Webアンケートを活用して組織やサービスを改善するには、単に画面を設置して回答を待つだけでは不十分です。回収率を高め、データを分析し、実際の改善につなげるための戦略的なアプローチで、アンケートの成果を最大限に引き出します。

今回は効果的なWebアンケート運用の3つのポイントを詳しく説明します。

1. 回収率を高める:質の高いデータを得る第一歩

回収率が低いとデータに偏りが生じ、分析結果が信頼できないものになる可能性があります。信頼性の高いデータを得るためには、単に「回答してください」と依頼するだけでなく、対象者の動機づけや依頼方法、環境整備が重要です。

以下に具体的なポイントを解説します。

対象者の動機づけ:価値を伝える依頼文

対象者がアンケートに参加する理由を明確にし、協力する意義を感じてもらうことが回収率向上の鍵です。依頼文には以下の要素を盛り込むと効果的です。

調査の目的を伝える

アンケート依頼文の冒頭で、「このたび弊社では、より良い商品・サービスのご提供を目的として、お客様のご意見をおうがかいするアンケートを実施することとなりました」と、具体的な活用目的を示します。

対象者にとってのメリットを説明

「皆さまの声を反映し、ご満足いただける顧客体験を提供します」と、回答がもたらすメリットを明記するのも効果的です。

回答のハードルを下げる

設問数や回答時間を明記し、「負担が少ない」「簡単に回答できる」という印象を与えます。

例:「5分程度でご回答いただけます」

直接的な依頼:One to One アプローチの重要性

ホームページ上にアンケート画面を作っただけでは、思うように回答が集まらないことがよくあります。その場合、一人ひとりに直接働きかける「One to One」のアプローチが鍵となります。

顧客向けアンケートでは、個人情報利用目的の範囲内で顧客リストを活用し、メールなどで個別に案内するのが有効です。名前を含めたパーソナライズされた依頼や、QRコードを利用したスムーズなアクセスを提供することで、回収率が向上します。

顧客リストを活用した個別依頼

メールや郵送で「あなたの意見をぜひお聞かせください」と伝えることで、対象者に特別感を感じてもらえます。

対面での協力依頼

メールアドレスや住所などのコンタクト情報がない場合は、店頭での接客時やイベントの来場時に直接案内する方法が効果的です。
以下の例のような案内カードを手渡したり、あるいは、その場でモバイル端末を利用して回答をお願いしたりすることで、高い回収率が期待できます。

アンケート案内カードの例

適切なタイミングでの再案内(リマインド)

Webアンケートでは調査期間を1~2週間と設定し、その間に適切なタイミングでリマインドを行うことが重要です。対象者に忘れられないよう、以下のようなステップで再案内メール(リマインダー)を送ります。

初回案内後、数日間は回答を待つ

初回案内で多くの回答が集まりますが、その後は回収ペースが鈍化するのが一般的です。
回収が伸び悩む時期にリマインドを行うことが有効です。

STEP
1

1週間後に第1回目のリマインダーを配信

「もし、まだでしたら・・・」と丁寧に声をかけ、再び回答を促します。
この時点では回答するメリットを再度伝えることが重要です。

STEP
2

締め切り間近に第2回目のリマインダーを配信

締め切りの前日など調査終了間際に、改めて再案内を行います。その際、「〇分程度でご回答いただけます」と負担の少なさを強調することで、行動を後押しできます。

行動経済学の観点からも、「今ならすぐに行動できる」と思ってもらうことが効果的です。締め切りを強調するのではなく、「まだご回答いただけます」というポジティブなメッセージを伝えることで、回答者の心理的負担を軽減します。

STEP
3

回収率を高める工夫についてのまとめ

質の高いアンケートデータを得るためには、対象者が自分の意見が重要であると感じ、スムーズに回答できる仕組みを整えることが欠かせません。個別依頼やリマインドを効果的に活用しながら、Webアンケートの回収率を最大化します。

2. 具体的な改善策を引き出す:データを活かした課題特定

アンケートで得られたデータは、取り組むべき問題を発見し、優先順位を付けて改善策を導き出すために活用します。単なる集計ではなく、改善に直結する分析を行います。

顧客接点ごとの評価で問題を発見

アンケート設計の際、自社に関する総合満足度だけでなく、各顧客接点について評価してもらう構成にすることで、具体的な課題を特定できます。

総合満足度と顧客接点の関係性イメージ

たとえば、以下のような視点で、設問を設計します。

「当社のどの接点(例:商品、営業、サポート)の満足度を高めるべきか?」
「評価の低い接点を改善するにはどのような取り組みが必要か?」

こうした設問設計により、以下のような分析が可能になります。

顧客満足度を高めるために優先すべき接点を特定

人的・資金的リソースが限られる中、すべての課題に同時に取り組むのは現実的ではありません。分析によって課題の優先順位を明確にすることで、限られたリソースを効率的に活用できます。

自由回答を活かして具体的な改善案を導く

アンケートの自由回答には、回答者の率直な意見や具体的な改善提案が含まれています。自由回答を活用するには以下のプロセスが有効です。

改善志向の自由回答質問

自由回答質問では「何でもご自由にお書きください」ではなく、具体的な改善策を引き出せる聞き方をします。

具体的な改善策のヒントを引き出す自由回答質問の例

他にも、以下のような聞き方があります。

「〇〇の商品について改善を望む点があれば教えてください」
「当社サービスをもっと便利にするためのアイデアをお聞かせください」

コメントをカテゴリー別に分類し、課題ごとに整理

自由回答を顧客接点や接点内の詳細項目と結び付けて具体的な改善案とするためには、コメント内容を接点や項目に合わせてカテゴリー分類します。1件ずつ丁寧に読み解き、改善策が具体化するカテゴリーを設けることがポイントです。

たとえば、「問い合わせ対応は良いが、見積もりが遅い」という意見を「迅速性」や「プロセス改善」というカテゴリーに分類します。ここで得られたコメントは、優先的に取り組むべき具体策のヒントとなります。

3. 組織全体で情報を共有し、迅速に改善を進める

アンケート結果はデータ分析だけでなく、全社的に情報を共有し、改善を進めるための基盤として活用します。

結果のWeb化で共有を効率化

アンケート結果を専用のWebシステムで管理し、全社員がアクセスできる状態にすることで、迅速な改善につなげることができます。

たとえば:

  • 評価の低い接点や改善案を部門ごとに整理して共有
  • 自由回答を検索可能な形で一元化

することで、営業部門だけでなくバックオフィスや経営陣も顧客の声に触れやすくなり、部門間の連携が促進されます。

経営トップのリーダーシップが成功の鍵

全社で取り組むべき課題を明確化し、行動に移すには、経営トップのリーダーシップが不可欠です。経営陣が率先して問題解決に向けた指針を示し、必要なリソースを割り当てることで、組織全体の改善活動がスムーズに進みます。

まとめ:Webアンケートを効果的に活用するために

Webアンケートは正しい運用方法を採ることで、顧客や従業員などのステークホルダーとの信頼関係を築き、的確な問題解決につなげられる強力なツールです。
回収率を高める仕組み作り、取り組むべき問題を発見するためのデータ分析、そして組織全体での情報共有を意識しながらの運用を実践することで、アンケートの効果を最大限に引き出すことができます。

Webアンケートの成果を最大限に活用するための実践フロー。1. 目的設定・設計 ▶ 2. 協力依頼 ▶ 3. 再案内 ▶ 4. 分析 ▶ 5. 改善施策

当社では、Webアンケートを最大限に活用するサポートを行っています。アンケートを活用したいとお考えの方は、お気軽にご相談・お問い合わせください。

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