今回は、「実態調査」についての話です。
記事や広告、Webページなど、いろんなところで「実態調査」結果が公表されています。
キャッチーな見出しに思わず目を止めてしまうことも多いですね。
「実態調査」と名のつくものには、大きく分けて2種類あるように思います。
1. 施策検討用に、実情を把握・理解するための情報を収集するもの
2. 販促用に、訴求力のある数字を得るためのもの
最初から、「2. 販促用に、訴求力のある数字を得る」ことを狙ったものは、どこか嘘っぽい感じがします。
よくみると、自社のメルマガ登録者や、サンプルサイズが小さいなど、サンプルの代表性に?がつくようなものだったりします。
それに比べて、「1. 施策検討用に、実情を把握・理解するための情報を収集するもの」の方は、一見、まじめで面白みにかけるような感じがしますが、実は味わい深い魅力を持つ場合が多いです。
私が好きな実態調査の一つに、トイレについての調査があります。
お堅い役所やメーカーなどが、大真面目で実におもしろい調査をしています。
まずは、トイレの歴史をみてみましょう。
一般社団法人 日本レストルーム工業会のホームページにあるトイレ年表には、以下のような歴史が掲載されています。
縄文時代早期 日本最古のトイレは、川に直接用便する「川屋」と呼ばれるもの(「厠」の語源)
1970年代後半 洋風便器の出荷が和風便器を上回る
1980年代後半 和風便器の出荷構成比が20%を下回る
2000年代前半 和風便器の出荷構成比が5%を下回る
2017年 温水洗浄便座の普及率が約80%に
和から洋へのライフスタイルの変化の中で、便器の様式が大きく変わりました。
それに伴い、私たちのトイレ利用のスタイルも変わってきています。
男性の小用スタイルの変化
以下は、3つの機関が実施した実態調査の結果を1つにまとめたグラフです。
細かい点の違いはあっても、サンプル構成などの調査仕様がしっかりしていれば、大きな時代の流れを正しく読み取ることができます。
座って小をする(いわゆる「座りション」です)男性の割合は、2000年代前半は2割を超えたあたりだったのが、現在は6割近くになっていると思われます。
「6割」というと、スマホの個人普及率と同じレベルです。「座りション」が多数派ということですね。
小学校入学前の和式トイレ練習が必須
家のトイレはほぼ洋風便器となって、男性の多くが「座りション」をしているわけですが、一歩、家の外に出ると、まだまだ和の香りが根強く残っています。
文部科学省が2016年4月に実施した調査では、
公立小中学校におけるトイレの全便器数は約140万個であり、そのうち洋便器数は約61万個(43.3%)、和便器数は約79万個(56.7%)であった。
そうです。
小学校にあがるまでは和式トイレ未体験の子供も多く、和式トイレを使う練習は、入学準備の必須項目となっています。
トイレ空間・時間の使い方も変化
2018年にTOTOが実施した「オフィス水回り意識調査」(n=1,041人)によると、オフィストイレの個室でしたことがある「用足し・身づくろい以外」の行為は、
・携帯電話・スマートフォン・タブレットを使用する(39%)
・一休みする・休憩をする(23%)
・考え事をする(20%)
などとなっています。
和式ではとても「一休み・休憩」にはなりそうにありませんので、洋式化に伴って、トイレという「場」の意味合いが変わってきているわけですね。
当社が10年前に実施した調査では、有職者(n=1,516人)の9.2%が「会社のトイレ」を落ち着く場所として挙げていましたが(ちなみに「自宅のトイレ」は19.5%)、今では少なくとも倍以上には伸びていそうです。
他にも、
・トイレの個室は、男性は「奥」、女性は「手前」を選ぶ (クリエイティブサーベイ調査、2016年6月)
・洋式便器で立って小用を足す男性のうち、6割が便器内の狙う位置を定めている (ライオン調査、2015年5月)
など、いずれ劣らぬおもしろデータが潜んでいます。
もしあれば、調査部門の「イグノーベル賞」をあげたいほどです。
実態調査は、大まじめに突き詰めれば突き詰めるほど面白みが増す。
あらためて、そう実感したところです。
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