私たちが最もよく目にする調査データの一つに内閣支持率があります。
新聞社など多くのメディアが独自に調査を行っていますが、発表される支持率の数字に大きな差があることも少なくありません。

なぜ支持率に差がでてくるのか?2024年10月に発足した石破内閣の支持率データから考えてみました。

内閣支持率の推移

NHKと全国紙4紙が発表している2024年1月以降の内閣支持率の推移をグラフにすると以下のようになります。

各社発表「内閣支持率」の推移

発足直後の2024年10月の支持率をみると、読売新聞と日本経済新聞は51%で、朝日新聞と毎日新聞は46%、NHKは44%です。

読売・日経と朝日・毎日・NHKとで支持率に約5ポイントの違いがありますが、これは主に「重ね聞き」をしているかどうかの違いによるものと言われています。

以下は、各社の内閣支持率についての質問方法を調べてまとめたものです。

質問文重ね聞きの有無
NHKあなたは、石破内閣を支持しますか。それとも支持しませんか。不明
朝日新聞あなたは、石破内閣を支持しますか。支持しませんか。なし
毎日新聞石破内閣を支持しますか。なし
読売新聞あなたは、石破内閣を、支持しますか、支持しませんか。あり
日本経済新聞あなたは石破内閣を支持しますか、しませんか。あり

「支持しますか。(しませんか。)」の質問に対して支持する/支持しないを答えられなかった人に対して、読売の調査では「どちらかと言えば、支持しますか、支持しませんか」と聞き、日経の調査では「お気持ちに近いのはどちらですか」と聞いています。

その結果、日経の10月度調査での1度目の質問と重ね聞き後の回答比率は以下の通りとなっています。

石破内閣の支持率_重ね聞きの影響

朝日と毎日(そして、たぶんNHK)に比べると、読売と日経の調査で「支持する」と回答した人の中には、あいまいな支持者が含まれている割合が高そうです。

聞き方の違いだけでなく、調査の実施タイミングなど、他にも調査結果に影響を与える要素があります。
重要なポイントは、各社の支持率に差はあるものの、折れ線の形、つまり、支持率の推移は非常に似通ったものになっているということです。

単月の数字を「点」で見るだけでも現状の立ち位置を把握することができますが、「点」がつながり「線」となることで数字の動きから社会のダイナミックな変化を読み取ることができるのが、継続調査の強みです。

内閣「不」支持率の推移

一方、「支持しない」人の割合を「不支持率」として見てみると以下のとおりの推移となります。

内閣「不支持率」の推移

上のグラフから毎日新聞の不支持率が最も高くなっていることがわかります。

他社の調査ではオペレーターが質問を読み上げて回答を聞き取る方式であるのに対して、毎日の調査は、9月までは自動音声による調査、10月はスマートフォンでのWeb調査であることが影響しているのではないかと言われています。

声に出して「No」と言うのはちょっと・・・という人も、回答番号を押す方式であれば「No」の意思表示をしやすいということです。

実態に近い不支持率を知りたい場合は、毎日新聞の調査に注目するのがよさそうです。

内閣支持率データから学ぶこと

内閣支持率のデータについて考えることで見えてきたポイントがいくつかあります。

① あいまいな回答を許容するかどうか

読売・日経と朝日・毎日・NHKとの差は「どちらかといえば支持する」人を含むかどうかの差のようでした。

辞書を引くと「支持」とは「ある意見・主張などに賛成して、その後押しをすること」とあります。

「どちらかといえば、後押しをする」と言われても「本当に?」と疑いたくなります。

一方で、いきなり「内閣を支持しますか。しませんか。」と聞かれて即答できない人も少なくないでしょう。
重ね聞きで拾い上げる必要もありそうです。

アンケートの調査票を考える際に、「どちらともいえない」や「わからない」を入れるかどうかと同じ悩ましい問題です。

② 率直に答えてもらう

自動音声/Webによる調査を行っている毎日新聞の不支持率が最も高く出ていました。

対人コミュニケーションには、遠慮、虚栄、謙遜などが入り込みます。

他者の存在が気になる面接調査や電話調査では、よく思われたい/悪く思われたくないという意識が働いて、少し「盛った」回答をしてしまう人がいるため、郵送調査やWeb調査の方が率直な回答を得ることができると言われています。

③ 「点」をつないだ「線」で見る

そもそも内閣を支持するかどうかという目に見えない気持ちを数値にしたものが支持率です。

たとえば、一時点を取り出して支持率50%といわれても、どの程度強く後押ししているのかはわかりません。しかし、50%あった支持率が40%になっていれば、後押しする力が弱くなっているということがわかります。

あいまいな回答を許容するかどうか、オペレーターが介在するかどうかにかかわらず、内閣支持率の推移はどの調査でも同じような傾向でした。
「線」で見るぶんには数字の動きを読み違えるリスクは少なそうです。

なお、内閣支持率についての質問は、ほかの質問の影響を受けないように最初に聞いています。
「線」で見たい重要な質問については、オーダーバイアスを受けないよう冒頭部分に置くようにすることがポイントです。

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