アンケートから導く顧客満足度と推奨行動の道筋

新規購入者アンケートと利用者満足度調査は、顧客獲得(新規集客)から口コミ(推奨行動)に至るまでの重要な道筋を描きます。

「なぜ選ばれたのか」「満足の要因は何か」を明らかにし、思わず薦めたくなる顧客体験を作るための活用方法をご紹介します。

購入決定と推奨行動に影響する二段階評価

よく「顧客は二度評価する」と言われます。これは商品・サービスを「買う」とき、そして実際に「使う」とき、それぞれに異なる観点から評価されることを指します。前者は顧客獲得(新規集客)を左右し、後者は口コミや推奨行動に影響を与える重要な評価です。

顧客獲得(新規集客)要因と推奨行動につながる満足要因は、常に一致するとは限りません。購入時は料金が決め手でも、購入後は使い勝手の良さが重視されていることもあるでしょう。
購入時アンケートと満足度調査を戦略的に組み合わせることで、新規集客(顧客獲得)から口コミ(推奨行動)までの道筋を構築できます。

購入時のアンケートと、利用者の満足度調査を戦略的にリンクして実施することで、集客→満足→推奨の道筋を通すことができる。

購入時アンケートで顧客獲得の決め手を探る

商品やサービスを選ぶ際の決め手について、通常のアンケートでは「○○○を選ぶときに重視することをすべて選んでください」と尋ね、その後「その中で最も重視するものを1つ選んでください」と質問します。

しかし、「すべて選ぶ」とマイナーな検討ポイントの割合が過大になりがちで、「1つ選ぶ」と料金の割合が高くなりがちです。この問題を解決するのが「獲得ドライバー質問」です。

購入時のアンケートに獲得ドライバー質問を組み込むことで、何を購入の決め手として、それをどの程度重視しているのか?顧客の選択行動を理解することができます。

獲得ドライバー質問のメリット

顧客満足度調査で明らかにする口コミ行動の要因

単に満足度を測るだけでなく、満足要因から推奨行動(口コミ)につながる要素を明らかにすることが、顧客満足度調査の重要な役割です。実際のユーザーからのフィードバックを分析することで、より深い顧客体験を理解し、次なる集客やリファーラル(推奨行動)へとつなげていくことが可能になります。

利用者の満足度調査から、集客に向けた活動が始まります。

業界事例:自動車教習所のアンケート活用

ここからは、特定の業界を例にとり、具体的な調査の内容を考えていきたいと思います。今回取り上げるのは自動車教習所です。

最初に自動車教習所を取り巻く環境を確認しておきましょう。

自動車教習所を取り巻く環境

警視庁の「 運転免許統計」によると、2023年における普通自動車第一種免許証の新規交付件数は1,082,726件、運転免許試験に合格した指定自動車教習所卒業生の数は1,045,208人です。新規交付件数の95%以上が指定自動車教習所の卒業生に対するものとなっていますので、ざっくりと新規交付件数≒卒業生数とみてよさそうです。

普通自動車第一種免許証の新規交付件数、指定自動車教習所とその卒業生数(種別=普通自動車第一種)の推移をみると、「 運転免許統計」でデータを確認できた1997年(平成4年)から直近の2023年(令和5年)にかけて、免許の新規交付件数は34%、卒業者数は39%、そして教習所数は15%、それぞれ減少しています。

普通自動車第一種免許証の年別新規交付件数、指定教習所数・卒業者数の推移

少子高齢化に加えて、若者のクルマ離れが喧伝される状況下、自動車教習所を取り巻く経営環境は厳しさを増しています。

そこでマーケティングの出番です。教習の質を高めるのはもちろんのこと、ホームページやSNSに力を入れたり、教習所内におしゃれなラウンジを設けたり、Wi-Fiを完備したりなど、自動車教習所は教習生の満足度の向上と新規の集客に力を入れています。

顧客体験アンケートでの効果検証

自動車教習所の場合、一般の企業における利用者の満足度調査に相当するのが卒業時のアンケートです。ここで、教習内容や施設など、全体の教習体験の評価を通じて効果検証を行います。

教習生の満足度を向上させ、リファーラル(推奨行動)につなげるため、アンケート分析で最も効果的な要因を特定します。そのためには、教習内容から施設や送迎バスなどのサービスまでの幅広い教習体験の評価を網羅する調査票を設計する必要があります。

以下、調査票の設計方法を具体的に説明します。
まずは大きなくくりとして「スタッフ」「教習プログラム」「教習環境」「料金」の4つの分野に分けて、それぞれの評価ポイントを考えていきます。・・・これが「大分類」になります。

評価項目をリストアップする

「スタッフ」に関して、教習生の評価に影響を与えそうな教習所スタッフとして「教習指導員(教官)」「事務スタッフ」「送迎バスの運転手」を想定します。・・・これが「中分類」になります。
そして、それぞれの評価ポイントを思いつくものからリストアップしていきます。・・・これが「小分類になります」

【スタッフ】

中分類小分類
教習指導員(教官)指導内容のわかりやすさ、教え方の丁寧さ、教習の進行状況の配慮、苦手な点や不明点のサポート、親しみやすさ、など
事務スタッフ説明のわかりやすさ、対応の速さ、応対の丁寧さ、トラブル時のサポート、親しみやすさ、など
送迎バスの運転手応対の丁寧さ、運転の丁寧さ、親しみやすさ、など

「教習プログラム」「教習環境」「料金」についても、同じように「中分類」を想定したうえで、「小分類」となる具体的な評価ポイントを思いつくままにリストアップしていきます。

【教習プログラム】

中分類小分類
学科教習学科試験に向けた知識の得やすさ、オンライン学科教習システムの使い勝手、オンライン学科教習の教材内容の質、学科試験対策アプリの使用効果、など
技能教習予約の取りやすさ、配車手続きのしやすさ、校内教習コースの広さ、路上教習コースの現実的な運転条件の再現度、1コマあたりの実際の運転時間の適切さ、など
検定検定実施日数の多さ、など
全般教習スケジュールの調整しやすさ、卒業までに要した期間の長さ、など

【教習環境】

中分類小分類
校舎や送迎バスなどの施設・設備・サービス通いやすさ、教習所内の清潔さ、教習車の清潔さ、ロビー、ラウンジなど教習所内の快適さ、無料Wi-Fiなどの提供サービスの利便性、コースや時間など送迎バスの使い勝手、営業時間・営業曜日、など


【料金】

中分類小分類
料金レベル基本料金のレベル、技能教習のキャンセル料のレベル、補習料金のレベル、再検定料金のレベル、キャンペーンや割引のお得度、など
支払方法利用できる支払方法の多さ、など

調査の全体像を構築=モデル化する

「大分類」ー「中分類」ー「小分類」の順に考えていくことで、具体的な評価項目の候補リストができたら、似通った項目を統合したり、教習生にわかりやすい表現にしたりして、評価項目リストを完成させます。このリストが調査票の設計図になります。

調査の全体像を以下のような図に表現することで、卒業時アンケートの役割が明確になり、スタッフ間の理解と共有が進みます。

そして、この設計図をもとに、スムースな流れを意識して設問を並べ、要所要所に自由回答をうまく組み込み、調査票を作成します。

卒業時アンケートの評価モデル

卒業時アンケートの分析では、教習生の満足度を高めるために、スタッフ、教習プログラムといった要素の中でどれが最も重要で、具体的にはどのようなポイントを改善していくことが有効なのかを特定します。特定された重要な小分類ー中分類ー大分類の要素/ポイントをつなぐと、具体的な評価ポイントから教習生の満足度や推奨行動への道筋が明確に浮かび上がります。

入校時アンケートでの効果検証

自動車教習所の場合、一般の企業における購入時アンケートに相当するのが入校時のアンケートです。このアンケートでは、免許を取得しようと思った「きっかけ」、自動車教習所について調べる際の「情報源」、通う自動車教習所を決める際の「重視項目」を明らかにすることが主目的になります。

評価項目をリストアップする

このうち「きっかけ」については、親などの周りからすすめられた(「勧奨」)とか、仕事で必要(「必要性」)などの理由が想定されます。まずは「勧奨」「必要性」などの分類軸のそれぞれについて具体的な理由を思いつくままにリストアップし、最終的な選択肢の数が10~15個程度におさまるように絞り込みます。

【きっかけ】

分類軸具体的な理由
勧奨親など家族に勧められた、友人に勧められた、友人に一緒に取ろうと誘われた、大学生協などの案内所で勧められた、会社で取るように言われた、など
必要性今の仕事・バイトで必要だから、子育てで必要だから、将来に備えて取っておこうと思ったから、運転できないと不便だから、など
利便性趣味・レジャーなどでドライブしたいから、免許証を身分証明書として使えるから、など
タイミング学生の間に取っておこうと思った、時間があるうちに取っておこうと思った、など
実利お得なキャンペーン・割引があったから、など
雰囲気自分の周りで免許を取る人が増えた、など

「情報源」についても、同じようにリストアップします。

【情報源】

分類軸具体的な情報
オウンドメディア教習所のホームページに掲載されている卒業生の声、その他教習所のホームページの情報、教習所の受付で聞いた説明、など
チラシ・ポスター(大学生協などに置いている)チラシやパンフレット、新聞折込のチラシ、街中で見かけたポスターなどの広告、駅や電車・バスの車内でみかけた広告、など
販促ツール街中で配られていた広告入りティッシュ、など
SNSSNS(X、LINEなど)、など
口コミ親など家族から聞いた情報、友人から聞いた情報、近所の人から聞いた情報、勤務先の人から聞いた情報、その他の人から聞いた情報、など
Web複数の教習所をまとめて掲載しているウェブサイトの情報、ウェブ広告、その他のウェブ上での情報、など

「きっかけ」や「情報源」については、業種・サービスを問わずに共通して利用できるものが多くあります。選択肢のリストアップや絞り込みに際しては、他業種の会社や自治体などが公表している調査結果も参考になるでしょう。

これに対して、「重視項目」については、業種・サービスに特化したもの、さらには会社に特化したものにすることが必要です。この集客の決め手を探る獲得ドライバー質問の選択肢づくりが調査の成否を左右するカギになると言っても過言ではありません。

具体的に「重視項目」の選択肢を考える際に、卒業時アンケートの設計図が役に立ちます。
卒業時アンケートでは、「スタッフ」「教習プログラム」「教習環境」「料金」の4つの側面に分類しました。このうち、「教習環境」「料金」については教習所のホームページやパンフレットを見比べて比較することができます。良し悪しについて大体の見当をつけることができるはずですので、入校時アンケートでも同じような選択肢を使うことができます。

ホームページやパンフレットには「スタッフ」や「教習プログラム」についての情報も掲載されていますが、どの教習所も良い事ばかりを並べています。入校前に教習プログラムの細かい仕様についてメリット/デメリットを理解することは難しいと思われるため、これらについては教習内容や評判から受ける印象をいくつかの観点に分けて質問するようにします。

【重視項目】

分類事項決め手
教習環境:立地通いやすいこと、送迎があること、など
教習環境:設備教習所の設備がよいこと、(外車など)魅力的な車種の教習車があること、など
料金教習料金が安いこと、お得なキャンペーン・割引があること、など
教習内容短期集中コースがあること、乗り放題など安心コースがあること、教習スケジュールを組みやすいこと、オンライン教習を利用できること、休日や夜間も営業していること、「普通車+二輪」などの同時教習ができること、など
評判指定教習所であること、卒業生から評判がよいこと、など
その他友人と一緒に通えること、など

調査で描く消費行動=カスタマー・ジャーニー

「きっかけ」ー「情報源」ー「重視項目」を順に並べると、「スイッチが入る」ー「知る・調べる」ー「選ぶ・決める」という消費行動のステップを表しています。

入校時アンケートで描くカスタマージャーニー

上の図の右側には、さらに「利用する」ー「口コミする」が続きます。

入校時アンケートと卒業時アンケートとを戦略的にリンクすることによって、教習生のカスタマー・ジャーニー全体を網羅した、集客→満足→推奨の道筋を描くことができます。

アンケート分析で集客・推奨行動の重要要素を特定

新規購入時アンケートや満足度調査を通して集客や推奨行動の決め手を明らかにすることで、より効果的なマーケティング施策につなげることが可能です。

それぞれの調査から得られたデータを分析すると、集客の決め手や口コミにつながる高い満足度の要因とその重要度を特定することができます。そして、それらを比べてみることで、集客につながる重要な要素が見えてきます。

下の図の縦軸は購入決め手の重視度合いを、横軸は満足要因の重要度を表しています。図の右上ゾーンは、購入の決め手としても、満足の要因としても重要度が高い要素であり、競合も力を入れているはずです。右下ゾーンに自社の強みがあれば、効果的なコミュニケーション活動を通じて、差別化ポイントに育てていくことが期待できます。

改善マトリックス

マーケティングの理想は、販売を不要にすることである

「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」は、経営の神様と言われるドラッカーの言葉で、その意味するところは「顧客を知って、顧客ニーズにあった商品・サービスを提供することで、おのずと売れるようになる」ということです。

ケーススタディとしてご覧いただいた自動車教習所の業界でも、価格競争でしのぎを削るところがある一方で、教習生のニーズにこたえて差別化し、口コミ効果で集客増に結びつけているところもあります。

アンケートを戦略的に実施して選ばれる理由、薦めたくなる理由を明確にし、他との差別化ポイントとしてアピールすることで、顧客体験が生み出す満足を集客へと効果的につなげていくことができます。

顧客関係の基盤を構築し、集客から満足、そして推奨への道筋を描くアンケートの実施をご検討でしたら、当社の無料相談サービスをご利用ください。
経験豊富なスタッフが、お客様の目的に合わせた効果的な調査設計と実施方法をご提案し、調査の成果を引き出すために丁寧にサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。

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