アンケートの成功を左右する「回収率」

アンケート調査の成功を測る指標として「回収率」は欠かせません。これは、アンケートを受け取った対象者の中で、実際に回答を行った人数の割合を示すものです。たとえば、100人にアンケートを配布し、そのうち50人が回答した場合、回収率は50%となります。

この回収率が高ければ高いほど、調査の質が向上し、必要な回答数を得るためのコストや時間を削減することができます。具体的には、50%の回収率であれば100人の回答を得るために200人にアンケートを配布すれば良いのに対し、20%の回収率では500人の対象者が必要となります。これは、コストや時間の大きな差となり、調査の効率性に直結します。

回収率がアンケートの信頼性に及ぼす影響

アンケート調査の信頼性は、多くの要因によって左右されます。その中でも「回収率」は、調査結果の信頼性を保証する上で欠かせない要素となります。

アンケートには「非標本誤差」という誤差が存在します。これは以下のような要因によって生じるものです。

  • 回収率の低さ(無回答誤差)
  • 母集団以外の人が対象者に含まれる
  • 回答モレや誤回答
  • データ処理時のミス

これらの中でも、回収率の低さは特に問題となります。低い回収率は、回答の分布に偏りを生じるリスクを増加させます。たとえば、満足度調査に回答した人は満足している可能性が高く、逆に回答しなかった人は不満足である可能性が高まります。このため、回収率が低いと、実際の満足度が調査結果よりも低くなるリスクが考えられます。

アンケート回収率を高める実践的な方法

アンケートの回収率は、調査の方法や主体、対象者によって大きく変動します。特に民間企業が自社の顧客を対象にした場合、回収率は約20~30%と言われています。

[回収率に影響を与える主な要因]

調査方法郵送、Web、訪問面接など
調査主体公的な調査か否か、依頼者の信頼度など
調査対象者自社の顧客(個人・法人)、従業員、一般消費者など

アンケートへの協力が得られない主な理由として、以下のようなものが挙げられます。

  • 面倒くさい
  • アンケートに気づかない、関心がない
  • 協力するメリットを感じない

これらの課題を解決し、回収率を向上させるための具体的な方法は以下の通りです。

  • 質問の工夫:面倒を感じさせない質問数・内容・レイアウトにする。
  • 回答方法の選択肢:「紙またはWebで回答」など、複数の方法から選べるようにする。
  • 目立つデザイン:紙の色などで目を引く工夫をする。
  • 督促の実施:回答締切りまでに複数回の督促を行う。
  • 謝礼の提供:全員や抽選での謝礼(粗品、ギフト券など)を提供する。
  • フィードバックの実施:調査結果やコメントの内容を参加者と共有する。

これらの方法を取り入れることで、アンケートの回収率を効果的に向上させることが期待できます。

アンケート回収率:顧客関係性のバロメーター

アンケートの回収率は、企業と顧客の関係性の良好さを示す重要な指標となります。特に、顧客満足度調査のようなアンケートでは、良好な関係性を持つ顧客は協力意欲が高く、また、評価も高い傾向があります。不満を持つ顧客にもアンケートに参加して、意見を伝えてもらうようにすることが重要です。
回収率の目安として、自社の顧客を対象とした場合、理想的には50%以上、最低限30%以上の回収率を目指すべきです。

特に、郵送調査のような手法では回収率の低さがコストや手間の増加を招く可能性があります。期待できる回収率が低い場合、必要な対象者数や郵送部数が増えることとなり、それに伴いコストや手間が増加します。

次のセクションでは、この郵送調査の回収率向上策に焦点を当てて詳しく解説します。

郵送調査の回収率を高めるための実践的アドバイス

協力依頼状の工夫

シンプルな内容

回答方法の説明は必要ですが、細かすぎると面倒な印象を与える可能性があるため、シンプルかつ分かりやすい内容を心がけましょう。

署名者の肩書

協力依頼状の署名者の肩書には影響があることが知られています。社長名での正式な依頼文書が理想的です。

協力依頼状と調査票の一体化

協力依頼状と調査票を一体化しても問題ありません。実験結果によれば、一体化しても別々にしても回収率に大きな違いはありません。

事前の通知と督促

事前通知

はがきなどで調査の実施を事前に伝えることもあります。これは、後で届く調査票本体が他の郵便物に紛れて開封されないリスクを低減するための対策です。

督促状の効果

費用や手間を考慮すると、事前の予告状よりも、締切直前に督促状を出すほうが効果的です。

[ポイントまとめ]

  • 社長名の入った正式な依頼文書が理想的。
  • 調査票と協力依頼状の一体型も有効。

発送用封筒の選び方とその重要性

郵送調査の成功には、封筒の選び方が鍵を握ります。日本郵便の調査によれば、DMを受け取り、何も見ずに処分する人はわずか6%。しかし、約3割の人は封筒のデザインや情報をもとに、開封するか否かを判断しています。

DMを受け取って、何も見ずに処分する人は6%という日本郵便の調査結果

このことから、以下のポイントを考慮して封筒を選ぶことが重要です。

信頼性の高まるデザイン

差出人が信用できることを示すため、会社名やロゴマークの入った正式な封筒を使用することが望ましいでしょう。

回答しやすい形状

A4サイズのアンケート用紙を使用する場合、折り曲げると記入がしにくくなる可能性があります。そのため、折らずに送れる角2封筒の使用が推奨されます。

謝礼の提供とその効果

アンケート調査における謝礼の提供は、回答率の向上に寄与することが期待されます。以下は、謝礼の提供方法とその効果に関するポイントです。

謝礼の必要性

謝礼は必須ではありませんが、回答意欲を高めるための動機付けとして効果的です。

提供方法

謝礼を先に渡すか、後で渡すかの2通りがあります。

先渡し:発送時に謝礼を同封する方法。
後渡し:回答後に謝礼を提供する方法。

一般的に謝礼は500円相当が目安とされ、予算の制約から多くの場合は後渡し方式が選ばれます。

謝礼の形態

謝礼の提供形態にも、以下の2通りがあります。

全員への提供:回答者全員に謝礼を提供する方法。
抽選方式:回答者の中から一部を選び、謝礼を提供する方法。

抽選方式の場合には、謝礼の単価を上げることが可能で、効果的な動機付けとなります。

粗品の同封

開封率を向上させるため、ボールペンなどの粗品を同封することも一つの方法です。封筒の中身が何であるかの興味を引き出すための工夫として、これにより、受取人の関心を引き、開封を促すことが期待されます。

発送時の切手の効果

発送時に記念切手を使用すると回収率が向上するという説がありますが、その効果を実感するのは難しいところです。大量の切手を手作業で貼るのは労力がかかるため、料金別納や料金後納のシステムを利用することで、効率的な発送が可能です。

返送時の切手の効果

返送用封筒には、多くの場合、料金受取人払いのシステムが採用されます。しかし、切手を予め貼った封筒を同封することで、受取人が切手の無駄遣いを避けたいという心理から、回収率が向上するとの報告もあります。特にサンプルサイズが小さい場合は、回収数を増やすために、切手貼付封筒の使用を検討する価値があります。

[ポイントまとめ]

  • 返信用封筒に予め切手を貼って提供することで、回収率の向上が期待される。

効果的な調査票のデザイン

アンケートの回答しやすさは、回収率を向上させるための重要な要素です。以下は、対象者がストレスなく回答できる調査票のデザインに関する推奨事項です。

ページ数とサイズ

A4サイズで、4ページ以内が理想的(A3サイズの2つ折りで1枚に収まる形)です。最大でも8ページ以内を目指しましょう。

文字とレイアウト

文字の大きさは10ポイント以上を推奨します。また、行間は適切に設定し、読みやすさを確保するようにしましょう。さらに、クリーム系の色紙を使用することで、他の書類との区別がつきやすく、黒文字が映える効果があります。

質問の工夫

回答条件が多い質問や、飛び先の指示が含まれる質問は、回答者にとってわかりにくいため、極力減らすようにします。

詳細なガイドライン

答えやすい調査票の作成に関する詳しいガイドラインについては、アンケート作成の参考書などを参考にしてください。

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最適な発送タイミングと調査期間

発送のタイミング

アンケートの回収率を向上させるためには、発送のタイミングが重要です。特に、2021年10月以降の郵便の配達制度変更に留意する必要があります。
具体的には、土曜日の配達が廃止され、翌日配達地域もなくなったため、配達が1日遅れることを前提に計画する必要があります。消費者を対象とする場合、週末に回答してもらうためには、金曜日に到着するように計画し、水曜日の午後5時までに郵便局に差し出すことが望ましいわけです。

差出日(17時頃まで)と最短配達曜日

調査の期間

調査期間の設定も回収率に影響します。締切日にあわせて回答する人が少なからずいますが、期間が長すぎると調査の存在を忘れてしまう可能性があります。そのため、回答締切りまでの期間は、2回の週末を含めて、最大3週間程度が適切と考えられます。

[ポイントまとめ]

  • 金曜日にアンケートが到着するように発送を計画する
  • 調査期間は最大3週間程度が適切

効果的な督促の方法とその効果

督促の必要性

回答締切間際にアンケートの存在に気がついて、時間の余裕がないことから回答するのをあきらめてしまう人がいます。このような状況を改善するために、督促は非常に効果的です。実際、督促を行うことで、回収率が約10%向上することが期待されます。

督促の方法

お礼兼督促状

締切の1週間前に、調査の対象者全員に対して、お礼とともに督促の内容を伝える方法です。

記名式調査の場合

回答者を特定できる場合、未回答の人だけに督促を行うことができます。この場合、新たにアンケート用紙を同封するか、電話での督促を検討することができます。

Web回答併用式の調査

アンケート一式を再送する必要はなく、Webでの回答を促す内容の督促状を送ることが効果的です。

サンプルサイズが小さい場合の対応

サンプルサイズが小さい場合、特に対象者数が50人未満の場合、電話での督促を検討することで、回収率の向上が期待されます。

[ポイントまとめ]

  • 督促は回収率を約10%向上させる効果がある。
  • 締切の1週間前にお礼とともに督促状を送るのが効果的。
  • サンプルサイズが小さい場合は、電話での督促を検討する。

Webアンケート併用のメリット

Webアンケートの併用は、回答者にとっての選択肢を増やし、回答のしやすさを向上させる効果があります。以下の点が特にメリットとして挙げられます。

  • 選択の自由:郵送とWeb、好きな方法での回答が可能。
  • 手軽さ:郵送が面倒と感じる人でも、Webなら気軽に回答。
  • 督促時の対応:アンケート用紙が手元になくても、Webからの回答が可能。

詳しくは、「郵送調査~Web回答併用で顧客対象調査の効果を上げる」をご参照ください。

お問い合わせ

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