東京2020オリンピック・パラリンピックの招致にあたり、東京都はその経済波及効果を約3兆円と発表しています。
大規模なイベントや開発事業が行われる際に「経済効果」という言葉をよく耳にしますが、

発表主体によって金額に大きな違いがある場合も多く、いったいどのようなロジックで試算される金額なのか、疑問をもたれている方も多いかと思います。

東京都の説明によると、

・競技施設や選手村の建設投資
・大会運営費
・その他(観客の交通費・宿泊代、関連グッズや家電などの消費支出)

といったオリンピック開催に伴う需要増加額(約1兆2,200億円)から、産業連関表を利用して経済波及効果を算出した、とされています。

産業連関表とは、産業間相互の取引関係を一覧で把握・分析できる表で、国や都道府県単位で5年ごとに作成されています。
下図のような「取引基本表」をもとに計算すると「投入係数表」「逆行列係数表」といった小難しい名前の数表が導き出されるのですが、「逆行列係数表」を用いると、ある産業が他の産業にどれだけ生産の波及効果を及ぼすのかが簡単に計算できるようになっています。

産業連関表の構造

ただし、実際の経済効果にはその時々の景気動向なども複雑に絡み合ってくるでしょうし、そもそも分析の前提となる対象範囲や需要増加額の推計が適切でなければ“絵に描いた餅”で意味のない金額が算出されるだけになってしまいます。
とはいえ、発表数字を鵜呑みにせず、きちんと試算の根拠を確認するのであれば、政策・経営判断の目安としても十分活用できるでしょう。

「逆行列係数表」を含めた産業連関表は総務省や各自治体で公表されており、ホームページ上で経済波及効果の簡易分析ツールを提供しているところも少なくありません。
もしご興味があれば、一度試してみてはいかがでしょうか。

○総務省「経済波及効果を計算してみましょう」
http://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/data/io/hakyu.htm

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