リサーチの発想を広げる調査対象者選び

リサーチの発想を広げる調査対象者選び

調査企画は「誰に」「どのように」「何を」聞くかを決めること

先日のコラムでも触れましたが、リサーチの成否は、ほとんど企画段階(調査票設計まで)で決まります。

例えば、「顧客の減少」というマーケティング課題に対しては

☑お客様の不満がどこにあるのか知りたい
☑自社のブランドや商品・サービスがどの程度認知されているか知りたい
☑出稿後の広告がどの程度認知されているのか知りたい
☑お客様のライフスタイルを知り、商品・サービスのニーズを探りたい
☑市場・競合比較により自社商品・サービスの強み/弱みを知りたい

といった具体的なリサーチ課題に落とし込んだ上で

●誰に(調査対象者/地域/サンプルサイズ)
●どのように(インターネット or 紙など)
●何を(質問項目)

聞くのが適切かを決めていきます。

調査対象者の選定は食材選び

リサーチ課題が明確であれば、それに適した調査手法も見つけやすくなります。

☑お客様の不満がどこにあるのか知りたい

であれば「CS(顧客満足度)調査」

☑自社のブランドや商品・サービスがどの程度認知されているか知りたい

であれば「ブランドイメージ調査」

といった具合ですが、それぞれスタンダードな質問パターンがあるので、それを基に調査票設計を進めていくことができます。いわば料理の標準的なレシピが存在するわけです。

料理のたとえで言えば、調査手段や質問項目が「調理方法」、分析が「味付け」、レポートが「盛り付け」だとすると、調査対象者は「食材」になるでしょうか。

対象者選びから調査企画を考えてみる

一般的には、リサーチ課題に適した調査手法が決まってから「誰に」「どのように」「何を」聞くかを考えていきますが、これはレシピ通りに「食材」を揃えて「調理」していくことで料理の失敗を避ける堅実な方法ではあります。

ただ、時には「食材」選びから始めて、この食材を使ってどんな料理ができるだろう?と考えることは料理アイデアを膨らませ、レシピの増加や腕前の向上にもつながるでしょう。

それと同様に、リサーチにおいても、この調査手法なら対象者はこういった人達、と決めていくのではなく、自社を取り巻く関係者(ステークホルダー)を洗い出し、この人達を対象にしたらどのような調査ができるだろう?と考えることによりリサーチの発想を広げていくと、思わぬ形でマーケティング課題の新たな解決の糸口が見つかるかもしれません。

大学のステークホルダー

今回は、大学を例に考えてみましょう。

大学で行う調査というと、まずは講義への満足度など学生を対象にしたアンケートが思い浮かぶでしょうか。
ただ、学内に限っても教員や職員がいますし、学生のつながりでは卒業者や受験生と保護者など、ザっと思いつくだけでも大学のステークホルダーは多種多様です。

大学のステークホルダー

H大学のケース

H大学では、大学の魅力を高めるため授業評価FD(Faculty Development)アンケートを実施しており、在学生からは比較的高いカリキュラム満足度が得られているのですが、その一方で近年は志願者数の減少が課題となっています。
大学側では、「以前はユニークな学部の存在が認知の上でも強みとなっていたが、近年は独自のイメージが希薄になって他大学と差別化できていないのではないか?」との仮説をもって、高校2~3年生の進学希望者とその保護者を対象にブランドイメージ調査の実施を検討しています。

ただ、仮説を前提にしたブランドイメージ調査以外の方法も考えておきたいところです。
「高校2~3年生の進学希望者とその保護者」を対象にするのは妥当だと思いますので、そこから出発してみましょう。

大学の認知・関心度

まず、大学の認知・関心度の違いによって対象者をセグメント化することで、認知率や認知経路、関心の有無の理由やH大学に抱くイメージの相違などを明らかにすることができます。
また、大学に関心がある人の中には、オープンキャンパスに参加した人や大学案内・パンフレットを資料請求した人なども含まれます。彼らに直接リーチして調査対象にできれば、その時点の評価だけでなく、実際の受験の有無、さらには合格者の入学の有無まで追跡して、それぞれの行動理由を聞くことも可能でしょう。

細かな質問文の表現よりも調査対象者の選定にこだわる

リサーチの目的は大きく実態把握と仮説検証に分かれますが、正しい実態把握のためには「誰に」聞くかを間違えてはいけませんし、検証する仮説は当を得たものでなければなりません。
リサーチ自体は成功しても、課題解決につながらなければ意味がないのです。
「何を」聞くか調査票設計と同等かそれ以上のこだわりをもって「誰に」聞くか調査対象者を考えてみましょう。