【7回でわかる!市場調査の基本活用術シリーズ第5回】
はじめに
SNS分析やビッグデータといった「Listening型」の手法が注目されています。
生活者の自然な声を拾える点は魅力ですが、属性情報と結びつけて詳細に分析できるかというと限界もあります。
一方、アンケートなどの「Asking型」の調査は、聞きたいことをダイレクトに尋ね、年齢・性別・業種などの属性とクロス集計できる点に今なお大きな価値があります。
分類 | 主なリサーチ手法 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
Asking型 | いわゆる“アンケート調査”、グループインタビュー、デプスインタビュー | ⭕ 聞きたいことを聞くことができる ⭕ 利用実態を把握しやすい ⭕ 対象者の属性を特定できる | ❌ 対象者にとって意識や関心が薄いことがらについては聞き出すのが難しい |
Listening型 | ソーシャルリスニング、オンラインコミュニティ、エスノグラフィ | ⭕ 生活者のありのままの発言や行動から、生活者自身が気づいていないことを発見できる場合がある | ❌ 聞きたい情報が出てこないことがある ❌ 対象者の属性を把握しづらい |
市場調査の基本はやはり「Asking型」であり、なかでもWebアンケートと郵送調査が実務でよく使われる代表的な手法です。
調査手法を比較してみよう
調査にはさまざまな手法があり、それぞれに得意・不得意があります。
以下は主要な手法を「コスト(調査費用)」「スピード(調査期間)」などで比較した一覧です。
■ 調査手法比較表
手法 | 具体的な調査方法 | 調査費用 | 調査期間 | 実施可能質問量 |
---|---|---|---|---|
訪問面接調査 | 調査員が対象者の自宅を訪問し、対象者との対面で聞き取り調査を行う | 非常に高い | 中 | 多い |
訪問留置調査 | 調査員訪問時に調査票を預け、回答記入後、訪問または郵送で回収する | 高い | 長い | 多い |
電話調査 | 対象者宛に電話をかけ、電話口で読み上げた質問に回答してもらう | 中 | 短い | 少ない |
郵送調査 | 対象者宛に調査票を郵送し、回答記入後、返送してもらう | 安い | 長い | 中 |
会場調査(CLT) | 対象者に、調査会場に来てもらい、そこで面接や自記式で質問に回答してもらう | 高い | 中 | 中 |
Webアンケート | 登録モニターなどに調査協力を依頼し、Web画面上で回答してもらう | 非常に安い | 非常に短い | 中~多い |
表で全体像を把握したうえで、自社の課題や状況に合うものを選ぶとよいでしょう。
よく使われる代表的な手法
実務でよく使われる代表的な調査手法がWebアンケートと郵送調査です。それぞれの特徴をまとめると、以下のようになります。
Webアンケート
[メリット]
- コストが安く、訪問調査の1/10〜1/5程度で実施可能
- 回答スピードが早く、金曜に実施開始すれば週明けには結果を手にすることも可能
- 数百〜数千サンプルの大規模調査が可能
[デメリット]
- 若年男性や高齢層では回答率が低く、代表性に注意が必要
- 回答の真剣度にばらつきがある場合もあり、注意が必要
Webアンケートは、低コスト・短期間で実施できる点から、利用しやすい手法です。
郵送調査
[メリット]
- 高齢層やBtoB顧客に有効
- 手書きの回答は率直さや「温度感」が伝わり、自由記述が豊富に得られる
- ネット未利用層にもリーチできる
[デメリット]
- 回収に時間がかかる(数週間〜)
- 封筒デザインやお礼・督促状など、工夫をしないと回収率が下がる
郵送調査は、丁寧に声を拾いたい場合に適しており、スピードやコストよりも「対象者との適合性」を重視する場面で効果を発揮します。
調査手法をどう選ぶか
市場調査の手法選びはコスト・スピードに、第3の軸を加えた「三角形」で考えるとわかりやすいでしょう。
「第3の軸」の候補となる要素には、以下のようなものがあります。
[対象者との適合性]──誰に聞くかが合っているかどうか
🔷書面でのやり取りを重視する法人相手のBtoBは郵送が基本
🔷高齢層なら郵送、若年層ならWeb
など、「調査対象者の特性に合った手法か」という視点です。
[調査内容の適合性]──何をどのように知りたいか
🔷深掘りが必要ならインタビュー
🔷大規模比較ならWeb
など、「調査で明らかにしたいことに適した手法か」という視点です。
コスト・スピード・適合性という3つの要素のすべてを同時に満たすことは難しく、どこを優先するかによって最適な方法は変わります。
目的 | → | 対応する主な調査手法 |
---|---|---|
低コスト・短期間で広く把握したい | → | Webアンケート |
丁寧に声を拾いたい | → | 郵送調査や訪問調査 |
背景や理由を深く掘り下げたい | → | グループインタビューやデプスインタビュー |
高齢層やBtoBを対象にしたい | → | 郵送調査や訪問調査 |
担当者として理解しておきたいこと
担当者として理解しておきたいことをおさらいしておきましょう。
- 調査手法に「万能な正解」はない
- 課題や対象者に応じて「何を重視するか(コスト/スピード/適合性)」を整理する
- 調査会社に依頼するときは、優先度を明確に伝えることで最適な提案が得られる
まとめ
市場調査の手法選びは、単に「どの方法が良いか」ではなく、コスト・スピード・適合性のバランスをどうとるかにかかっています。
特に実務で利用の多いWebアンケートと郵送調査を理解しておくだけでも、意思決定の武器として十分に役立ちます。
次回は「アンケート設計の基本~設問と選択肢の工夫」を解説します。
ご相談ください
「予算が限られているけど、どの調査なら効果的?」
「早く結果が欲しいが、精度も重視したい」
そんなときはぜひご相談ください。
グルーブワークスでは、課題や状況に応じて最適な手法を選び、“使える調査”にするためのお手伝いをしています。
お気軽にご相談ください044-271-6043営業時間 9:00 - 18:00 [ 土日祝定休 ]
ご相談・お問い合わせ【次はこちらもおすすめ】