あるショッピングセンターからの相談です。
ターゲットとして想定している顧客層の来店が少ない。
利用客や近隣住民が当施設をどのように認知・理解しているのか確認して、今後のブランド発信の方向性を探りたい。
オープン時に「こういうお店にしたい」といったコンセプトや「こういうお客さんに来てほしい」といったターゲットを設定したものの、実際には想定と異なる客層が中心で売上も伸び悩んでいる、というケースです。
お店のコンセプト、ブランドメッセージが正しく伝わっておらず、自社が打ち出したいイメージと消費者が抱くブランド像との間にギャップがあると考えられます。
こうした場合の対応策としては、
- ターゲットに効果的にブランドメッセージが届くよう訴求内容やコミュニケーション方法を変える
- 現状イメージで競合他社に対する優位性があれば、その強みを強化するリブランディングを行う
などが考えられますが、その判断材料として、現時点で消費者が自社や競合他社をどのように認知しているのかを知り、市場における自社のイメージポジショニングを把握する必要があります。
ブランド調査によってわかること
ブランド調査は、
- 消費者は自社や競合他社の存在をどの程度知っているのか?
- 自社や競合他社に対して、どのようなイメージを抱いているのか?
- それぞれのイメージは、どのようなところから形成されているのか?
- 自社をどの程度利用している/利用したいと思っているのか?
- どのようなメディアを情報源としているのか?
等について、以下の質問項目から明らかにします。
<ブランド調査の主な質問項目>
ブランド認知 | □純粋想起 □助成想起 |
ブランドイメージ | □ブランド連想 □ブランドイメージ(10~20項目) |
ブランド選好度 | □好意度・ファン度・選好度・推奨意向 |
利用状況など | □利用経験/利用頻度 □今後の利用意向/その理由 □利用検討に際しての情報源 □認知の情報源(広告などの接触状況) など |
今回は、ブランド調査の中心となる「ブランド認知:純粋想起」「ブランドイメージ:ブランド連想」の質問方法について簡単にご紹介します。
購買に結びつくブランド認知度:純粋想起
ブランド調査の質問は、「純粋想起」「助成想起」の順番で認知度を聞くことからはじめるのが一般的です。
例えば商業施設のアンケートの場合、まず、
Q. あなたがご存じの「ショッピングセンター」の名前をすべて教えてください。
と、何の手がかりも与えずに知っている名前を答えてもらいます。⇒純粋想起
続いて、自社や競合の施設名がいくつか書かれたリストを示して、
Q. 以下のリストの中で、あなたがご存じの「ショッピングセンター」をすべて教えてください。
と、知っているものをすべて答えてもらいます。⇒助成想起
ブランド力としての認知度は、助成想起で単に名前を知られているだけでなく、純粋想起ですぐに自社の名前を思い浮かべてもらえるかどうかが重要です。
純粋想起で名前を挙げてもらえるのは、消費者の心の中にそのブランドが強く刻み込まれているからであり、自発的な来店・購買につながると考えられます。
自社イメージの強みを見える化する:ブランド連想
純粋想起率を高めるためには、商品やサービス、店頭での接客、広告などとの接触を通じて、消費者一人ひとりの心の中に幅広くて深いブランド連想、すなわちブランドに関する知識、イメージ、感情を形成していく必要があります。
ブランド連想の聞き方
消費者が自社に対してどのようなブランド連想を抱いているかは、
Q. 「〇〇〇」と聞いて、あなたはどのようなことをイメージしますか。
と自由回答形式で質問すればよいのですが、さらに
Q. 「〇〇〇」と聞いて、あなたはどのようなことをイメージしますか。
以下の「 」の中に言葉をあてはめてお書きください。
○○○といえば「 」。
なぜなら「 」だから。
といった具合に、イメージの源泉まで教えてもらうと、あるイメージを強めたい場合にどのように訴求すればよいかといったコミュニケーション展開にも役立てることができます。
ブランド連想の分析
ブランド・マネジメントで高名なケラー教授が指摘するように、強いブランドを支えるのは、
- 強く(=想起率が高い)
- 好ましく(=購買につながる)
- ユニークな(=他社と差別化できる)
ブランド連想です。
ブランド連想は、どんなカテゴリーの連想が多いかだけではなく、購買につながる連想がどれだけあるか、その連想は他社にはない(少ない)独自性があるかといった分析視点が重要です。
購買につながる連想は、購買意向の有無、あるいは選好度(ブランドロイヤルティ)が高い人=事業の継続を支える支持者である「ブランドのファン」とそれ以外に分けて連想内容を比較するなどして見出していきます。
その連想がユニークかどうかは、他社の連想内容やイメージ評価と比べればわかります。
質的な探索なくしてイメージの全容は見えてきませんが、量的な検証なくして市場における自社イメージのポジションを知ることはできません。
ブランド連想で得られた多種多様な自由回答は、類似した内容を同じイメージカテゴリーに分類してコード化(アフターコーディング)するという手間をかけることにより、量的データとして集計・分析することが可能になります。
ブランド調査は、消費者の心の中にあるブランドをなんとか言語化・視覚化しようというのですから、手間のかかる泥臭い作業も必要ですし、質的・量的データの両面にわたる分析スキルとセンスが求められます。
ブランド調査について、以下のページでさらに詳しく説明しています。
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