「週刊少年ジャンプ」で40年続いた『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の連載が終了しました。

「週刊少年ジャンプ」は、90年代半ばには毎号の発行部数が600万部を超える驚異的なコミック誌でしたが、最近は220万部程度にまで落ちてきています。それでも一般週刊誌と比較すると、あの「週刊文春」が65万部くらいでその3倍以上なわけですからスゴイ数字であることに変わりありません。

コミック誌発行部数

注)数字は当該年における1号あたり平均(2016年は1~6月)
出典:「一般社団法人 日本雑誌協会」

そんな人気雑誌で40年間も連載を続け、しかも一度も休載がなかったというのですから信じられない偉業だと思います。
作者の秋本治さんは、締め切りが厳しい週刊誌連載に耐えられるよう、常に数週間分の余裕をもって原稿を描き貯めておくようにしていたそうです。その時間的・精神的なゆとりが継続的な発想や綿密な取材を可能にしたのでしょうね。また、アシスタントを社員として雇用して規則正しい勤務管理を行うなど、苛酷な労働環境がイメージされるマンガ製作とは異なる仕事の進め方にも長期連載を支えた秘訣がありそうです。

『こち亀』の舞台であり作者の出身地でもある葛飾区は、映画『男はつらいよ』でも有名ですね。主人公(両さんと寅さん)のキャラクター造形も似た部分がありますし、周囲を巻き込んで毎回騒動を起こすパターンも同じです。葛飾区は他にも、『キャプテン翼』の作者、高橋陽一さんの出身地でもあります。作中に出てくる南葛市はサッカー強豪の静岡県にある設定となっていますが、名前の由来は南葛飾です。葛飾は名作を生み出すインスピレーションが得られる土地柄なのでしょうか。

『こち亀』は下町の人情をベースとしつつも、流行や時事問題、オタク的な趣味や最新技術などを積極的にネタに取り込んできました。それが週刊誌連載で人気を保ち続ける要因にもなったのでしょうが、一般的には『サザエさん』や『ドラえもん』など長寿アニメを見てもわかるように、1話完結の内容でシリーズを長く続けるには、時代背景やキャラクター設定に矛盾が生じないよう流行や最新技術などはできるだけ取り上げないようにするでしょう。長いタイトルを含め、異色で真似のできない不世出の作品だと改めて感じます。

なお、『こち亀』の単行本は200巻に達し「最も発行巻数が多い単一漫画シリーズ」としてギネス記録に認定されています。ちなみに、単行本の巻数で『こち亀』に続くのは『ゴルゴ13』で、こちらは9月末現在で182巻まで刊行されています。

ちなみに、『こち亀』の累計発行部数は1億5,000万部を超えていますが、『ONE PIECE』はなんと倍以上の3億5,000万部以上に達しているとみられます。1冊の印税が40円と仮定すると…夢がある世界ですね。

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