施します。調査を通じて集めた顧客の意見や要望は、商品やサービスの改善に生かす貴重な情報源になります。また、調査によって不満や問題点が明らかになれば、手遅れになる前に対策を検討して実行することができます。

クロス集計の重要性

顧客満足度調査で得られるデータは膨大であり、単純な集計では顧客の本音や傾向を理解するのが難しい場合があります。そこで、クロス集計が役立ちます。クロス集計では、複数の要素を組み合わせてデータを分けてみることで、詳細で有用な情報を見つけることができます。たとえば、年代別に顧客の評価を集計することで、特定の年齢層での商品やサービスの評価が高いか低いかを把握できます。

顧客満足の要因を抽出

クロス集計は顧客満足度に効く要因を見出す貴重な手段にもなります。たとえば、支店別のクロス集計から、満足度が高い支店と低い支店との間では何が違うのかを明らかにすることができます。その結果から、高い満足度につながる要因や改善が必要な点を見出すことができます。

このコラムでは、顧客満足度調査におけるクロス集計の活用に焦点を当て、初心者にもわかりやすくクロス集計の概要や実施方法、そのメリットなどを詳しく説明するとともに、クロス集計における留意点や限界についても解説します。

クロス集計とは?

クロス集計はデータ分析の一つの手法であり、複数の要素によってデータを分類・集計する方法です。具体的には、複数の変数(質問項目)を組み合わせて、データを分けて集計することで、分類したグループごとの割合(%)や平均値を出します。

クロス集計の目的

クロス集計の目的は、全体像からは見えてこない傾向を発見することです。たとえば、満足度の評価データを男女別に集計することで、性別による満足度の違いを把握できます。また、商品やサービスの利用頻度についての回答データがあれば、地域別のクロス集計から、地域ごとの需要の違いを把握でき、各地域の顧客ニーズに合わせた戦略を立てることができます。

クロス集計の手法

クロス集計を行ってクロス集計表を作成します。クロス集計表は行と列のそれぞれに変数を割り当てた表です。行と列が交差するセルに対応する集計値が表示されます。たとえば、お店を選ぶ際の情報源の種類を行に、顧客の性・年代を列に設定してクロス集計をすると、性・年代別の参照情報源を把握することができます。

お店を選ぶ際の情報源の種類を行に、顧客の性・年代を列に設定してクロス集計をすると、性・年代別の参照情報源を把握することができる。

グループ分けと切り口の重要性

クロス集計では、データをグループ分けする際の切り口(=分析軸)が重要な役割を果たします。適切な切り口を選ぶことで、より有益な情報を引き出すことができます。たとえば、商品やサービスの評価を地域別に集計する場合、顧客が属する地域がグループ分けの切り口になります。その結果、地域ごとの満足度の違いや改善すべき点を特定することができます。

顧客満足度調査におけるクロス集計のイメージ

クロス集計のイメージを掴むために、具体的な例を挙げてみます。たとえば、以下のような支店別のクロス集計表について、全体との差分が±5ポイント以上あるところを色分けしてみることにより、個々の支店の相対的な強み/弱みが明らかになり、そこから改善が必要なポイントを把握できます。

クロス集計のメリット

クロス集計は顧客満足度調査などのデータ分析において非常に有用な手法であり、多くのメリットをもたらします。ここでは、クロス集計の主なメリットをいくつかご紹介します。

データから見える新たな傾向と洞察

クロス集計により、複数の変数(質問項目)を組み合わせてデータを集計することで、単純集計では見えなかった新たな傾向や洞察を発見することができます。たとえば、年代別に商品やサービスの満足度をクロス集計すると、特定の年齢層での商品やサービスの評価が特に高いか低いかを把握することができます。これにより、顧客の嗜好やニーズに合わせた戦略を立てることができます。

成果につながる具体的な情報を発見

クロス集計によって得られた結果は、具体的でわかりやすい情報として活用できます。たとえば、支店別クロス集計からは、評価の高い支店と低い支店とで違いが大きい項目が見えてきます。これにより、成功している支店の成功要因を特定し、他の支店とも共有することができます。また、逆の見方をすれば、評価が低い支店の改善ポイントを明らかにすることもできます。具体的な情報は、改善施策や戦略の立案に役立ちます。

効果的な戦略立案を可能とする比較分析

クロス集計によって分類されたグループ間の比較がしやすくなります。たとえば、地域ごとの商品やサービスの利用頻度を集計することで、地域によるニーズの違いを理解しやすくなります。これにより、地域ごとのマーケティング戦略や商品戦略を効果的に立案できます。

戦略的意思決定の強化

データに基づく的確な判断は、ビジネスの戦略立案と改善施策の成功確率を高めるのに大きく寄与します。クロス集計によって明らかになる傾向や要因を踏まえ、戦略的な意思決定を行うことで、より効果的なビジネス活動が可能となります。

これらのメリットをもつクロス集計は、ビジネスの成長にとって不可欠なデータ分析手法です。

データから洞察を得るクロス集計の手順

続いて、クロス集計を実施する際の一般的な手順について説明します。

ステップ1: データの準備

クロス集計を行う前に、まず集計用のデータを準備します。GoogleフォームなどのWebアンケートシステムや郵送調査などで収集した回答データを集計用の数値データの形に整えます。欠損値やエラーがある場合は、適切なデータクリーニングを施し、データそのものの信頼性を高めておく必要があります。

ステップ2: クロス集計軸の設定

次に、クロス集計の軸を選択します。軸とは、データをグループ分けするための変数(質問項目)のことです。先ほど紹介したような年代別、支店別などのほかに、満足/不満足などの評価レベル別、ヘビーユーザー/ライトユーザーなどの利用頻度別、など、自社の課題や分析目的に照らして意味がありそうな軸を設定します。

ステップ3: クロス集計表の作成

設定した軸をもとにクロス集計表を作成します。クロス集計表を作成することで、グループ間の違いや関連性が一目でわかるようになります。

ステップ4: データの解釈と洞察

クロス集計表から、グループ間の差異や類似性などの傾向を把握し、どの要素が顧客満足度に影響を与えているか、何が高評価あるいは低評価の要因となっているのかなどを分析します。ここから、成功要因や改善が必要な点等についての洞察を得て、戦略的な意思決定に役立てることができます。

ステップ5: 結果の可視化と共有

有用な情報が含まれるクロス集計表をグラフやチャートにすることで、データの特徴的な傾向をわかりやすく表現します。可視化することで関係者による理解が進み、ビジネスにおける意思決定や行動計画を共有しやすくなります。

クロス集計の結果を正しく解釈するポイント

クロス集計は有用な手法ですが、その解釈にはいくつかの注意点があります。以下、主なものを3つ挙げておきます。

因果関係まではわからない

クロス集計によって得られたデータは、単にグループ間の差異や類似性などの傾向を示すものであり、因果関係まではわかりません。因果関係を明確にするためには、回帰分析などのより高度な分析手法が必要となります。

サンプルサイズが小さいと誤差が大きくなる

クロス集計の結果は、サンプルサイズによって影響を受ける場合があります。集計軸があまりに小さすぎると、出てくる結果の誤差が大きくなりますので、クロス集計の軸がn=50、最小でもn=30に満たない場合には、集計結果はあくまでも参考値として割り切ってみることが必要です。

参考:標本誤差一覧表

標本誤差一覧表

その差は統計的に有意ではないかもしれない

クロス集計表でグループ間の差異をみるときは、その差が統計的に有意なものかどうかを確認することが重要です。サンプルサイズが小さければ、たとえ10ポイント以上の差があったとしても、その差は有意ではないかもしれません。統計的検定を行って有意差の有無を確認することで、クロス集計結果をより正確に解釈することができます。

サンプルサイズと調査結果の信頼性の問題については、以下のページで詳しく説明していますので、そちらも参照してください。

サンプルサイズ(人数)はどうやって決める?【便利な計算ツールもご紹介】

クロス集計軸の考え方

クロス集計からグループ間の類似性や差異などの傾向をつかむためには、クロス集計軸を構成する要素間に重複がないことが重要です。つまり、複数回答(MA)質問よりも単一回答(SA)質問のほうが分類軸としてより適切ということです。たとえば、年代別、性別、地域別、利用期間別、満足度レベル別(満足/不満)、購入金額別、などの変数であれば、選択肢間に重複はなく、集計軸として機能しやすいと言えます。

どうしても複数回答(MA)質問の要素を軸として集計したい場合には、「AとBの両方に該当」のように新たな分類グループを設けてみるとか、「AとBの両方に該当する場合にはAとして取り扱う」などの工夫をすれば、単一回答(SA)の場合に近い形でクロス集計をすることができます。

以下、BtoBの顧客満足度調査の場合を例にとり、具体的なクロス集計軸の例をいくつか紹介します。

  • 支店別・部門別
  • 地域別
  • 業種別
  • 顧客セグメント(RFMセグメントなど)別
  • 満足度レベル(満足/不満足など)別
  • 利用期間別
  • 年間購入金額別
  • 利用している商品カテゴリー別
  • 回答者の役割(意思決定者/実務担当者など)別
  • 競合他社の利用状況別

など。

クロス集計を活かす次の分析ステップ

クロス集計から得た理解や洞察をさらに深めるためには、次のような分析をすることが有効です。

自由回答分析

自由回答には、クロス集計によって得られたデータの傾向を裏付ける具体的な内容が記述されている場合があります。アフターコーディングやテキストマイニングによって、自由回答を詳細に分析することで、クロス集計結果の解釈をより強固なものとしたり、あるいは、方向性を修正したりすることができます。

自由回答の分析方法については、以下のページで詳しく説明していますので、そちらも参照してください。

自由回答(フリーアンサー)の最適な活用法と分析テクニック
自由回答のテキストマイニング

多変量解析

多変量解析の手法であるコレスポンデンス分析を行うと、グループ間の類似性や差異について視覚的にわかりやすく表現することができます。また、重回帰分析では、クロス集計では特定できない変数(質問項目)間の因果関係とその強さを明らかにすることができます。データの種類と分析の目的に照らして適切な多変量解析手法を活用することで、成功要因や問題点が浮き彫りになって、取り組むべき事項の優先順位をつけやすくなります。

多変量解析については、以下のページで概要を説明していますので、そちらも参照してください。

多変量解析で深い洞察を!アンケートデータの効果的な分析方法

自由回答分析や多変量解析によって、クロス集計から得られたデータをより効果的に活用し、ビジネスの成長につながる戦略立案ができます。

まとめ

本コラムでは、顧客満足度調査におけるクロス集計の概要、メリット、留意点、そして具体的な活用例について解説しました。

クロス集計は複数の変数(質問項目)を組み合わせてデータを集計する手法であり、顧客満足度調査においては顧客セグメント別にみた満足度の違いを明らかにするのに役立ちます。

クロス集計のメリットとしては、データから意味のある傾向を見つけることができる点が挙げられます。

さらに、自由回答分析や多変量解析を行うことで、クロス集計から得た理解や洞察をさらに深めて、クロス集計結果をビジネスの成長につながる戦略立案に活かすことができます。

なお、顧客満足度調査全般については、以下のページで詳しく説明していますので、そちらも参照してください。

BtoBの顧客満足度調査(CS調査)の重要性とその実施方法
顧客満足度調査(CS調査)でビジネス成果を導く: 実施ポイントと分析法の詳細解説

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