新聞社などが発表する内閣支持率に差があるのはなぜ?

新聞社などが発表する内閣支持率に差があるのはなぜ?

私たちが最もよく目にする調査データの一つに内閣支持率があります。
新聞社など多くのメディアが独自に調査を行っていますが、発表される支持率の数字に大きな差があることも少なくありません。

なぜ、支持率に差がでてくるのか、9月に発足した菅内閣の支持率データから考えてみました。

内閣支持率の推移

NHKと全国紙4紙が発表している菅内閣発足以来の支持率の推移をグラフにすると以下のようになります。

菅内閣の支持率推移

データ更新:2021年6月6日

発足直後の9月の支持率をみると、読売新聞と日本経済新聞は74%で、朝日新聞、毎日新聞、NHKの3社は60%台の前半です。

読売・日経と朝日・毎日・NHKとで支持率に約10ポイントの違いがありますが、これは主に「重ね聞き」をしているかどうかの違いによるものと言われています。

以下は、各社の内閣支持率についての質問方法を調べてまとめたものです。

 質問文重ね聞きの有無
NHKあなたは、菅内閣を支持しますか。それとも支持しませんか。不明
朝日新聞あなたは、菅内閣を支持しますか。支持しませんか。なし
毎日新聞菅内閣を支持しますか。なし
読売新聞あなたは、菅内閣を支持しますか。あり
日本経済新聞あなたは菅内閣を支持しますか、しませんか。あり

読売と日経の調査では「支持しますか。(しませんか。)」の質問に対して支持する/支持しないを答えられなかった人に「どちらかといえば支持しますか。支持しませんか。」と重ねて聞いています。

朝日と毎日(そして、たぶんNHK)に比べると、読売と日経の調査で「支持する」と回答した人の中には、あいまいな支持者が含まれている割合が高そうです。

質問方式が似通った読売と日経ですが、11月の調査結果には大きな差があります。
調査の実施日を確認すると、読売が月初に実施しているのに対して、日経は月末に実施しています。

 9月10月11月12月1月2月3月4月5月
NHK21日(月・祝)~22日(火・祝)9日(金)~11日(日)6日(金)~8日(日)11日(金)~13日(日)9日(土)~11日(月)5日(金)~7日(日)5日(金)~7日(日)9日(金)~10日(日) 7日(金)~9日(日)
朝日新聞16日(水)~17日(木)17日(土)~18日(日)14日(土)~15日(日)19日(土)~20日(日)23日(土)~24日(日)13日(土)~14日(日)20日(土)~21日(日)10日(土)~11日(日) 15日(土)~16日(日)
毎日新聞17日(木)10月中の実施はなし7日(土)12日(土)16日(土)13日(土)13日(土)18日(土)22日(土)
読売新聞19日(土)~20日(日)16日(金)~18日(日)6日(金)~8日(日)4日(金)~6日(日)15日(金)~17日(日)5日(金)~7日(日)5日(金)~7日(日)2日(金)~4日(日)7日(金)~9日(日)
日本経済新聞16日(水)~17日(木)23日(金)~25日(日)27日(金)~29日(日)25日(金)~27日(日)29日(金)~31日(日)26日(金)~28日(日)26日(金)~28日(日)23日(金)~25日(日)28日(金)~30日(日)

データ更新:2021年6月6日

中旬に調査を実施した朝日新聞を含めて、日経以外はすべて10月から横ばいの結果となっているのに対して、日経のみ支持率が下落していますので、これは調査タイミングの違いによるものが大きいと思われます。

11月下旬、新型コロナウィルスの第三波の到来がいよいよはっきりしてきます。そして、札幌、大阪を対象とする「Go To トラベル」を一時停止としたのが20日過ぎのことです。さらにその後、「勝負の3週間」に入ります。また、このころ、「桜を見る会」前夜の夕食会問題が大きく動きます。

こうしたことが積み重なって、支持率低下の引き金となったものと思われます。

単月の数字を「点」で見るだけでも現状の立ち位置を把握することができますが、「点」がつながり「線」となることで数字の動きから社会のダイナミックな変化を読み取ることができるのが、継続調査の強みです。

なお、12月までの調査の実施タイミングに大きな差がない朝日・毎日・NHKの3社の支持率は同じような推移となっています。

内閣「不」支持率の推移

一方、「支持しない」人の割合を「不支持率」としてみてみると以下のとおりの推移となります。

内閣「不」支持率の推移

データ更新:2021年6月6日

上のグラフから毎日新聞の不支持率が最も高くなっていることがわかります。

他社の調査ではオペレーターが質問を読み上げて回答を聞き取る方式であるのに対して、毎日の調査は自動音声による調査であることが影響しているのではないかと言われています。

声に出して「No」と言うのはちょっと・・・という人も、番号を押す方式であれば「No」の意思表示をしやすいということです。

実態に近い不支持率を知りたい場合は、毎日新聞の調査に注目するのがよさそうです。

自動音声の電話アンケートとなると怪しい感じがしますが、毎日新聞の調査では、コンピュータで無作為に発生した番号に発信するRDD方式で、電話をかけた相手が固定の場合は自動音声の質問に答えてもらい、携帯の場合は調査を承諾した人にショートメールで回答画面へのリンク情報を送る方式で調査を実施しているようです。

また、9月度の調査で、他社に比べて調査の実施時期が遅い読売とNHKの不支持率が最も低いレベルとなっているのも興味深いです。

先行実施した他社の調査結果がある種の同調圧力となって「支持しない」と言いづらい空気を作り出していたのではないかというのは考えすぎでしょうか?
もし、そんなことがあれば、世論調査というよりも世論「形成」調査になってしまいますね。

内閣支持率データから学ぶこと

内閣支持率のデータについて考えることで見えてきたポイントがいくつかあります。

① あいまいな回答を許容するかどうか

読売・日経と朝日・毎日・NHKとの差は「どちらかといえば支持する」人を含むかどうかの差のようでした。

辞書を引くと「支持」とは「ある意見・主張などに賛成して、その後押しをすること」とあります。

「どちらかといえば、後押しをする」と言われても「本当に?」と疑いたくなります。

一方で、いきなり「内閣を支持しますか。しませんか。」と聞かれて即答できない人も少なくないでしょう。
重ね聞きで拾い上げる必要もありそうです。

アンケートの調査票を考える際に、「どちらともいえない」や「わからない」を入れるかどうかと同じ悩ましい問題です。

② 率直に答えてもらう

自動音声による調査を行っている毎日新聞の不支持率が最も高く出ていました。

対人コミュニケーションには、遠慮、虚栄、謙遜などが入り込みます。

他者の存在が気になる面接調査や電話調査では、よく思われたい/悪く思われたくないという意識が働いて、少し「盛った」回答をしてしまう人がいるため、郵送調査やインターネット調査の方が率直な回答を得ることができると言われています。

③ 「点」をつないだ「線」で見る

そもそも内閣を支持するかどうかという目に見えない気持ちを数値にしたものが支持率です。

たとえば、一時点を取り出して支持率70%といわれても、どの程度強く後押ししているのかはわかりません。しかし、70%あった支持率が50%になっていれば、後押しする力が弱くなっているということがわかります。

あいまいな回答を許容するかどうか、オペレーターが介在するかどうかにかかわらず、内閣支持率の推移はどの調査でも同じような傾向でした。
「線」で見るぶんには数字の動きを読み違えるリスクは少なそうです。

なお、内閣支持率についての質問は、ほかの質問の影響を受けないように最初に聞いています。
「線」で見たい重要な質問については、オーダーバイアスを受けないよう冒頭部分に置くようにすることがポイントです。

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