BtoB企業では、顧客満足度調査のデータをより深く分析し、経営や営業戦略に活かすことが求められます。
本コラムでは、BtoBビジネスにおけるクロス集計の活用方法を詳しく解説し、調査データを実践的に活かすためのアプローチを紹介します。
BtoBにおけるクロス集計の重要性
クロス集計とは、複数の変数(属性や評価など)を組み合わせてデータを分析する手法です。
クロス集計では、データをグループ分けする際の切り口(=分析軸)が重要な役割を果たします。適切な切り口を選ぶことで、より有益な情報を引き出すことができます。
記名調査での実施が基本となるBtoBの顧客満足度調査では、調査データに顧客企業の属性・売上・購買履歴などの情報を紐づけて、「業種」「企業規模」「利用履歴」などを軸としたクロス集計を行うことができます。それにより、「顧客の継続率向上」「営業戦略の最適化」「サービス改善」などに直結する重要な情報を得ることができます。
🔷 例:クロス集計の活用シナリオ
• 「業種 × 満足度」 → 業種ごとの評価の違いを分析し、ターゲット戦略を見直す
• 「利用期間 × 継続利用意向」 → 長期契約の企業の特徴を把握し、新規顧客の育成戦略を策定
• 「回答者の役割 × 満足度」 → 意思決定者と実務担当者の評価の差を分析し、営業アプローチを改善
クロス集計の実施手順
BtoB顧客満足度調査におけるクロス集計の実施手順は以下の通りです。
ステップ1:クロス集計軸の設定
適切な分析軸を選定することで、ビジネスに直結する示唆を得ることができます。
ステップ2:データの準備
分析用に必要となる顧客情報を整理し、調査データと統合します。
ステップ3:クロス集計表の作成と可視化
統合後のデータを集計して表やグラフにまとめ、直感的に理解できるように整理します。
以下、それぞれのステップについて詳しく説明します。
ステップ1:クロス集計軸の設定(BtoB向けの設計)
BtoBの顧客満足度調査では、記名調査が一般的であり、これにより調査データと顧客情報を紐づけた分析が可能になります。
単なる満足度の傾向を見るだけでなく、「購入履歴」や「契約更新率」といったビジネス指標と組み合わせることで、より実用的な分析ができます。
クロス集計を行う際には、BtoBのビジネス特性に適した集計軸を設定することが重要です。
BtoBでよく用いられるクロス集計軸には以下のようなものがあります。
- 支店別・部門別
- 地域別
- 業種別
- 顧客セグメント(RFMセグメントなど)別
- 満足度レベル(満足/不満足など)別
- 利用期間別
- 年間購入金額(売上)別
- 導入アイテム数(利用している商品カテゴリー数)別
- 回答者の役割(意思決定者/実務担当者など)別
- 競合他社の利用状況別
など。
このようなクロス集計軸を設定することで、「どの顧客層に対して、どのような施策を打つべきか?」という示唆を得ることができます。
🔷 分析方針の例
- 「購入アイテム数 × 顧客ロイヤルティ」 → 購入点数が多いほど、継続利用意向は高いのか?
- 「利用頻度 × 満足度」 → ヘビーユーザーほど満足度が高いのか?
- 「取引規模 × 満足度」 → 大口顧客と中小顧客で評価の違いはあるか?
- 「利用期間 × アフターサービス満足度」 → 新規顧客のフォローアップは適切か?
ステップ2:データの準備(記名調査ならではのデータ活用)
調査データの準備と、紐づけする顧客情報の準備の2種類の準備が必要になります。
調査データの準備
調査データに顧客情報を紐づけて分析するためには、あらかじめマージ用のキー変数(ID番号など)を設定して、調査データに含まれるようにしておきます。
🔷 対象者リストの例

顧客情報の準備
顧客データベースから、分析軸となる顧客情報(業種・売上・利用期間など)を取り出し、調査データに対応するキー変数を追加します。
🔷 顧客情報の例

データマージ
ID番号などをキー変数として、調査データと顧客情報を一本化します。

ステップ3:クロス集計表の作成と分析
クロス集計表を作成し、顧客セグメントごとの評価の違いを数値化します。集計結果をグラフ化すると、社内での共有と理解を促進できます。
🔷 クロス集計表の活用例(利用期間 × 満足度)
[集計結果のグラフから読み取れること]
• 利用期間が長いほど、満足度が高い傾向にある
• 1年未満の顧客の不満率が高いため、導入初期のフォローアップ強化が必要

クロス集計を活かす次の分析ステップ
クロス集計の結果を効果的に活用するには、単なる数値の比較にとどまらず、「なぜこの違いが生じているのか?」を深く考察し、ビジネス施策に反映することが重要です。
クロス集計から、ある程度の「相関関係」を読み取ることはできますが、「因果関係」までは特定できません。また、「どの程度」満足あるいは不満足なのかを数値で確認することはできますが、「なぜそうなのか?」について具体的な理由を知ることもできません。
クロス集計を起点にして、より高度な分析手法を組み合わせることで、顧客の行動や意識の深い理解が可能になります。
🔷 クロス集計の次のステップ
- 自由回答分析を組み合わせることで、「顧客の具体的なニーズ」を掘り下げて理解する
- 重回帰分析を組み合わせて、満足度に影響を与える要因を定量的に特定する
自由回答分析|定性データの活用
定量データだけでなく、自由回答として集めた顧客の具体的な声を分析することで、より実践的な改善施策を導き出せます。
🔷 自由回答分析の主な手法
分析手法 | 活用例 |
---|---|
アフターコーディング | 「サポートの対応が遅い」という意見を「対応速度不満」に分類し、満足度とクロス分析 |
テキストマイニング | 頻出ワードを可視化し、顧客のニーズや不満のトレンドを特定 |
感情分析 | ネガティブ意見が多い領域を特定し、改善施策を優先的に実施 |
重回帰分析|より精度の高い意思決定を支援
クロス集計で「AとBに関連性がありそう」と仮説を立てた後、それを統計的に検証するために重回帰分析を活用します。
🔷 例:継続利用意向を高める要因を特定するための重回帰分析
従属変数 | 「継続利用意向」 |
独立変数 | 「利用期間」「取引額」「製品満足度」「営業担当満足度」「アフターサービス満足度」「価格満足度」 |
分析結果 | 継続利用意向に最も影響を与えていたのは「アフターサービス満足度」 |
改善方策 | 「更新率向上にはサポートの改善が最優先」と判断できる |
分析結果を施策に活かす方法
データに基づく的確な判断は、ビジネスの戦略立案と改善施策の成功確率を高めるのに大きく寄与します。クロス集計と自由回答分析や重回帰分析を組み合わせてみえてきた傾向や要因を踏まえ、調査結果を具体的な施策に落とし込み、戦略的な意思決定を行うことで、より効果的なビジネス活動が可能となります。
🔷 例:データを実際の施策に活かす
- 営業戦略の強化:「業種別の満足度分析」からターゲット業界を絞り、重点アプローチを決定
- サポート体制の最適化:「アフターサービス満足度×継続利用意向」から、ハイリスク顧客を特定し、フォロー施策を強化
- 価格戦略の見直し:「価格満足度×取引額」の関係を分析し、適切な価格プランを設計
クロス集計をより効果的に活用するために
データを分析するだけでなく、それを組織内で適切に活用する仕組みを整えることで、実際のビジネス成果につなげやすくなります。
たとえば:
- 経営層向けのレポートを作成し、定期的なKPI分析を実施
- 営業部門向けにクロス集計結果をダッシュボードで可視化
- データドリブンな改善施策をPDCAサイクルに組み込む
🔷 例:営業戦略の見直しに有効なクロス集計軸
クロス集計軸 | 施策への応用 |
---|---|
業種 × 継続利用意向 | 契約更新率の高い業種に重点アプローチを展開 |
アフターサービス満足度 × 継続利用意向 | サポート強化が必要な顧客リストを作成し、フォローアップ |
利用期間 × 導入アイテム数×アイテム別満足度 | 長期契約顧客向けのアップセル施策を検討 |
🔷 価格戦略の見直しに際してのクロス集計の活用例
- 目的:価格変更後の顧客離脱リスクを評価したい
- 集計軸:「価格満足度 × 継続利用意向」をクロス集計
- 集計結果:「価格に不満を持つ企業のうち、取引額の大きい企業は離脱リスクが高い」と判明
- 施策:取引額の大きい企業に特別価格プランを導入し、解約リスクを低減
クロス集計は、顧客満足度調査データを分析し、ビジネスに活かすうえで非常に有用な手法です。そして、さらに深い洞察を得るために、自由回答分析や重回帰分析などを組み合わせることで、より包括的な分析とその結果の解釈が可能となります。
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