顧客満足度調査を実施しているのに、成果が見えず問題の解決につながらないという声を耳にします。本コラムでは、その原因を解き明かし、調査を効果的に活用するための具体的な方法をご紹介します。

満足度調査を活かせていない原因と対策

残念ながら、「満足度の数字を確認するだけ」「結果が活用されず放置されている」といった形骸化の問題が発生しています。調査結果がでてきても「何を」「どうすれば」もっとよくなるのかがわからないという状況です。

この問題の原因は大きく2つに分類できます。

調査データが使えない(情報収集の問題)

  • 必要な情報を十分に得られていない。
  • そもそも問題解決に必要な設計ができていないことが多い。

調査データを使えていない(情報処理の問題)

  • 分析の精度が低く、解釈が浅い。
  • 具体的な改善施策が見いだされないまま、データが放置されている。

この2つの問題を解決するための具体的な手法を説明します。

調査の設計図を描く

調査データを活かすためには、最初に「正しい設計図」を描くことが不可欠です。この設計図とは、調査の全体像を整理し、顧客体験のどこに焦点を当てるべきかを明確にするものです。

以下、多くの人が通ったことがあるであろう自動車学校の例で説明します。

自動車学校の卒業生アンケートの例

自動車学校では、卒業生アンケートを使って教習体験全体を評価します。このアンケート設計では、まず教習体験を以下の大分類に分けます。

  • スタッフ
  • 教習プログラム
  • 教習環境
  • 料金

次に、それぞれをさらに細分化して中分類(例:「スタッフ」→「教習指導員」「事務スタッフ」「送迎バスの運転手」)を設定し、さらに具体的な評価ポイント(小分類)をリストアップします。

たとえば、教習指導員については以下のような評価項目が挙げられます。

  • 教え方の丁寧さ
  • 苦手分野への配慮
  • 親しみやすさ

こうした関係を図にまとめると以下のようになります。これが調査の設計図です。

自動車学校の卒業生アンケートの設計図

設計図を描くことで、顧客体験全体を網羅的に評価できる調査票を作成することができます。それにより、「1. 調査データが使えない」という情報収集の問題は解決します。

この考え方は、自動車学校に限らず、飲食店やBtoBサービスなどあらゆる業界で活用できるアプローチです。

たとえば、飲食店の場合、『料理』『接客』『店内環境』を大分類に設定し、具体的な評価ポイントとして『料理の味』『スタッフの対応迅速さ』『店内の清潔さ』などをリストアップすることができます。このように、自社に合わせた設計図を描き、各評価項目を整理することで、改善の方向性を明確にできます。

設計図の詳しい描き方については、「集客・満足・推奨の道筋を描くアンケート活用法~選ばれる理由、薦めたくなる理由~」で詳細に解説していますので、そちらも参照してください。

設計図にある重要な要素をあぶり出す

次は「2. 調査データを使えていない」という情報処理の問題です。
設計図に基づいてデータを収集したら、まずはクロス集計をします。

「満足 対 不満足」の比較

満足度調査で最も基本的な分析軸は、「満足 対 不満足」の評価軸です。すべての回答者について、総合満足度の回答をもとに「満足している人」と「不満足な人」に分けて、大分類以下の要素とのクロス集計を行います。

ここで、集計結果をそのまま眺めるのではなく、下の例のように「満足している人」での評価の降順、つまり、評価が高いものから順に並べ替えてみると、「満足している人」と「不満足な人」での評価の違いがわかりやすくなります。

たとえば、『教習プログラム』のように、「満足している人」と「不満足な人」で大きく差が出た場合、その要素が総合満足度に強く影響している可能性が高いと言えます。さらに、重回帰分析などの統計的手法を使えば、その影響の大きさを数値化することもできます。

クロス集計の例

先ほどの設計図について、重要度の高い要素ほど濃く、太い線で結ぶと、設計図の上に顧客満足度の改善に向けて重要な役割を持つ要素が浮かび上がってきます。

設計図の上に顧客満足度の改善に向けて重要な役割を持つ要素が浮かび上がる

必ずしも「満足」を目指す必要はない

商品やサービスに対してお客様が求める品質レベルと満足度の関係を示した「狩野モデル」という考え方があります。

「当たり前品質(不満足要因)」は、充足されて当たり前で特に評価されないが、不充足だと不満。
「一元的品質(一般的要因)」は、充足されれば満足だが、不充足だと不満。
「魅力品質(満足要因)」は、不充足でも特に不満ではない(仕方がないと思う)が、充足されれば満足。

顧客が求める商品・サービス品質と満足度の関係を示した「狩野モデル」。
魅力的品質:不充足でも仕方がない(不満には思わない)が、充足されれば満足
一元的品質:不充足だと不満、充足されると満足
当たり前品質:不充足だと不満、充足されて当たり前

満足度が低くても、それが「当たり前品質」要素である場合には、少なくとも「不満」でなければ十分かもしれません。調査データを分析すれば、「どこまでの改善が必要なのか?」重要要素の特性を把握することができます。

ここまでは定量的な分析アプローチです。定量的な集計・分析により、自社の強み・弱みを特定し優先的に改善に取り組むべき要素を特定することまではできます。しかし、その先の「では、どのようにすればよいのか?」具体的な改善策を検討するためには、さらに詳しい情報が必要になります。

そこでヒントになるのが満足度理由などの自由回答です。

顧客理解の解像度を高める自由回答分析

自由回答は、顧客の生の声を直接聞き、その背後にある具体的な体験やニーズを理解するための貴重な手段です。数値データだけでは見えにくい改善のヒントが、この自由回答の中に隠されています。

具体性を引き出す設問設計

自由回答質問を設計する際には、単に「評価理由を教えてください」と尋ねるだけでは、抽象的で役に立たないコメントが集まりがちです。

たとえば、「最も満足したエピソード」や「最も不満に感じた経験」を具体的に記述してもらう質問方式を採用することで、顧客が実際に感じた状況や課題を明確に把握することができます。

  • 「最も満足したエピソードを教えてください。」
  • 「最も不満に感じた経験について、具体的に教えてください。」

自由回答分析の価値

自由回答を分析することで、単なる「満足」や「不満足」といった表層的なデータを超え、具体的な課題や改善策を見出すことができます。

「どのようなことが不満なのか?」
→顧客の不満点を明確化することで、具体的な改善ポイントを特定します。

「どのようにすれば満足してもらえるのか?」
→顧客が満足を感じるために求めている条件や要素を深く理解します。

自由回答の情報は一つひとつ丁寧に読み解く必要がありますが、その手間を惜しまなければ、単なる不満解消を超えて、顧客の期待を超えるサービスや体験を提供するための道筋が見えてきます。

顧客満足度調査を価値あるものにするために

顧客満足度調査の真の価値は、単に満足度を数値化するだけでなく、そのデータから具体的な改善策を導き出し、ビジネス成果につなげることにあります。本コラムで紹介した「設計図の作成」「キードライバーの特定」「自由回答分析による深掘り」は、その第一歩です。

しかし、これらを効果的に実践するには、専門的な知識と客観的な視点が求められます。もし「現状の調査データでは課題が見えにくい」「分析の時間やノウハウが足りない」と感じていらっしゃる場合は、ぜひ当社の「満足度調査分析サービス」をご活用ください。

当社のスペシャリストが、貴社のデータを多角的に掘り下げ、新たな発見や改善の方向性を明確にご提案いたします。調査結果を「価値あるアクション」へとつなげるために、私たちがお手伝いいたします。
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