今回は、「ジョハリの窓」を活用したブランド理解のアプローチについての話です。

「ジョハリの窓」は自己分析フレームワーク

「ビジネス上の問題解決に役立つ分析ツールをあげてください」と聞かれた場合、経営企画やマーケティングなどを担当するビジネスパーソンなら、まず思い浮かぶのは「3C分析」「SWOT分析」「PEST分析」「ファイブフォース分析」などのフレームワークで、「ジョハリの窓」をあげる人は少ないと思います。

しかし、ジョハリの窓の考え方は市場調査/マーケティングリサーチの役割に非常に近いものがあります。

ジョハリの窓は、対人関係における気づきのモデルで、心理学で使われる自己分析フレームワークです。

サンフランシスコ州立大学の心理学者ジョセフ·ルフトとハリー·インガムが開発したもので、開発者2人の名前を組み合わせて「ジョハリ」の窓と呼ばれています。なんか、バドミントンのペアの名前のようですね。

ジョハリの窓では、自分自身について「自分は知っている/自分は気づいていない」をヨコ軸に、「他人は知っている/他人は気づいていない」をタテ軸にして、4象限のマトリックスを作ります。

ジョハリの窓

4象限のそれぞれを「窓」ととらえて、以下のように定義しています。

①開放の窓:自分も他人もよく知っている自己

②盲点の窓:自分は気づいていないが、他人は知っている自己

③秘密の窓:自分は知っているが、他人は気づいていない自己

④未知の窓:自分も他人も気づいていない自己

他者との認識ギャップを浮き彫りにしたうえで、他者からのフィードバックを素直に受け入れ、自己を積極的にオープンにし、さらに新たな自己像の構築にチャレンジすることにより「開放の窓」を広げていくことが円滑なコミュニケーションにつながる、という考え方です。

ジョハリの窓は、友人·知人を何人か集め、自分と相手の性格·特徴をお互いに書き出し、それらを照らし合わせて4つの窓にあてはめていきます。

これをマーケティングに援用すると、自社とお客様との認識ギャップから、自社の「強み」の再発見、広告コミュニケーション上の課題、新規事業の可能性などを探り出していくという、市場調査/マーケティングリサーチの役割に重なります。

ジョハリの窓をブランド理解にどう活用していくか?

ブランドは生活者一人ひとりの心の中にあるもの

ブランドは企業のものではなく、商品やサービス、店舗での接客、広告などとの接触を通じて、消費者一人ひとりの心の中に、いくつかのイメージとして想起されるものです。

したがって、ブランドを理解しようとすれば、ブランド調査で生活者の心の中をのぞき込み、

  • 自社や競合他社に対して、どのようなイメージを抱いているのか?
  • それぞれのイメージは、どのようなところからできてきているのか?

などをわかりやすい形で見つけてくる必要があります。

ブランドは消費者の心の中にあるもの

当社でおすすめしているブランド調査の基本的な質問項目は以下のような枠組みです。

ブランド調査の基本的な質問項目

「ジョハリの窓」を活用したブランド診断

このうちの、ブランドイメージの調査結果をジョハリの窓にあてはめてみることができます。

イメージ項目は、たとえば「信頼できる」「親しみやすい」「チャレンジ精神がある」「商品の品質が高い」「顧客を大切にしている」「環境問題に積極的に取り組んでいる」···などです。

自己評価については、担当チームで「あてはまる/あてはまらない」に分類してもよいですし、社員対象にアンケートを実施してその結果を使ってもよいでしょう。

自己評価と消費者調査の結果のいずれにおいても「あてはまる」割合が5割を超えているイメージ項目を「①開放の窓」に分類し、自己評価では基準点以下なのに調査では5割以上であれば「②盲点の窓」に···、と分類していきます。

  • 上の例では「5割」を基準点としていますが、競合他社との比較で、トップをとるために必要な数字として「4割」「8割」などの基準にしてもよいです。

多くのイメージ項目が「①開放の窓」に集まっていれば、自社が打ち出したいイメージと消費者が抱くブランド像との間に大きなギャップがないことになりますが、ほとんどの項目が「③秘密の窓」に集まってしまっている場合には、これまでのブランド·コミュニケーションが機能していないことになります。

そして、「②盲点の窓」からはこれまでに気づいていなかった強みを発掘できる可能性があり、「④未知の窓」には、自他ともに認める欠点が潜んでいる可能性があります。

これを自由回答方式のブランド連想データでもやってみると、ギャップがより明確になり、「②盲点の窓」や「③秘密の窓」の中身が具体的に見えてきます。

ジョハリの窓を活用したブランド診断

「ブランディングが重要だ!」と言われると、ついテレビCMやWebページの方に目が向いてしまいますが、まずはブランドの真の姿を理解することがスタート地点です。

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ブランドの強さやイメージの評価情報を定性・定量の両面から分析して、市場での優位なポジショニングを探る。ブランドイメージ調査の専門家としてブランド強化のお手伝いをいたします。