アンケート結果を活用するには、適切な集計方法が重要です。
本コラムでは、単純集計やクロス集計の基本から、より高度な分析手法までを解説し、データの活用方法をわかりやすく説明します。
アンケート集計とは?
1. アンケート集計の目的と意義
アンケート集計とは、収集した回答データを整理し、数値化することで全体の傾向を明確にするプロセスです。生データをそのまま見ても、どの項目が多いのか、どの傾向が強いのかを直感的に理解することは困難です。そのため、集計を行うことで、意思決定のためのデータをわかりやすく整理することが重要になります。
[アンケート集計の主な目的]
- データを整理・可視化し、全体の傾向を把握する
- 意思決定の材料を提供し、戦略策定に役立てる
- 分析の基礎を作ることで、より詳細なインサイトを得る準備をする
2. アンケート集計とデータ分析の違い
アンケートのデータを扱う際、「集計」と「分析」は混同されがちですが、それぞれの目的と手法は異なります。
目的 | 手法 | 例 | |
---|---|---|---|
アンケート集計 | データの整理・可視化 | 単純集計、クロス集計 | 満足度の割合を求める |
データ分析 | データの解釈・意味づけ | 相関分析、回帰分析、因子分析など | 満足度が高い理由を特定する |
[ポイント]
- 集計はデータを整理し、視覚的にわかりやすくするためのステップ
- 分析はデータの背景や意味を掘り下げ、戦略に活かすためのプロセス
- まずは集計を適切に行い、そこから分析を深めることが重要
3. アンケート集計の主な種類
アンケートの集計方法には、目的に応じた複数の集計方法があります。
🔷 単純集計 (最も基本的な集計方法)
- 各設問の回答数や割合を求める
例:「満足度が高い人は75%」
🔷 クロス集計 (属性ごとの比較)
- 性別×満足度など、2つ以上の変数を組み合わせて集計
例:「男性の満足度は80%、女性の満足度は60%」
🔷 自由回答分析 (テキストデータの整理)
- 回答内容をいくつかのカテゴリーに分類し、傾向を分析
例:「満足度が高い理由として最も多かったのは『デザインの良さ』」
この章のまとめ
- アンケート集計とは、回答データを整理し、数値やグラフにまとめるプロセス
- 集計はデータの整理、分析はデータの解釈を目的とする
- 主な集計方法には、「単純集計」「クロス集計」「自由回答分析」などがある
アンケートデータの前処理
アンケートで収集したデータは、そのままでは正確な分析ができないことが多く、適切な「前処理」が必要になります。
本章では、データの信頼性を確保するために重要な前処理のステップを詳しく解説します。
1. なぜアンケートデータの前処理が必要なのか?
アンケートデータには、誤入力や無回答などの問題が含まれていることがあり、適切なデータクリーニングが不可欠です。データの前処理を行わないと、次のような問題が発生する可能性があります。
[前処理をしないと起こる問題]
- 誤ったデータが分析結果を歪める
- 欠損データが多いと、分析の信頼性が低下する
- 不適切な回答が集計結果を誤解させる
たとえば、「20歳」の回答者が「30年以上勤務」と答えている場合、明らかな矛盾が生じます。こうしたデータの問題を放置すると、分析結果が正確でなくなるため、適切なデータクリーニングが必須です。
2. アンケートデータの前処理の主なステップ
アンケートデータの前処理には、以下のような手順があります。
① データのフォーマット統一
アンケートの回答形式がバラバラだと、集計時にエラーが発生することがあります。フォーマットを統一することで、正確なデータ処理が可能になります。
[統一すべきポイント]
- 数値データの統一:「1,000円」→「1000円」
- 日付や時間の統一:「3年」「6か月」→「○か月」
- 回答形式の統一:「はい/いいえ」「YES/NO」 → 「1/0」などに統一する
② 無効なデータの処理
アンケートの回答には、意図的かどうかにかかわらず、誤ったデータが含まれていることがあります。これらを適切に処理しないと、正確な集計や分析が難しくなります。
[無効なデータの主な種類と対処法]
無効なデータの種類 | 例 | 対策 |
---|---|---|
無回答(欠損値) | 重要な質問が無回答 | 無回答を集計対象から除外 or 平均値で置換 |
論理矛盾 | 「20代」と回答しているが「30年以上勤務」と回答 | ルールに基づいてデータを修正 or 除外 |
外れ値 | 年収が「10億円」など明らかに異常な値 | 統計的手法で処理(中央値へ置換) or 除外 |
不正が疑われる回答 | 全質問に「1」を入力している | 該当ケースを除外 |
特に外れ値の処理には注意が必要です。統計的な手法(Zスコアなど)を用いて適切に判断することが推奨されます。
③ 論理矛盾のチェック
アンケートでは、回答内容に矛盾があるケースが発生することがあります。これらをチェックし、適切に処理することでデータの品質を向上させます。
[チェックすべきポイント]
- 年齢と経験年数:「20歳」の人が「30年の職務経験」と回答している → 誤入力の可能性
- 性別と特定の設問:「男性」と回答した人が「妊娠経験がある」と回答している → 誤回答の可能性
- 多重選択の矛盾:「毎日運動する」と回答しながら「まったく運動しない」とも回答している → 回答の矛盾
論理矛盾が見つかった場合、全体の精度を維持するために該当データを除外するか、特定のルール(恣意的ではないことが重要です)に基づいて補正する必要があります。
この章のまとめ
- アンケートデータの前処理は、正確な集計・分析のために不可欠
- フォーマット統一・無効データ処理・論理矛盾のチェックを徹底することで、データの信頼性が向上
- データの質を高めることで、より正確で有益な分析結果を得ることができる
アンケート集計の3つの手法
アンケートデータの前処理が完了したら、次に「集計」を行います。集計は、アンケートの回答結果を整理し、傾向を明らかにする作業です。
本章では、単純集計・クロス集計・自由回答分析 の3つの基本的な手法について詳しく解説します。
1. アンケート集計の基本手法
アンケートの集計方法には、目的やデータの特性に応じて以下の3つの主要な手法があります。
- 単純集計 (目的例:全体的な傾向をつかむ)
- クロス集計 (目的例:ターゲットごとの違いを見つける)
- 自由回答分析 (目的例:数値では見えない顧客の意見や感情を探る)
これらの手法を適切に使い分けることで、データの全体像を把握し、意思決定に役立つ洞察を得ることができます。
2. 単純集計:データの基本的な整理手法
単純集計とは?
単純集計は、各設問に対する回答数や割合を算出する最も基本的な集計方法です。全体の傾向を素早く把握するのに適しています。
[例:新商品の購入意向についての単純集計]
ある食品メーカーが新商品(コンセプト)の購入意向を調査するために、15~69歳の男女、計600人にアンケートを実施しました。
Q. あなたは〇〇〇をどの程度購入したいと思いますか。(1つだけ)
購入したくない | あまり購入したくない | どちらともいえない | やや 購入したい | 購入したい |
1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
という設問について、単純集計の結果は以下の通りでした。

この結果から、新商品を「購入したい/やや購入したい」と答えた人の割合は全体の半数近くだったことがわかります。
単純集計を活用することで、アンケートの全体的な傾向を迅速につかむことができます。さらに、回答者の背景情報(性別や年代など)に偏りがないかの確認も大切です。
[単純集計の活用ポイント]
- 回答結果の全体的な傾向を把握する
- 性別や年代など、回答者の属性を確認する
- 単独での分析では不十分な場合が多いため、クロス集計と組み合わせるのが効果的
3. クロス集計:違いを明確にする
クロス集計とは?
単純集計だけでは十分な情報を引き出せません。たとえば:
- 性別・年代別などの属性で購入意向が高いターゲット層は?
- 購入意向が高い(低い)人の評価理由は何か?
- ターゲット層がよく参考にするメディア・情報源は何か?
こうした分析を実現するのが「クロス集計」です。
クロス集計とは、2つ以上の属性や条件を組み合わせて分析する手法です。
単純集計では見えなかった、性別・年齢別・地域別などの違いを明確にし、ターゲットごとの傾向を把握するのに役立ちます。
クロス集計の活用例
- 「性別 × 満足度」
例:「男性の満足度は80%、女性は60%」などの違いを分析 - 「購入意向 × 年代」
例:「30代の購入意向が最も高い」などの傾向を把握 - 「利用頻度 × 商品カテゴリー」
例:「A商品はリピーターが多い」などの関係性を発見
🔷 BtoB調査でのクロス集計の活用
記名調査で実施することが多いBtoBの顧客満足度調査(CS調査)では、調査データに顧客情報を紐づけてクロス集計を行い、非常に有用な情報を得ることができます。
BtoB企業向けにCS調査におけるクロス集計の具体的な活用法や分析のポイントについて、以下のコラムで詳しく解説しています。
🔍 BtoBにおけるクロス集計の活用法|データ分析で顧客理解を深め、ビジネスに活かす
4. 自由回答分析
自由記述式質問に対する回答=自由回答についても、アフターコーディングを行うことで集計可能です。これにより、「どの意見がどのくらい多いか?」が正確にわかります。
[例:新商品の改善点についての自由回答の集計結果とその解釈]
- 「価格が高い」という意見が最も多く、価格調整の検討が必要と考えられる
- 「デザイン」に関する意見も20%あり、改善の優先度が高い要素と見受けられる
カテゴリー | 回答数 | 割合 (%) |
---|---|---|
価格が高い | 150 | 30% |
デザインが良くない | 100 | 20% |
使いやすさが微妙 | 75 | 15% |
機能が足りない | 50 | 10% |
その他 | 25 | 5% |
[自由回答分析の基本手法]
- アフターコーディング:回答をカテゴリーに分類し、数値化
- テキストマイニング:キーワードの頻度を分析
- 感情分析 (ポジティブ/ネガティブの判定)
🔷 より詳しく知りたい方へ
自由回答の分析手法について詳しく知りたい方は、以下のコラムをご参照ください。
🔍 自由回答(フリーアンサー)の最適な活用法と分析テクニック
この章のまとめ
- 単純集計で全体傾向を把握し、クロス集計で詳細分析を行い、自由回答分析で定性情報を補完する
- ターゲットごとの違いや、施策の優先順位を明確にするために、適切な集計手法を選ぶことが重要
無料ツール(Googleフォームなど)を使ったアンケートのデータ集計
無料のアンケートツール(Googleフォームなど)は、手軽にアンケートを作成・実施できるメリットがあります。しかし、Excelなどの表計算ソフトや集計ソフトを使って、少し手の込んだ集計・分析をしようとすると、データの形式に問題を感じるケースが多く見られます。
[無料ツールの問題]
- 複雑なクロス集計ができない
- 自由回答分析がしづらい
たとえば、Googleフォームでは、回答データをCSV形式でダウンロードすることができますが、そのままのデータでは、思うような集計が難しいことが多々あり、集計用に回答データを変換する必要があります。
[データ変換のポイント]
- 「満足」「やや満足」などテキストとして記録されている回答結果を数値コードに変換する
- 「その他」の具体的な記載内容を含めて、1つのセルにまとまっている複数回答のデータを1つずつの列にわける
🔷 より詳しく知りたい方へ
無料ツールで実施したアンケートのデータ変換について詳しく知りたい方は、以下のコラムをご参照ください。
🔍 無料のWebアンケートツール、そのデータ本当に活用できていますか?
この章のまとめ
- 無料ツールは手軽だが、思うような集計が難しいことがある
- 回答結果の数値コード化や集計しやすいデータ形式への変換が必要
ウェイトバック集計の実施方法:調査結果の精度を高める手法
アンケートデータの集計・分析において、回答者の属性が市場全体の構成比と異なる場合があります。このようなズレを補正し、より現実に即した分析を行うために活用するのが「ウェイトバック集計」です。
本章では、ウェイトバック集計の基本概念や活用方法について解説します。
1. ウェイトバック集計とは?
ウェイトバック集計とは、サンプル構成の偏りを補正し、実際の市場構成比に近づけるための手法です。回答者の属性に偏りがある場合、この手法を用いることで、より正確な調査結果を得ることができます。
[ウェイトバック集計が必要になる主なケース]
ケース | 問題点 | ウェイトバック集計の目的 |
---|---|---|
年代別の回答バランスが偏っている | 例:20代が過剰に多く、40代以上が少ない | 実際の市場構成比に合わせる |
地域ごとの回収数に差がある | 例:都市部の回答が多く、地方の回答が少ない | 全国の市場動向を正しく反映する |
男性・女性の回答割合が実際の顧客と異なる | 例:女性の回答が7割、実際の顧客は男女比5:5 | 顧客層に即した意見の反映 |
[ポイント]
- ウェイトバック集計は、特定の層の意見が過大評価・過小評価されるのを防ぐために行う
- サンプル構成の偏りを調整することで、より実態に即した分析が可能になる
2. ウェイトバック集計の考え方と計算方法
ウェイトバック集計では、各回答データに「重み(ウェイト)」を掛けることで、母集団(市場全体)の構成比に合わせる ことができます。
[簡単なウェイト計算の例]
- 実際の市場構成比 → 「20代:30% ー 30代:40% ー 40代以上:30%」
- アンケート回答者の構成比 → 「20代:50% ー 30代:30% ー 40代以上:20%」
この場合、各層のウェイト値(補正係数)は「母集団比率 ÷ アンケートの回答者比率」で求められます。
年代 | 母集団比率(%) | 回答者比率(%) | ウェイト値 (補正係数) |
---|---|---|---|
20代 | 30% | 50% | 0.6 (影響を小さく) |
30代 | 40% | 30% | 1.33 (影響を大きく) |
40代以上 | 30% | 20% | 1.5 (影響を大きく) |
このように、回答データに補正係数を掛けることで、実際の市場構成比に近づけることが可能になります。
3. ウェイトバック集計を活用すべき場面
以下のようなケースでは、ウェイトバック集計を活用するとより精度の高い分析が可能です。
- ターゲット市場の正確な動向を把握したいとき
- 属性別の回答が偏り、調査結果が歪むリスクがあるとき
- アンケートの回収数が十分でない層があり、正確な分析が困難なとき
4. ウェイトバック集計の注意点
ウェイトバックを適用する際には、以下の点に注意が必要です。
[注意点]
- ウェイト値が極端に大きくなりすぎないようにする(最大でも2.0程度が望ましい)
→ 少数回答の影響を過大にしてしまうと、データの信頼性が低下するおそれがある - 母集団のデータが正確であることを確認する
→ 間違った母集団比率をもとにウェイトバックすると、逆に調査結果が歪んでしまう
ウェイトバック集計に際しては、母集団情報の正確性を十分に確認することが重要です。
この章のまとめ
- ウェイトバック集計は、サンプルの偏りを補正し、より正確な調査結果を得るための手法
- 「年代・性別・地域」など、市場の構成比と回答データのズレを調整するのに有効
- 適用時は、ウェイト値の極端な偏りに注意し、母集団情報の正確性を確認することが重要
アンケート結果の可視化:データを直感的に理解する手法
アンケートの集計結果を適切にグラフ化することで、データの傾向を直感的に把握しやすくなります。
本章では、データの可視化が重要な理由と、適切なグラフの選び方について解説します。
1. なぜアンケート結果の可視化が重要なのか?
可視化によって、アンケートデータが「単なる数値の羅列」から「意思決定に役立つ情報」へと変わります。
[可視化のメリット]
- データの傾向が一目でわかる (例:満足度の高低を簡単に把握できる)
- 比較や違いが明確になる (例:性別・年代別の満足度の違いを示す)
- 重要なポイントを強調できる (例:「購入意欲が高い層は30代女性に多い」など)
特に、レポート作成やプレゼンテーションでは、視覚的な表現が欠かせません。
2. アンケート結果の可視化に適したグラフの種類
アンケートの集計結果は、一見すると数字の羅列に見えがちですが、適切なグラフを選ぶことで、データの持つ意味や関連性を直感的に理解しやすくなります。
ただし、グラフの選び方を誤ると、誤解を招く可能性もあるため注意が必要です。
[適切なグラフの選び方]
以下の基準で、伝えたい内容やデータの種類に応じたグラフを選びます。
データの種類 | 適したグラフ | 活用例 |
---|---|---|
単一回答(SA)データ | 円グラフ / 棒グラフ / 帯グラフ | 性別の満足度割合 |
複数回答(MA)データ | 棒グラフ / 積み上げ棒グラフ | 商品の購入理由 |
時系列データ | 折れ線グラフ | 半年間の満足度推移 |
相関関係の分析 | 散布図 / バブルチャート | 価格と満足度の関係 |

3. 各グラフの特徴と活用ポイント
ここでは、アンケートの回答形式や比較項目・データ要素数の違いなどによるオーソドックスなグラフの種類の使い分けを紹介します。
単一回答(SA)データのグラフ選択
性別・年代やスケール(段階)評価などSAデータの場合は足し上げると100%になりますので、100%積み上げ棒グラフ(縦・横)がよく使われます。
全体ベースのみの場合などは円グラフを使うこともあります。
しかし、データ要素が多いとそれぞれの(角度の)大きさの違いがわかりにくくなってしまいますので注意が必要です。円グラフを使うのは要素の数が5~6個程度までを目安にするとよいでしょう。
複数回答(MA)データのグラフ選択
MAデータは足し上げて100%になりませんので、100%積み上げ棒グラフは使えません。全体ベースのみの場合や比較項目が少ない場合は棒グラフを使うのが一般的です。
比較項目が多い場合は積み上げ棒グラフを使うこともありますが、要素数が多すぎると見にくくなります。見にくいなと感じるようであれば、区分線を入れたり、データラベルの数を減らしたり、といった工夫をして見やすいグラフにすることが必要です。

他に、折れ線グラフは時系列の変化を示すのに適していますが、棒グラフよりも細い特徴を活かして、より多くの項目、要素を1つのグラフに表示したいときにも活用できます。
散布図は数表を眺めているだけではかりにくい、2つの要素の関係(相関)を2軸マップに表します。

なお、3つ以上の要素の関係を可視化したい場合、散布図のプロットの大きさを変えるバブルチャートが使えます。
以上の基本を踏まえた上で、よりわかりやすく、インパクトがあると思えば、応用編として上記の組み合わせグラフやオリジナルチャートを作成することがあります。

この章のまとめ
- アンケート結果の可視化は、データの傾向を直感的に理解しやすくするために重要
- データの種類や伝えたい内容に応じて、適切なグラフを選択することが必要
- 誤ったグラフの選び方は誤解を招く可能性があるため、可視化の目的を明確にすることが重要
データの有意性を検証する方法:信頼できる分析のために
アンケートの集計結果を見た際、数値の変化や違いが「本当に意味のあるもの」なのか、それとも「単なる偶然の変動」なのかを見極めることが重要です。
本章では、有意差検定の基本概念と適用方法について解説します。
1. なぜ有意差検定が必要なのか?
数値の変化を見て、単なる誤差なのか、それとも重要な変化なのかを正しく判断するためには、「統計的に意味のある差(有意差)」を確認する必要があります。
[有意差がないのに、大騒ぎしてしまうリスクの例]
アンケートの集計結果 | → | 経営判断 |
---|---|---|
満足度が80%だったのが75%に低下した | → | 顧客満足度が下がった! 早急に新しい方針を立てて実行しよう! |
しかし、この5%の低下は単なる誤差かもしれません。「誤差の範囲内の変化」を過大評価すると、無駄な施策や誤った経営判断につながる可能性があります。有意差検定を行うことで、変化が偶然の誤差なのか、本当に意味のある差なのかを数値的に判断できます。
2. 有意差検定の基本的な考え方
有意差検定では、「ある変化が統計的に意味があるかどうか」を確率的に判断します。
[有意差検定のポイント]
- データの違いが「偶然の誤差」なのか、それとも「意味のある差」なのかを見極めるための方法
- 有意差があると判断される場合のみ、その変化や違いを「重要なもの」として扱うべき
たとえば、顧客満足度が前年比で3%低下したとしても、統計的に有意でなければ、その差に意味はない可能性があります。
3. どんなときに有意差検定が必要か?
有意差検定を行うべき場面は、主に以下のようなケースです。
- 時系列データの変化を分析する
例:「前年より満足度が上がったと言えるのか?」 - グループ間の違いを比較する
例:「男性と女性で購入意欲に違いがあるのか?」 - 施策の効果を検証する
例:「広告を見た人と見ていない人で、行動に差が出たか?」
有意差検定を行わずにデータの違いを判断すると、誤った結論を導いてしまう可能性があります。
4. 有意差検定を行う際の注意点
- サンプルサイズが小さいと、有意差が出にくい
→「最低でもn=30以上、できればn=100以上」のデータがあるのが望ましい。 - 有意差があったとしても、それだけで「重要」とは限らない
→統計的に有意でも、実務上の影響が小さければ、ビジネス的に意味のある差とは限らない。
🔷 より詳しく知りたい方へ
データの信頼性やサンプルサイズについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご参照ください。
🔍 サンプルサイズ(人数)はどうやって決める?【便利な計算ツールもご紹介】
この章のまとめ
- 有意差検定は、データの違いが偶然か意味のある差かを判断するために不可欠
- サンプルサイズが十分でないと、有意差検定の結果が信頼できない場合がある
- 統計的に有意な結果でも、ビジネス上の意味があるかどうかを考慮することが重要
高度なデータ分析の概要
単純集計やクロス集計だけでは、アンケートデータの傾向を把握することはできても、「なぜこの結果になったのか?」という深い洞察を得ることが難しい場合があります。
たとえば、
- 満足度が高い人と低い人の違いは?
- 購買意欲に影響を与える要因は?
こうした問いに答えるためには、「多変量解析」と呼ばれる高度な分析手法が有効です。
1. 多変量解析とは?
多変量解析は、複数の要因が関係するデータの相関やパターンを明らかにする分析手法です。単純集計やクロス集計では見えにくい「データ同士の関連性」 を発見し、より実用的なインサイトを得ることができます。
[多変量解析が必要になるケース]
- 満足度向上のために、どの要素が重要かを特定したい
- 顧客をグループ分けし、それぞれの特徴を分析したい
- ブランドや商品イメージのポジショニングを分析したい
多変量解析を活用することで、データの相関関係や潜在的な構造を明らかにし、より効果的なマーケティング戦略や改善施策を立案できます。
[代表的な多変量解析手法と活用例]
分析手法 | 主な用途 | 活用例 |
---|---|---|
重回帰分析 | 影響を与える要因を特定 | 購買意欲に影響する要素は何か? |
因子分析 | 多数の変数を要因ごとに整理 | 顧客の選択基準を分析 |
クラスター分析 | 顧客を似たグループに分類 | 満足度が高い人と低い人の特性の違い |
コレスポンデンス分析 | ブランドや商品イメージの分析 | 競合ブランドと自社のポジションの違い |
3. 多変量解析の活用事例
① 重回帰分析 (購買意欲に影響を与える要素を特定)
- 「価格」「品質」「ブランドイメージ」など、どの要素が購買意欲に最も強く影響しているのかを数値化
例:施策立案時に、重点的に強化すべきポイントを明確にする
② 因子分析 (多数の変数を要因ごとに整理)
- 顧客満足度の調査結果を分析し、「価格」「デザイン」「利便性」などの因子ごとに整理
例:どの因子が顧客の満足度を高める上で重要なのかを可視化
③ クラスター分析 (顧客のグループ分類)
- 似た特徴を持つ顧客をグループ化し、それぞれに最適なマーケティング施策を立案
例:「価格重視層」「ブランド志向層」「機能重視層」などのセグメントを抽出
④ コレスポンデンス分析 (ブランドイメージのポジショニング分析)
- 自社ブランドと競合ブランドのイメージの違いをマッピングし、強みや課題を特定
例:「高級感」「コストパフォーマンス」「デザイン性」などの軸でブランドの立ち位置を分析
4. 多変量解析を活用する際の注意点
[データの質を確保する]
- 欠損データやノイズの影響を最小限に抑えるため、前処理を丁寧に行う
- サンプルサイズが十分でないと、正確な分析が難しくなる (目安:n=100以上)
[適切な手法を選択する]
- 分析の目的に応じて、適切な多変量解析手法を選ぶことが重要
- 無理に複雑な分析を行うより、適切な手法で確実なインサイトを得ることを優先
🔷 より詳しく知りたい方へ
それぞれの多変量解析手法について詳しく知りたい方は、以下のコラムをご参照ください。
🔍 アンケートの分析で使える多変量解析手法~重回帰分析
🔍 アンケートの分析で使える多変量解析手法〜因子分析
🔍 アンケートの分析で使える多変量解析手法〜クラスター分析
🔍 アンケートの分析で使える多変量解析手法〜コレスポンデンス分析
この章のまとめ
- 多変量解析は、単純集計・クロス集計では見えない「データ同士の関係性」を明らかにする手法
- 重回帰分析・因子分析・クラスター分析・コレスポンデンス分析など、目的に応じた手法を活用する
- データの質を確保し、適切な手法を選択することで、より精度の高い分析が可能になる
アンケート集計・分析を効率化する方法
1. アンケート集計・分析のよくある問題
アンケートの集計や分析を進める中で、以下のような問題に直面することはないでしょうか?
[作業負担が大きい]
- 回答データの前処理や集計に時間がかかる
- 何度も同じ集計を繰り返すのが面倒
[データの信頼性や解釈に迷う]
- この集計方法で正しいのか?
- クロス集計をしたものの、どう解釈すればよいのかわからない
- 回収数が少ないが、どの程度参考にしてよいのか?
[適切な分析手法や活用方法がわからない]
- 集計して終わりになってしまい、具体的な施策につながらない
- 高度な分析をしたいが、どの手法を選べばいいのかわからない
- 自由回答の量が多すぎて、どのように整理すればよいのかわからない
こうした問題を解決する方法の一つとして、専門家のサポートを活用するという選択肢があります。
2. データ活用を推進する専門サポート
🔷 作業負担を軽減し、スムーズに集計を進める
- 回答データの前処理・クリーニングを効率化し、正確な集計が可能に
- 繰り返し行う集計作業を自動化し、時間を短縮
🔷 適切な手法を用いた正確な分析
- クロス集計・有意差検定・多変量解析など、専門的な分析手法を活用
- データを活用し、戦略的な意思決定をサポート
🔷 自由回答の活用を強化
- テキスト分析を行い、顧客の「本当の声」を引き出す
- 自由回答の内容を分類し、数値データだけでは見えないインサイトを発見
🔷 視覚的にかりやすいレポート作成
- データの傾向をグラフやダッシュボードにまとめ、意思決定者に伝わりやすい形で提供
アンケート集計・分析の最適化を進めることで、データの価値を最大限に活用し、より効果的な意思決定が可能になります。
「アンケートデータをもっと活用したい」と感じたら…
アンケートの集計や分析を進める中で、
「このデータをどう活かせばいいのか?」
「集計はできたが、分析結果をどのように活用すればよいのか?」
「さらに高度な分析を取り入れ、より深いインサイトを得たい」
と感じることがあるかもしれません。
当社では、「データを集計するだけで終わらせない」ためのサポートを提供しています。
- 「自社でできること」を整理したい方
- データ活用の方向性を相談したい方
- より高度な分析を取り入れたい方
どのような状況でも対応可能です。
「まずは無料相談」で、貴社の課題に合わせた最適なデータ活用方法をご提案します。お気軽にご連絡ください。
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