近年、空き家の増加が社会問題となっています。
平成25年(2013年)の「住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数はおよそ820万戸で、全住宅数に占める空き家の割合は13.5%とのことです。
出典:総務省「平成25年 住宅・土地統計調査」
日本では1960年代後半に住宅総数が世帯数を上回るようになるのですが、その後も一貫して住宅供給は伸び続けており、直近15年で1,000万戸以上も増えています。
人口が減少に転じる一方、単身世帯の増加などで世帯数は緩やかに増えていますが、国立社会保障・人口問題研究所の推計では2019年をピークに世帯数も減り始めると予想されており、そうなると空き家も急増して2040年頃には空き家率が30%を超えるのではないか と危惧されています。
人が暮らさなくなって手入れもされずに放置されたままの空き家が増えれば、周辺環境は悪化して防犯・防災上も危険です。空き家のうち約4割は用途不明で放置されており、その3割は腐朽・破損の状態とみられています。
とはいえ、空き家のリフォームや解体には費用がかかりますし、更地にすると固定資産税が高くなってしまいますので、コストに見合う資産価値がなければお金をかけて空き家の処分を進める気にはなかなかならないでしょう。最近は、空き家の維持・管理の負担を嫌って相続放棄する人も増えており、そうなると空き家の整理に税金を投入せざるをえなくなってきます。
ただ、政府や自治体も手をこまねいているわけではなく、空き家の解体費用の一部を助成したり、一定の条件を満たせば土地の売却代金について税額控除を受けられる、等といった優遇制度を導入したりしています。また、一昨年には「空き家対策特別措置法」が施行され、段階的に手順を踏んでいけば最終的に自治体が行政代執行により倒壊の恐れがある空き家を強制撤去できるようになりました。
また、民間やNPOでも、一部の地域では空き家バンクやランドバンクなど物件のマッチングにより空き物件の利活用を促す試みが始まっています。
なお、実は空き家の6割近くはマンション等の共有住宅が占めています。
都心部ではタワーマンションの建設が進む一方、全国的には老朽化したマンションも増え入居率が下がってきているのが実情です。分譲マンションの場合、住人の高齢化が進み空き家が増えてくると、管理組合がうまく機能せず修繕や建て替えに支障をきたす事態も想定され、戸建ての空き家のケースとは異なる対応の難しさがあります。
空き家問題は、今後は都市部においてより深刻になってくると思われます。まちづくりの観点からは行政主導による区画整理が望まれる地区もあるでしょうが、特に駅周辺や繁華街などまちの中心部では複雑な権利関係もあり大規模な再開発はなかなか難しいでしょう。
まずは、個々の空き家の整理を地道に進めていくのが現実的ですが、さらに地元主体でまちの再活性化につなげていくためには、地域住民の理解と協力を得つつリノベーション等により物件の魅力を高めていく必要もあるかと思います。
空き家問題は個人レベルで解決するのは困難ですが、その影響は周辺環境の悪化だけでなく地価下落や行政サービスの低下など私たちの生活に直結します。放置したまま取り返しのつかない悪循環に陥る前に、余った土地をいかに有効活用できるか、人口減少社会における都市計画と絡めて官民合わせ知恵を絞っていかなければなりません。