新型コロナ感染症の治療薬候補「アビガン」の有効性についてのニュースを覚えていらっしゃいますか?

主な新聞社の報道内容(見出し部分)は、以下のようなものでした。

「アビガンの有効性、確認できず」(朝日)

「アビガン、有効性判断できず」(毎日)

「『アビガン』明確な有効性は確認できず」(読売)

「コロナ薬候補『アビガン』明確な有効性みられず」(産経)

テレビやラジオのニュースでも、同じような見出しでしたので、

「アビガンは効かない」

「アビガンは期待外れだった」

と思った人も多いようです。

報道内容を詳しく読むと、

「効果の有無を判断する指標において、統計的に有意な差がなかった」

とのことですので、冒頭で紹介した主要4紙の見出しでは、毎日新聞が一番適切な表現であるように思います。

「アビガン」の数値は、判断基準となる主要評価項目において、いち早く治療薬として承認された「レムデシビル」と同等あるいはそれ以上のものだったにもかかわらず、サンプルサイズがn=89人と小さなものであったため、有意判定がでなかったということです。ちなみに、「レムデシビル」のほうはn=1,000人以上を対象とした試験結果だそうです。

分野は異なりますが、市場調査の分析においても、「あともう少しサンプルサイズが大きければ、有意差といえるのに」ということがよくあります。

一方、サンプルサイズが大きければ、わずかな差でも有意になりやすいため注意が必要です。

私の経験上、満足度などのモデル分析も想定すると、小さすぎも大きすぎもしない「頃合いのよい」サンプルサイズは、n=300~600くらいです。

このくらいのサンプルサイズがあれば、セグメント別にクロスして見たいときにも、n=100程度/セグメントの集計ベースを確保することができます。

参考:標本誤差一覧表

標本誤差一覧表

「どのくらいのサンプルサイズにするか?」は調査結果の信頼度を左右し、調査の成否を決める重要なポイントです。

以前のコラムで、統計学的に信頼に足る調査結果を得るのに必要なサンプルサイズを求める方法をご紹介しています。

ダウンロードしてご利用いただける【サンプルサイズ計算ツール】もありますので、よろしければ、ご覧になってください。

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