定期的に実施している調査でも、対象者が異なれば、誰が変化したのか、なぜ変化したのかに迫ることが難しくなります。

同一の対象者に対して一定期間継続的に実施するパネル調査では、個々の対象者レベルでの変化をとらえることができ、キャンペーンなどマーケティング活動の接触状況などの情報から、変化要因を特定することができます。

パネル調査と補充サンプル

パネル調査では、同一の対象者に、基本的に同じ質問を、一定期間継続して、実施します。

通常は、調査の回を重ねるごとに、対象者の離脱が起こります。

パネル調査の運営に際しては、あらかじめ大きめのサンプルを設定しておいて、逐次、補充していくようにすると、「点」で見る場合でも、「線」で見る場合でも、分析に必要なサンプルを確保することができます。

「線」で見る

たとえば、隔月実施のパネル調査の場合、初回サンプルをn=2,000人と設定することにより、1年間継続回答者:n=1,000人ベースでの分析が可能となります。

「点」で見る

離脱サンプル分を補充することにより、特定の調査回について、n=2,000人ベースの分析が可能となります。

パネルデータ分析

パネル調査から得られた情報については、パネルデータ分析を行います。

パネルデータ分析では、たとえば「このキャンペーンを認知すると、どの程度購入意向が高くなるのか」を特定することができます。

パネルデータ分析には以下のようなメリットがあります。

  • 高い推定精度が期待できる。
  • 観察不可能な要因をコントロールできる。
  • 個人レベルでの変化を分析できる

高い推定精度を期待できる

パネルデータは、個々の対象者について、複数の時点の回答データを結びつけたものとなり、統計的な情報量が極めて大きなものとなります。

それによって、分析の推定精度が高くなる効果があります。

パネルデータのイメージ

パネルデータのイメージ

観察不可能な要因をコントロールできる

調査を行う際に、理論的には想定できても、現実的には観測不可能な「個体差」があり、残念ながら、どうしても調査ではとらえきれない要因となります。

たとえば、企業の業績の要因を探ることを目的として調査を行う場合、経営の質のようなものについては、業績を左右する影響がありそうなものの、それを正確に観察することは非常に難しいテーマです。

同一の対象者(個体)について、複数時点のデータを積み上げたパネルデータでは、そうした観測不可能な「個体差」がコントロールされる(=パネル調査の対象となる期間においては、大きな変化はないものと考えられる)こととなります。従って、パネルデータ分析の結果は、観測不可能な「個体差」の影響が少ないものとなります。

パネルデータ分析では「観測不可能な要因」のコントロールが可能

個人レベルでの変化を分析できる

パネルデータでは、個々の対象者の1時点目の評価レベルが、2時点目でどのように変わったか(あるいは変わらなかったか)というようなミクロレベルでの変化を見ることができます。

これにより、個々の対象者がある時点の新商品発売·料金改定、広告やキャンペーン等のマーケティング活動に応じて、どのような反応を見せるかをとらえることができます。

パネルデータで個人レベルの変化も分析可能

パネル調査の活用

パネル調査のデータには、さらに以下のような活用方法があります。

口コミ分析

口コミ行動の発生状況とマーケティング施策の認知状況について分析することで、口コミ行動を誘引する施策を特定することができたり、ポジティブ/ネガティブな口コミ経験がイメージ等に与える影響を特定することができたりします。

ユーザー基盤の安定性分析

推奨意向や継続利用意向などのロイヤルティにかかわる態度や意識の安定度について分析することができます。好意的な態度が安定したユーザーが多いほど、強固な顧客基盤を有していると評価することができます。

長期的な蓄積効果を量的に把握

パネル調査を実施して、パネルデータ分析を行うことにより、販促やマーケティング施策による変化の要因や施策の長期的な蓄積効果を量的に把握できるようになります。

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