ビジネスの基本は顧客を理解すること

と言われても、他人である顧客の頭(心)の中にどんな考え(気持ち)があるのかを知るのはとても難しいことです。

むかしからあるアンケートに加えて、最近はTwitterの書き込みやネット上のレビューサイトの口コミなどのオンラインデータも活用して顧客理解を深めていくことが有効です。
Asking型、Listening型に分けて、いろいろな調査手法のメリットとデメリットを確認しておきましょう。

分類主なリサーチ手法メリットデメリット
Asking型いわゆる“アンケート調査”
グループインタビュー
デプスインタビュー
聞きたいことを聞くことができる
利用実態を把握しやすい
対象者の属性を特定できる
対象者にとって意識や関心が薄いことがらについては聞き出すのが難しい
Listening型ソーシャルリスニング
オンラインコミュニティ
エスノグラフィ
生活者のありのままの発言や行動から、生活者自身が気づいていないことを発見できる場合がある聞きたい情報が出てこないことがある。
対象者の属性を把握しづらい

アンケートに代表される従来型のAsking型リサーチをアナログな時代遅れのやり方であるとして、オンライン上のビッグデータ分析を礼賛する動きもありましたが、デジタル一辺倒にはあやうさがあります。

アンケート調査は決して時代遅れの方法ではありません。
Listening型のデジタルなアプローチから得られる情報をうまく活用するためには、Asking型調査で消費者・ユーザーの全体像を把握しておくことが重要です。

SNSの利用状況

総務省が毎年実施している通信利用動向調査でSNSの利用率をトラッキングしています。

調査によると、2020年8月末の時点でインターネット利用者の約7割がSNSを利用しているという結果です。

年代別SNS利用状況
(出典)総務省「通信利用動向調査」

同じく総務省が公表しているデータに、ソーシャルメディアによる情報発信状況について日本とアメリカでの調査結果をまとめたものがあります。

ソーシャルメディアによる情報発信の状況(日本)
(出典)総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018)

これをみると、日本ではSNSで積極的に情報発信をしているのは、利用者の1割程度のようです。
アメリカに比べると、大幅に少ない結果となっています。

ソーシャルメディアによる情報発信の状況(アメリカ)
(出典)総務省「ICTによるインクルージョンの実現に関する調査研究」(2018)

日本の場合、SNSの情報をウォッチするだけでは消費者のごく一部しか見ていないことになる恐れがあります。

また、Listeningで聞こえてくるのは、一部の声の大きな人の意見であるかもしれません。

批判的な人ほど声が大きい傾向

アンケート/市場調査では、評価理由を自由回答形式で記入してもらうことがよくあります。

たとえば、現状のサービスを変えたほうがよいかどうかについて「1.今のままでよい」「2.変えた方がよい」の割合が70%:30%であるにもかかわらず、自由回答の内容をみると「変えた方がよい」と思う理由がたくさん挙げられているということが往々にしてあります。

「今のままでよい」と思っている人は、特に不満がないために自由回答を記入する割合が少ないのに対して、「変えた方がよい」と思う人は、その理由を熱心に記述してくれる傾向があるために、そういった状況が起こります。

SNSでは、批判的な考えを持つ人の方が投稿しやすい傾向がありそうです。

さらに、批判的な考えを持つ人のコメントほど文字数が多い傾向があります。

以下はNPSの評価レベル別に評価理由を記述してもらった文字数の平均です。批判者の中でも0~2点の特に低い評価を付けた人は、たくさんの文字数を使って理由を述べています。
つまり、批判的な人ほど声が大きい傾向があるようなのです。

評価点数別評価理由の記述文字数

ごく一部の大きな声が消費者の大多数に影響を及ぼしている可能性がありますので、SNSで発信される情報にアンテナをはっておく必要があることには異論がありません。
しかし、SNSの情報だけに気を取られていると、誤った消費者理解をしてしまうおそれがあります。

まずは消費者調査などで全体像を的確に把握したうえで、部分ごと、あるいは一人ひとりに焦点を絞り込んで深く見ていくのがよいですね。

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