はじめに:顧客満足度調査(CS調査)がなぜ重要なのか?

「顧客の満足度を高めることが大切なのはわかるけれど、具体的にどうすればいいのかわからない…」
「アンケートを実施したものの、得られたデータをどのように活用すればよいかわからない…」

このようなお悩みを抱えている企業は少なくありません。

顧客満足度調査(CS調査)は、単なる「アンケート」ではなく、企業が顧客の本音を知り、商品やサービスを改善し、リピート率やロイヤルティを高めるための戦略的なツール です。

しかし、実際には「満足度スコアを取得するだけで終わってしまう」「アンケートの回収率が低く、十分なデータが得られない」「結果を社内で活用しきれない」といった問題に直面するケースも多いのが現状です。

本コラムでは、顧客満足度調査の基本から設計・実施・分析・活用までの流れを体系的に解説し、「顧客の声をビジネス成長につなげる方法」 を具体的にご紹介します。

🔷 本コラムを読むことで得られること

  • 顧客満足度調査の目的と意義が明確になる
  • 適切な指標(NPS・CSI・CSATなど)の選び方がわかる
  • 効果的な調査設計と質問項目の作り方がわかる
  • 集計・分析の手法を理解し、適切な改善策を立案できる
  • 社内共有や施策への落とし込み方がわかる

「顧客の声をもっと活かしたい」「データドリブンな改善を進めたい」と考えている方にとって、本コラムが具体的なヒントとなれば幸いです。

1. 顧客満足度調査(CS調査)とは?


1-1. 顧客満足度調査(CS調査)の目的

顧客満足度調査(Customer Satisfaction Survey、CS調査)は、商品やサービスに対する顧客の評価を定量・定性の両面で把握し、改善策の検討やビジネス成果の向上につなげるための重要な手段です。

企業が顧客満足度調査を実施する目的は、大きく3つの段階に分けられます。

  1. 現状の満足度を数値化 (例:「総合満足度 85%」「NPS +25」)
  2. 過去のデータや競合・顧客層と比較し、満足度のレベルを把握
  3. 満足度を向上させ、ロイヤルティを高める施策を検討・実行

特に「3.満足度の向上を実現する」ことが、顧客満足度調査(CS調査)を単なる情報収集に終わらせず、企業の成長戦略に活用するカギとなります。

Q&Aコラム:「顧客満足度調査はなぜ必要?」

顧客満足度調査はなぜ必要なのか?

「お客様のことは“肌感覚”でわかっているから、調査なんかしなくてもよい」とおっしゃる方がいます。しかしながら、“肌感覚”や“直感”は、なかなか他の人と共有できません。

顧客満足度調査は、顧客の声を「データ」として把握し、商品やサービスの改善に活用するための戦略的ツールです。
「顧客のニーズを把握し、満足度を向上させることで、ロイヤルティの高い顧客を増やし、業績拡大につなげる」ことが調査の大きな目的です。


[ポイント]

  • 「肌感覚でわかっている」では社内で共有できないが、「数値化」することで顧客の評価を客観的に把握できる
  • どの要素が評価され、どの要素が不満なのかを具体的に分析できる
  • 改善すべきポイントを明確にし、競争優位性を高めるための施策を立案できる

1-2. 顧客満足度(CS)とは?

顧客満足度(Customer Satisfaction、CS)とは、商品やサービスの利用を通じて顧客が経験する「顧客体験(CX)」の評価です。

一般的に、顧客は以下のように期待値と経験を比較し、満足度を決定します。

状態顧客の反応具体例
期待 ≒ 経験普通の満足期待通りのサービスを受けた
期待 < 経験高い満足・推奨想定以上の特典/効果があった
期待 > 経験不満足・離脱接客対応が悪かった

特に、期待を超える経験を提供できた場合、顧客は「次も買おう」「使い続けよう」「友人にも教えよう」という継続利用意向や推奨意向を持つようになります。

[ポイント]

  • 顧客の期待を上回ることがロイヤルティ向上のカギ
  • 「満足=ロイヤルティ」ではなく、期待以上の価値提供が重要

1-3. 2種類の顧客満足度調査(CS調査)

顧客満足度調査(CS調査)は、目的やタイミングによって「トランザクショナル調査」と「リレーショナル調査」の2つに分かれます。

調査の種類概要具体例主な活用ポイント
トランザクショナル調査顧客が特定の取引やサービスを経験した直後の満足度を測る携帯電話ショップでの手続き直後のアンケート短期的なサービス改善、顧客対応の最適化
リレーショナル調査顧客と企業の長期的な関係性を評価する携帯電話サービスの満足度調査中長期のブランド戦略、継続利用・推奨の促進

たとえば、コールセンター対応の満足度を測るトランザクショナル調査では、評価が高く出る傾向があります。一方、商品やサービスの長期利用に対する満足度を測るリレーショナル調査では、より厳しい評価が出ることもあります。

トランザクショナル調査向きの項目とリレーショナル調査向きの項目を一つの調査にまとめて実施しようとすると、設問数が多くなり、回答者の負担が増しますので、回答データの精度が低下しがちです。調査の目的を明確にし、それに応じた対象者・タイミング・方法を選定することが重要です。

Q&Aコラム:「顧客満足度調査のベストなタイミング」

顧客満足度調査を実施するのに最適なタイミングは?

トランザクショナル調査とリレーショナル調査とで、実施タイミングの考え方が異なります。

トランザクショナル調査ホテル宿泊やセミナー参加など短期間の体験に対する調査は、体験直後に実施すると詳細なフィードバックが得られやすい。
リレーショナル調査BtoBやサブスクリプション型のBtoCでは、定期的なリレーショナル調査が有効。「毎年同じ時期に調査を実施する」ことで、過去データとの比較が可能になり、変化やトレンドを把握しやすい。

🔷 調査の実施時期の選定ポイント

  • 年末年始・大型連休・決算時期などの繁忙期は避ける
  • 調査結果を活用するタイミング(新年度計画、KPI設定時期など)を考慮する

第1章のまとめ:顧客満足度調査(CS調査)を成功させるポイント

  • 顧客満足度調査(CS調査)は、単なるデータ収集ではなく「改善策の立案と実行」のためのツール
  • 期待を上回る体験を提供することが、満足度向上のカギ
  • トランザクショナル調査とリレーショナル調査を適切に使い分ける

2. 顧客満足度調査(CS調査)の指標


2-1. 顧客満足度調査の成功を左右する指標選定

顧客満足度調査(CS調査)の成功は、適切な指標の選定にかかっています。
指標を正しく選ぶことで、調査の目的が明確になり、具体的な改善施策の立案が可能になります。

代表的な指標には、次の3つがあります。

指標内容特徴・メリット注意点
NPS (ネットプロモータースコア)友人・知人への推奨意向シンプルで直感的に理解しやすい他の指標に比べて誤差が大きくなりがち
CSI (満足度インデックス)総合満足度・継続意向などの複数指標を統合測定誤差が少なく、精度が高い他の指標と比較しないと意味を把握しにくい
総合満足度 (トップ2ボックス)「非常に満足」「満足」の合計値簡単で直感的に理解しやすいロイヤルティとの結びつきが弱い場合がある

各指標の詳細と活用ポイントを見ていきましょう。


2-2. NPS(ネットプロモータースコア)とは?

NPS(Net Promoter Score)は、顧客の「推奨意向」を測定する指標です。
具体的には、次のような質問を行い、結果をスコア化します。

Q. 「この商品・サービスを家族や友人にどの程度すすめたいと思いますか?」
➡ 0点(まったくすすめない)~10点(強くすすめたい)の11段階評価

🔷 NPS評価グループ 定義

  • 推奨者 9~10点をつけた人 (企業の熱烈なファン)
  • 中立者 7~8点をつけた人 (満足しているが特に推奨しない)
  • 批判者 0~6点をつけた人 (不満を持ち、否定的な口コミを発信する可能性あり)

🔷 NPSの計算方法

NPS =「推奨者の割合(%)」−「批判者の割合(%)」
例:推奨者が50%、批判者が20%なら、NPSは「+30」

[NPSの活用ポイント]

  • シンプルな数値で企業の競争力を比較しやすい
  • 競合他社とのベンチマークに最適 (BtoCの場合は業界平均との比較が可能なことが多い)
  • 「なぜそのスコアをつけたのか?」の理由を深掘りすることが重要

[NPSの注意点]

  • 中間回答が多い日本では、批判者が多く、推奨者が少ないため、NPSがマイナスになりやすい
  • 推奨者の割合と批判者の割合の誤差が足し合わされるため、他の指標よりも誤差が大きくなりがち

2-3. CSI(満足度インデックス)とは?

CSI(Customer Satisfaction Index)は、複数の評価指標を統合した「総合満足度スコア」です。

🔷 CSIの特徴

  • 総合満足度、推奨意向、継続利用意向などを統合し、1つの指標に集約
  • 単独ではなく「比較」することで価値を発揮する (前回調査・競合比較など)
  • 統計分析(構造モデリングなど)を用いて算出することも可能

🔷 CSIの計算例

(総合満足度×0.5) + (推奨意向×0.3) + (継続意向×0.2) = CSI

[CSIの活用ポイント]

  • 長期的な満足度の変化を追いやすい
  • 競合との比較に適している
  • 満足度向上のための重要なKPIとして利用可能

[CSIの注意点]

  • 統計分析により算出する場合には、算出方法が複雑で、ブラックボックス化する
  • 単体の数値だけでは意味がわかりにくい

2-4. 総合満足度(トップ2ボックス)とは?

総合満足度(Top2Box)は、5段階評価や7段階評価で上位2つを「満足」と定義するシンプルな指標です。

🔷 総合満足度の質問例

Q. 「この商品・サービスにどの程度満足していますか?」
➡ 5段階評価(1=不満~5=非常に満足)

Q&Aコラム:「何%以上なら満足度が高いと言える?」

顧客満足度が高いと言える基準は何%以上か?

顧客満足度がどれくらいなら「高い」と言えるかについて、一律の基準を設けることはできません。満足度スコアのレベルは評価の対象となる商品やサービスの種類によって異なりますし、評価する人の性別や年代などの属性によっても異なる場合があります。

前回の調査に比べてどうかとか、競合他社に比べてどうかとか、何か基準となるものと比較して「より高い/低い」かどうかをみることが重要です

[トップ2ボックスの活用ポイント]

  • 「非常に満足」「満足」の合計値 (シンプルでわかりやすい)
  • 定点観測がしやすい (時系列での比較が容易)
  • 顧客の満足度を全体的に把握するための基本指標

[総合満足度の注意点]

  • 期待 ≒ 経験で満足となりがちなため、ロイヤルティ(継続利用・推奨意向)との関連が弱い場合がある

2-5. BtoC・BtoBにおける指標の使い分け

指標の選定は、BtoC(一般消費者向け)とBtoB(企業向け)で異なります。

ビジネスタイプおすすめの指標理由
BtoC (一般消費者向け)NPS+総合満足度+継続利用意向顧客の推奨意向やロイヤルティを測るのが重要
BtoB (企業向け)総合満足度+継続利用意向+購入拡大意向取引の継続や拡大がビジネスの成長に直結

たとえば、BtoBでは「他社への推奨意向(NPS)」が現実的でない場合もあります。その場合は「次回も契約したいか」「取引を拡大したいか」などの指標を取り入れることが有効です。


2-6. 追加指標(CSAT・CES)の活用

上記の3つの指標の他、主にトランザクショナル調査で有効な指標として、CSAT(顧客満足度スコア)とCES(顧客努力度スコア)があります。

指標内容活用シーン具体的な質問例
CSAT (Customer Satisfaction Score)特定の取引やサービスの満足度を測るカスタマーサポートやイベント後の調査今回の○○○サービスにどの程度満足していますか。
CES (Customer Effort Score)顧客が問題を解決する際の「努力の度合い」を測るコールセンター対応や購入プロセス改善○○○を利用するのはどれくらい簡単でしたか。

Q&Aコラム:「どのくらいの回収数が必要?」

何人に対して調査をすればよいのか?

顧客満足度調査の回収数は、少なくとも30人以上、できれば50人以上を目指します。回収数が少ないと誤差が大きくなり、信頼度が低下するため注意が必要です。顧客数が少ない場合は、%ではなく、「○人中△人」のように実数での分析が効果的です。


第2章のまとめ:適切な指標を選ぶことが成功のカギ

  • 調査の目的に応じて適切な指標を選定する
  • NPS・CSI・総合満足度を組み合わせて活用する
  • BtoC・BtoBで指標を使い分ける
  • トランザクショナル調査ではCSAT・CESも活用できる

3. 顧客満足度調査(CS調査)の調査票設計


3-1. 効果的な調査票の構成

顧客満足度調査(CS調査)の設計は、単に質問を羅列するのではなく、「何を知りたいのか?」→「どのように聞くのか?」→「どう活用するのか?」の流れで考えることが重要です。

調査票の基本構成

顧客満足度調査の調査票は、次の4つのセクションで構成するのが一般的です。

セクション内容目的
1.全体評価セクション(+評価理由の自由回答)NPS、総合満足度、継続利用意向など全体の満足度を測定し、ロイヤルティや推奨意向を把握
2.個別評価セクション商品・サービス・接客・価格・利便性など具体的な評価要素を測定し、改善点を特定
3.利用実態セクション購入頻度・利用目的・選択理由利用実態により顧客を分類し、分析軸として利用
4.対象者の特性セクション性別・年齢・職業顧客セグメントごとの傾向を分析

3-2. 全体評価セクション:総合的な顧客の声をとらえる

このセクションでは、NPS・総合満足度・継続利用意向などの指標を質問し、全体的な顧客評価を数値化します。

🔷 全体評価の質問例

  • 「この商品・サービスをどの程度おすすめしたいと思いますか?」(NPS)
  • 「この商品・サービスにどの程度満足していますか?」(総合満足度)
  • 「次回もこの商品・サービスを利用したいと思いますか?」(継続利用意向)

さらに、数値だけでは分からない「なぜそう思ったのか?」という評価理由を、自由回答で収集することが重要です。

[なぜ自由回答が重要なのか?]

  • 数値の変動の「原因」を明確にできる
  • 具体的な不満や改善ポイントを直接聞ける
  • 競合との差別化ポイントが見えてくる

評価理由の自由回答について、不満足と評価した人だけに聞いているケースを見かけますが、これは有効なやり方ではありません。満足の人の中にも不満な点があって、そこの改善がより高い満足につながる可能性があります。全員に対して「この部分をもっとこうしてほしい」というニーズを引き出せるように聞くことが重要です。


3-3. 個別評価セクション:具体的な改善点を発見する

このセクションでは、顧客体験の各要素について詳細な評価を収集します。
どの要素が満足度に影響しているのか?を明らかにするため、評価項目を適切に設定することが重要です。

🔷 個別評価の主な項目(例)

業種評価項目の例
小売業商品の品揃え/価格/スタッフの接客態度/店舗の清潔さ
飲食業料理の味/提供スピード/スタッフ対応/店舗の雰囲気
ホテル業チェックイン対応/客室の清潔さ/朝食の質/施設の利便性
BtoB営業担当の対応/提案の質/価格/アフターサポート

[ポイント]

  • 「会社の取り組みで改善できる要素」にフォーカスする (例:接客、レスポンス速度など)
  • 評価項目は細かすぎず、大まかすぎず適切な粒度にする (例:「スタッフ対応」を「受付」「会計」「接客態度」に細分化しすぎない)

3-4. 利用実態セクション&対象者の特性セクション

この2つのセクションでは、顧客属性や利用状況を把握し、クロス集計や深掘り分析の精度を高めます。

🔷 利用実態の質問例

  • 「この商品・サービスをどのくらいの頻度で利用していますか?」(購入頻度)
  • 「当社を選んだ理由は何ですか?」(選択理由)

🔷 対象者特性の質問例

  • BtoCの場合:性別/年齢/居住地域/職業など
  • BtoBの場合:企業規模/業種/役職/購入決定権の有無など

🔷 属性情報によるクロス集計の活用例

  • 「利用頻度が高い層vs.低い層」で満足度の違いを比較
  • 「若年層 vs. 高年層」で評価の傾向を比較
  • 「法人規模別」にNPSや総合満足度を分析

3-5. カスタマージャーニーを意識した設問設計

顧客の体験は「利用前」「利用中」「利用後」の3つのフェーズに分かれます。
このフェーズごとに評価項目を設計すると、どの段階で不満が生じているのか?を明確にできます。

🔷 カスタマージャーニー別の評価項目 (例:ホテル業界)

フェーズ評価項目
利用前情報検索のしやすさ/予約のスムーズさ
利用中チェックイン対応/客室の清潔さ/朝食のおいしさ
利用後チェックアウト対応/口コミへの返信/再利用意向
ホテル宿泊客のカスタマージャーニー

この考え方はBtoBにも応用可能です。

例:「商談前 (情報提供) → 商談中 (提案内容) → 契約後 (サポート対応)」


3-6. 設問設計の注意点 (回答率を上げる工夫)

  1. 設問数は10~15問程度に抑える (5~10分で回答可能にする)
  2. 選択肢のフォーマットを統一し、回答しやすくする
  3. 記述式(自由回答)は多すぎると負担になるため、要所に絞る
  4. スマホ対応のアンケートツールを活用する (Web調査の場合)

3-7. アンケート調査票のサンプルをダウンロード

顧客満足度調査票の設計を具体的にイメージするために、 「お客様センター向けアンケート」と「ホテル宿泊客向けアンケート」 のサンプルを用意しました。

🔷 こんな方におすすめ!

  • アンケート設計の具体的な例を見たい
  • 自社の調査票を作成する際の参考にしたい
  • 設問の流れや表現を学びたい

以下のリンクから無料でダウンロードできます。

📥 お客様センターのアンケート (サンプル)

📥 ホテル宿泊客アンケート (サンプル)

※ 本サンプルは一般的なアンケートの一例です。実際の調査に合わせてカスタマイズしてください。


第3章のまとめ:顧客満足度調査の設計で重要なポイント

  • 「何を知りたいのか?」→「どのように聞くのか?」→「どう活用するのか?」を明確にする
  • 全体評価・個別評価・利用実態・対象者特性の4つのセクションをバランスよく設計
  • カスタマージャーニーを意識し、利用フェーズごとの評価を収集
  • 調査票はシンプルに、回答しやすい設計にする (設問数を10~15問に抑える)
  • 自由回答は「なぜその評価なのか?」を知るために重要!

4. 顧客満足度調査(CS調査)の集計・分析

顧客満足度調査(CS調査)は、単にデータを集めるだけでなく、「どのように分析し、改善に活かすか」が重要です。
数値をそのまま報告するのではなく、データの背景にある「顧客の感情やニーズ」を読み解くことで、具体的な施策につなげることができます。


4-1. 単純集計・クロス集計:データの全体像を把握する

① 単純集計:各設問の結果を整理する

単純集計とは、設問ごとに回答分布を集計する方法です。
例えば、NPS(推奨意向)を単純集計すると、以下のような結果が得られます。

NPSスコア回答者数割合(%)
0~6点(批判者)30人30%
7~8点(中立者)40人40%
9~10点(推奨者)30人30%

[ポイント]

  • データの全体像を把握する
  • 傾向や偏りがないか確認する
  • 回答者の属性を確認する

② クロス集計:属性ごとの違いを分析する

単純集計では全体の傾向は見えますが、「どの層の満足度が高いのか?」「どの層が不満を持っているのか?」までは分かりません。
そこで、クロス集計を使い、顧客の属性別に満足度を分析します。

🔷クロス集計の例 (性別・年代別×総合満足度)

クロス集計の例(性別・年代別×総合満足度)

[ポイント]

  • どの層の満足度が高いのか? (ターゲット層の発見)
  • どの層の満足度が低いのか? (改善が必要なセグメントを特定)
  • どの要素が不満の原因なのか? (個別評価×満足度を分析)

4-2. キードライバー分析:満足度に影響を与える要因を特定

顧客満足度を向上させるためには、「どの要素が満足度に大きく影響しているのか?」を明確にする必要があります。
そこで有効なのがキードライバー分析です。

キードライバー分析とは?

各評価項目が「総合満足度」や「NPS」にどれだけ影響を与えているかを分析し、「満足度向上に最も影響を与える要因」を特定する方法です。

🔷 キードライバー分析の例 (ホテル業界)

キードライバー分析の例

この例では、「客室の清潔さ」が最も満足度に影響を与えているため、最優先で改善すべきポイントだとわかります。

[ポイント]

  • 「どの要素が満足度に最も影響を与えているのか?」を明確にする
  • 影響が大きい要素を「最優先の改善ポイント」として特定
  • 影響が小さい要素に過剰な投資をしないように注意

4-3. 重要度×満足度マトリックス:改善優先度を決める

顧客満足度調査の結果を見る時によくある間違いが「満足度が低い」イコール「すぐに改善しなければならない」という思い込みです。

キードライバー分析によって明らかになった重要度と満足度を掛け合わせてみたときに、「重要度が高いにもかかわらず満足度が低い」ところがあれば、そこが弱みであり、最優先で改善に取り組む必要があります。
満足度が低くても重要度も低いようであれば、改善の優先度はそれほど高くはない(少なくとも、最優先ではない)と考えられます。

🔷 重要度×満足度マトリックスの例 (ホテル業界)

重要度×満足度マトリックスの例 (ホテル業界)

🔷 重要度×満足度マトリックスに基づく改善方針の例 (ホテル業界)

要素重要度 × 満足度の区分方針
客室の清潔さ重要度:高 × 満足度:低最優先で改善
朝食のおいしさ重要度:高 × 満足度:低最優先で改善
スタッフの対応重要度:中 × 満足度:高維持・強化
Wi-Fiの安定性重要度:低 × 満足度:低コスト効果を検討
チェックインのスムーズさ重要度:低 × 満足度:中過剰投資を避ける

[ポイント]

  • 「重要度が高い×満足度が低い」項目を最優先で改善
  • 「重要度が高い×満足度が高い」項目は維持・強化
  • 「重要度が低い×満足度が低い」項目は、改善の優先度が高くない

4-4. 自由回答分析:顧客の「生の声」を活用する

① 自由回答を分析する重要性

数値データだけでは、顧客が何を求めているのかを「深く理解する」ことはできません。
そこで、自由回答を活用し、顧客の「本音」を分析します。

② 自由回答のアフターコーディング

アフターコーディングとは、自由回答を特定のカテゴリーに分類し、数値化する手法です。これにより、自由回答の内容を定量的に扱えるようになり、顧客のニーズや不満などの全体像とその具体的な内容の分布を把握することができます。

🔷 自由回答の分類例 (カスタマーサポートの場合)

カテゴリー具体的なコメント例割合
レスポンスの遅さ「問い合わせの返信が遅い」40%
対応の質「マニュアル的な回答しかない」35%
対応時間「夜間も対応してほしい」25%

第4章のまとめ:顧客満足度調査(CS調査)の集計・分析で成果を出すポイント

  • 単純集計で全体の傾向を把握する
  • クロス集計で顧客属性ごとの違いを分析する
  • キードライバー分析で「満足度に影響を与える要素」を特定する
  • 重要度×満足度マトリックスで改善優先度を決める
  • 自由回答を分析し、顧客の「本音」を把握する

これらの分析を通じて、満足度向上のための具体的なアクションが見えてきます。

5. 顧客満足度調査(CS調査)の活用:経営戦略への組み込み

顧客満足度調査(CS調査)は、「調査を実施すること」が目的ではなく、「調査結果を活用し、顧客満足度を向上させること」が本来の目的です。
しかし、多くの企業では、調査結果が単なる「データの報告」で終わり、具体的なアクションにつながらないという課題を抱えています。

この章では、顧客満足度調査(CS調査)を経営戦略に組み込み、実際のビジネス成果につなげる方法を解説します。


5-1. 顧客満足度調査(CS調査)のPDCAサイクル化:継続的な改善プロセス

顧客満足度調査(CS調査)を単発で終わらせない

顧客満足度調査(CS調査)を単発で実施して終わりにしてしまう企業は少なくありません。
しかし、顧客の期待や市場環境は常に変化しており、一度の調査だけで長期的な成果を出すことは困難です。継続的に調査を実施し、PDCAサイクルを回すことが重要です。


5-2. 調査結果の社内共有:全社で活用できる仕組みを作る

調査結果を「報告資料」で終わらせない

顧客満足度調査(CS調査)の結果は、経営層やマーケティング部門だけが見るものではありません。
商品開発・営業・カスタマーサポートなど、全社で活用する仕組みを作ることが重要です。

🔷 効果的な社内共有の方法

手法メリット活用法
経営会議での共有会社の方針決定に直結経営戦略や投資判断に反映
部門別の報告会各部門に最適なアクションを設定営業→顧客対応の改善、開発→商品改良
ダッシュボードの活用リアルタイムで結果を見られるKPI進捗を常時確認、現場の施策に即反映
従業員向けのフィードバック顧客満足度向上の意識付け「顧客の声」を現場に伝え、モチベーションや行動につなげる

[成功のポイント]

  • サマリー(概要)+詳細分析の2段階で共有 (データ量が多すぎると活用されない)
  • KPIと紐づける (満足度スコアやNPSを組織の目標に設定)
  • 現場の社員に「自分ごと」として認識させる

5-3. 調査結果をもとにしたアクションプランの策定

施策を「満足度のフェーズ別」に整理する

調査結果を分析した後は、具体的なアクションプランを策定します。
このとき、顧客満足度のフェーズ(利用前・利用中・利用後)に分けて考えると、実行しやすくなります。

🔷 フェーズ別アクションプランの例 (BtoC・ホテル業界の場合)

フェーズ改善施策の例
利用前ホテルのWebサイトを改善し、予約のしやすさを向上
利用中客室清掃の品質向上、スタッフの接客研修を強化
利用後宿泊後アンケートの送付、リピート客向け特典を提供

🔷 フェーズ別アクションプランの例 (BtoB・SaaS企業の場合)

フェーズ改善施策の例
導入前無料トライアルの導線を改善、営業担当の対応スピードを向上
導入中オンボーディングサポートを強化、FAQの充実
導入後アップセル施策の強化、定期的なサポートミーティングを実施

[ポイント]

  • フェーズごとに改善施策を整理し、実行しやすくする
  • 各部門に役割を割り振り、アクションの責任者を明確化
  • 定期的に振り返り、施策の成果をチェックする

5-4. 調査結果を顧客にフィードバックする:信頼関係の強化

調査結果を顧客に「見せる」ことで信頼を得る

顧客満足度調査の結果を「社内だけで共有する」のではなく、顧客にもフィードバックすることで、企業と顧客の信頼関係を強化できます。

🔷 顧客向けフィードバックの方法

手法内容メリット
Webサイト・ニュースレター「お客様の声をもとに、◯◯を改善しました(改善します)」と公開企業の透明性が向上
メールマガジン「調査結果の概要+今後の改善計画」を配信顧客の期待を高め、ロイヤルティ向上
個別フォローアップ
(特にBtoBで有効)
低評価の顧客に対して、個別にヒアリング・改善対応顧客満足度の回復

[成功のポイント]

  • 「お客様の声をもとに改善しました!」と伝えることで、顧客の信頼を獲得
  • 批判的な意見も真摯に受け止め、改善に活かす姿勢を示す
  • リピート率・口コミの向上につなげる

第5章のまとめ:顧客満足度調査(CS調査)をビジネス成果につなげるポイント

  • 顧客満足度調査(CS調査)をPDCAサイクルに組み込み、継続的な改善を行う
  • 調査結果を全社で共有し、現場レベルで活用できる仕組みを作る
  • フェーズ別にアクションプランを策定し、具体的な施策につなげる
  • 調査結果を顧客にも共有し、信頼関係を強化する

「調査をすること」が目的ではなく、「顧客満足度を向上させ、ビジネス成果につなげること」がゴールです。

顧客満足度調査(CS調査)について、さらに詳しくはこちら

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