競合の顧客満足度は調べられるのか?
競合と比べて、自社はどこが優れていて、どこに課題があるのか。
顧客満足度調査の実施をご検討中の方であれば、だれもが知りたいことでしょう。
よくあるのが、「競合他社の顧客にも調査をして、満足度を比較できないか?」という相談です。
確かに競合ユーザーを対象に調査を行うことができれば、自社の立ち位置をより客観的に把握できるように思います。
では実際に競合の顧客満足度は調べることができるのでしょうか。そして、それは意思決定に使える形で活用できるのでしょうか。
BtoCでは競合ユーザーへの調査が成立するケースもある
競合の顧客満足度を把握する方法として、モニターパネルから競合ユーザーをリクルートし、調査を実施する方法があります。
たとえば、携帯電話のようにユーザー数が非常に多い市場では、各社のユーザーを数千人規模で安定的に集めることができますので、競合比較として十分に精度の高いデータを取得することが可能です。
このような条件が整っている場合、競合ユーザーを対象とした顧客満足度調査は、実務的にも有効に機能します。
しかし、この方法はすべての業界で成立するわけではありません。
この方法が成立するのは、携帯電話会社の例のように、競合のユーザー数が極めて多く、パネル上でユーザー属性の構成比に近い対象者を安定的に確保できる場合に限られます。
BtoBの領域ではそもそもユーザーの母集団が小さく、かつ、ユーザーごとにカスタマイズされた商品・サービスを提供するケースが少なくないことから、モニターパネルからのリクルートでは代表的な競合ユーザー像を再現することが難しい状況があります。
競合満足度は「どう比較するか」が重要になる
ここで一度、問いの立て方を整理する必要があります。
競合の満足度は「調べられるかどうか」ではなく、どのように把握し、どのように比較すれば、意思決定に使えるのかが重要です。
その観点から見ると、競合満足度は必ずしも「外に取りにいくもの」とは限りません。
むしろ、自社の顧客満足度調査の設計の中に組み込むことで、より実務的に使える形で把握することができます。
では、実務ではどのように競合比較を行うのでしょうか。
自社顧客の中に、競合ユーザーがいる
競合の満足度を把握する方法として、外部から競合ユーザーを集めるのではなく、自社の顧客の中にいる“競合利用者”に着目する方法があります。
多くの業界では、顧客は1社だけでなく、複数の会社の商品やサービスを比較しながら利用しています。そのため、自社の顧客であっても、競合他社について一定の利用経験や評価を持っているケースは少なくありません。
このような顧客に対して、自社とあわせて競合他社についても評価してもらうことで、実務的に使える比較情報を得ることができます。
競合は「1つ」ではない
次に問題になるのが、「どの競合と比較するのか」という点です。
顧客が複数の競合を利用している場合は、どのようにすればよいのでしょうか?
何度も同じような質問に答えてもらうと回答の精度が下がりかねませんし、回答負担が増すことから途中で回答をやめてしまう人が出てくるかもしれません。
有効な情報を得ようとするのであれば、1社に絞って評価してもらう必要があります。
「どの競合と比較するのか」について、顧客満足度調査では、自社がどこを競合と考えているかよりも、顧客が自社と比較しそうな会社はどこなのかという視点で考えることが重要です。
この視点に立つ場合、以下の3つのタイプの「競合」を定義することができます。
- 主要競合:顧客が現在利用している競合の中で、最もよく利用している会社
- ベスト競合:顧客が現在利用している競合の中で、最も質がよいと認識している会社
- 人気競合:顧客が現在利用している競合の中で、今後最も利用したいと思う会社
「主要競合」が最も一般的ですが、品質や価格などの評価項目ごとに「ベスト競合」と比較する方法もあり、実際の意思決定においては、「どこと比べるか」によって見え方が大きく変わります。
たとえば、
- 現在のシェアを奪い合っている相手(主要競合)
- ベンチマークとなる存在(ベスト競合)
- 将来的に選ばれる可能性のある相手(人気競合)
では、それぞれ意味合いが異なります。
このように競合のとらえ方自体を設計することが、比較分析の前提となります。
競合を特定する設問設計の基本
具体的には以下のような設問で競合を特定します。

このようにして主要な競合を特定した上で、自社と同じ設問を用意して競合についても評価してもらうと、同じ文脈・同じ尺度で比較することができます。
競合比較によって何が見えるのか
ここで得られた競合比較の情報は、単に「どちらの満足度が高いか」を見るためのものではありません。
顧客満足度調査で重要なのは、どこが強みで、どこに手を打つべきかを判断することです。
そのためには、以下のマトリックス例のように、「満足度(評価の高さ)」「重要度(ロイヤルティへの影響の大きさ)」「競合との比較(相対的な位置)」の3つを組み合わせて見る必要があります。

たとえば、重要度が高い接点において、
- 自社の評価が競合よりも高ければ → 明確な強み
- 自社の評価が競合よりも低ければ → 優先的に改善すべき課題
と判断することができます。
逆に、満足度が低く見える項目であっても、競合も同様に低い場合や、重要度が低い場合には、必ずしも優先的な改善対象とは限りません。
このように、競合との比較を組み込むことで、「何をすべきか」が明確になります。
実務上のポイント:絶対値ではなく“相対”で見る
なお、実務上の注意点が1つあります。
自社の顧客に対して競合評価を聞く場合、関係性や心理的な配慮から、自社への評価がやや高めに出る傾向があります。
そのため、重要なのは絶対的なスコアではなく、接点ごとの相対的な差を見ることです。
どの接点で優位に立っているのか、どの接点で劣っているのか――この構造を把握することで、実際の改善につながる示唆を得ることができます。
まとめ:競合満足度は設計の中に組み込む
競合の顧客満足度は、条件が整えば、外部からユーザーを集めて調査することも可能です。
しかし、それが成立するケースは限られており、すべての業界・すべての状況で再現できるわけではありません。
競合満足度は必ずしも「外に取りにいくもの」とは限りません。
むしろ、顧客満足度調査の設計の中に組み込むことで、実務的に意味のある情報を得ることができます。
ただし、満足度だけでは、強みや弱みは見えてきません。
重要度、そして競合との比較をあわせてはじめて、「どこに手を打つべきか」を判断することができます。
顧客満足度調査は、結果を並べるためのものではなく、次の意思決定につなげるためのものです。
そして、競合との比較は、そのための重要な視点のひとつです。
競合満足度は、「取れるかどうか」ではなく、「どう使うか」で価値が決まります。
顧客満足度調査を「意思決定に使える形」にするために
今回ご紹介したような設計や分析の考え方は、顧客満足度調査を「測る調査」から「決める調査」へと変えていくための基本となるものです。
調査結果を見ても、「どこから手を付ければよいのか判断できない」「改善の優先順位が決めきれない」といった課題を感じている場合には、設計や分析の考え方そのものを見直す必要があります。
🔷 まずは全体像を押さえたい方へ
競合比較は、顧客満足度調査の一部にすぎません。
調査の目的や設計、分析・活用まで含めて整理したい方は、以下のコラムをご覧ください。
顧客満足度調査(CS調査)とは?|基礎から活用まで解説
🔷 「測るだけで終わらせない」ために
顧客満足度調査を、意思決定につながる形で活用するための考え方と進め方をまとめたガイドブックをご用意しています。
『顧客満足度調査 実践ガイド ― 設計・分析・活用まで― 意思決定につながる形で整理』
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