調査企画の背景説明や、調査結果の比較対象として外部統計データを活用すると、調査の説得力は一段と高まります。とりわけ、政府や自治体などの公的機関が提供する統計は、データの信頼性や引用条件の明確さから、非常に使い勝手のよい情報源といえます。

国勢調査をはじめ、公的調査は広範なエリアと大規模サンプルを対象に、民間では難しい手間とコストをかけて実施されています。こうした精緻な統計データは、調査企画や分析に積極的に取り入れることで、結果に厚みを加えることができます。

その代表例が、総務省の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」です。
PCやスマホの保有状況、WebサービスやSNSの利用実態、テレビ・新聞・インターネットといったメディアの利用時間までを詳細に調べたもので、全国の13~79歳の男女1,800人を対象に、訪問留置調査(訪問依頼と紙アンケート)方式で実施されています。Webマーケティングに携わる人にとっては、基礎資料として必ず押さえておきたい調査です。

今回は、この令和6年度最新調査の結果から、注目すべきポイントをいくつかご紹介します。

インターネット利用時間とテレビ視聴時間

インターネット(サイト閲覧やSNS、動画視聴、オンラインゲームなど)と、リアルタイムのテレビ視聴にそれぞれ一日どれくらい時間を使っているのかを、性・年代別に比較してみましょう。

インターネット/テレビ(リアルタイム)の利用時間比較――性・年代別

若年層ではインターネット中心、高齢層ではテレビ中心という対比がはっきりと表れています。
30代以上では休日になるとインターネット利用が減り、テレビ視聴が増える傾向があります。一方、20代以下では休日にネット利用がさらに増加し、テレビ視聴時間はほとんど変わりません。

インターネットでの過ごし方

では、インターネット利用の中で実際にどのような活動に時間を割いているのでしょうか。

インターネットの目的別利用時間――性・年代別

最も長いのは「動画サイトの視聴」で、特に若年層では休日にその時間がさらに伸びています。
主要動画サービスの利用状況をみると、30代以下のYouTube利用率はほぼ100%に達し、Amazonプライムビデオも過半数が利用しています。

主な動画共有・配信サービスの利用状況――性・年代別

SNS利用と購買行動への影響

主なSNSの利用状況――性・年代別

20代以下の男性ではオンラインゲームに時間を割く傾向が目立つ一方、30代以下の女性ではSNSの利用時間が長いことが特徴です。特にInstagramやTikTokは女性の利用率が高くなっています。

また、SNSの活発な利用は購買行動にもつながっているようです。実際、30代以下の女性では「買い物の情報源」として、テレビや口コミを上回り、SNSが最も多く参照されています。

SNSがマーケティングにおいて極めて有力なチャネルであることが、最新の調査結果からも強く示されています。

ショッピングの情報源――性・年代別

情報源としての信頼度とオフラインの役割

情報源としての信頼度:インターネット/テレビ――性・年代別

ただし、一般的な「情報源としての信頼度」で見ると、インターネットは依然としてテレビに劣る状況です。企業サイトやインフルエンサーの発信だけでは十分な信用を得られにくく、購買行動へ直結する影響力はまだ弱いといえます。

実際の成果につなげるためには、オンライン施策に加え、オフラインでの顧客接点を通じてリアルな信頼を醸成していくことが不可欠です。

まとめ

公的統計は、調査設計や分析における比較対象や裏付けとして非常に有効です。最新の生活者データを参照することで、自社調査の位置づけをより明確にし、説得力のある結果を導き出せます。さらに、それを具体的なマーケティング施策へと結びつけていくことが、成果を左右する実践のカギとなります。

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