東京・豊洲の新市場は当初11月7日にオープンする予定でしたが、小池都知事は安全面などの理由から移転延期を決め、地下水モニタリング調査の最終結果が出る年明けに改めて移転開業の是非を判断する見通しとなっています。
現実問題として豊洲以外への移転あるいは築地市場の再整備は難しいかと思いますが、いずれにしろ当面は現在の築地市場で営業を続けるほかありません。
築地市場は、国内外から生鮮食料品があつまる日本一の中央卸売市場で、特に水産物に関しては世界最大規模の取扱高を誇ります(2015年の年間取扱い数量は約43万6千トン、金額ベースで約4,400億円)。
ただ、1935 (昭和10)年の開場から80年以上経って老朽化が進んでおり、過密化による市場内物流の非効率も問題とされてきました。とはいっても、築地市場の敷地面積はおよそ23.1ha、東京ドーム(46,755㎡)5個分に相当しますので、銀座から徒歩圏内の立地を考えると贅沢な広さではありますね。なお、豊洲市場の敷地面積は築地市場の約1.8倍、40.7haで、大田市場(38.6ha)を抜いて全国一の規模となります。
出典:全国中央卸売市場協会概要(平成25年度)
フランスのランジス(234ha)やスペインのメルカ・マドリッド(176ha)等といった海外の代表的な市場に比べると大きさの点ではかなり見劣りがしますが、日本は「仲卸」など独自のシステムによって市場スペースを効率的に活用してきたといえます。
仲卸は、せりや相対取引で卸売業者から仕入れた食材を小売店や飲食店向けに小分けにして販売します。食材の目利きに優れ、小売りニーズを熟知した彼ら“プロ”を介することによって、限られた場所でも大量の市場取引が円滑に進むわけです。
しかしながら、近年はインターネット取引あるいは大手スーパー・外食チェーンなど仲卸による小分けを必要としない大口消費者による市場外取引が増加傾向にあります。
出典:農林水産省「平成27年度・卸売市場データ集」
現在、全国には64の中央卸売市場があるのですが、統廃合によって年々数が減ってきていますし、平成26年度末時点における中央卸売市場の仲卸業者数は全国で約3,400と10年間で3割近く減少し、経営的にも苦しい状況が続いています。
今後も卸売市場を通した取引は減り続けていく可能性が高いでしょう。
ただ、卸売市場は生鮮食料品の安定供給や適正な価格形成といった役割以外にも、せり等の伝統的な取引手法や場外も含めた市場の賑わい自体が食文化として大きな魅力ではないかと思います。
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