年末ジャンボ宝くじが発売中です。
年末ジャンボには、最高当せん金額が1等前後賞あわせて10億円の「年末ジャンボ」と、1等前後賞あわせて5,000万円の「年末ジャンボミニ」の2種類あります。
ジャンボは
4億4,000万枚(1ユニット2,000万枚×22ユニット)×1枚300円=1,320億円
ミニは
1億5,000万枚(1ユニット1,000万枚×15ユニット)×1枚300円=450億円
で計1,770億円分が販売予定となっています。
宝くじの売上は、以前は年間で1兆円を超えていましたが、近年は低下傾向です。
昨年はコロナ禍で消費先が限られる中、宝くじ購入が増えたのかやや増加したものの、ここ数年は年間で8,000億円前後となっています。
年末ジャンボとミニを合わせた販売予定額は1,770億円と年間売上の2割以上を占めるだけに、テレビCMなど広告宣伝に特に力を入れるのもうなずけます。
なお、ジャンボ宝くじは基本的に売り切れを出さないようにしているそうですが、昨年は1,830億円の販売予定額に対し、実際の売上は1,434億円で400億円近く未達でした。
もし、売れ残り分の宝くじに当せん番号があった場合、その分は払い戻しされないことになりますが、売上も減っているわけですので結果的に払い戻し率に大きな違いはなさそうです。ことさら宝くじの購入者が損をするわけでも販売側が得をするわけでもないと考えるべきでしょう。
さて、ジャンボとミニそれぞれの当せん本数から当せん確率を算出すると以下の通りとなります。
ジャンボの場合、1ユニットに1本ずつ1等が含まれ、1等の当せん確率は2,000万分の1となります。
よく落雷事故に遭う確率と同じくらいと言われたりしますね。
当せん金額に当せん確率を掛けた期待値を比べると、1等前後賞合わせて10億円の当せんを夢見るならジャンボ、1万円でも当てたい場合はミニがおすすめという具合に両者の特徴がみえてきます。
ただ、宝くじ1枚300円購入した場合のトータルの期待値はどちらも150円程度と還元率は半分以下で、冷静に考えると宝くじを買うのは割に合いません。
実は、宝くじの当せん金は販売額の5割を超えてはいけないと法令で決まっています。
年末ジャンボは目玉商品なので還元率がやや高めに設定されているようですが、日本宝くじ協会の発表によると、2020年度の売上のうち当せん金の支払いに充てられたのは47.0%とのことです。
売上から当せん金と経費を除いた収益は公共事業等にあてられます。
社会の役に立てるからという理由で宝くじを買う人はあまりいないでしょうし、やはり高額当せんを狙って購入する人がほとんどでしょうが、なぜ確率的には明らかに不利とわかる宝くじを買うのでしょうか。
行動経済学のプロスペクト理論によれば、人間は期待値の認識に歪みがあり、特に利益よりも損失を回避しようとする傾向があるとされています。
例えば、コイントスの裏表など確率が2分の1の賭けなら宝くじよりはずっと分がよいですが、あなたならいくら賭けるでしょうか。
恐らく、宝くじを1万円分買うような人も、コイントスに1万円を賭ける気にはならないのではないでしょうか。
1万円得する確率も1万円損する確率も同じだとしても、多くの人は1万円損する確率の方を過大に見積もってしまうと考えられるからです。
その人の経済状況などによって、1,000円でも躊躇する、あるいは10万円でも気にせず賭けるというような人がいるかもしれませんが、損得ともに同程度の金額であれば「損失回避性」が上回って賭けをしない人の方が多いと思われます。
では、宝くじの場合はどうでしょうか。
例えば、年末ジャンボを10枚(=3,000円)買うと、末等の300円は必ず当たるので、最大損失額は2,700円に限定されます。購入枚数は30枚でも100枚でもいいのですが、とにかく支出額は納得できる範囲に抑え、損失を自分でコントロールできることがポイントです。
一方、最高当せん額は1等前後賞あわせて10億円まで可能性があるとなると、支出額に対して予想最大利益が大きすぎて正確な価値(確率)判断は難しくなると考えられます。
プロスペクト理論では
・高い確率は過小評価され、低い確率は過大評価される
点も指摘されています。
例えば、航空機事故による死者数は自動車事故に比べるとはるかに少ないですが、実際の発生確率に比べ自動車はより安全、航空機はより危険と感じている人が多いのではないでしょうか。
宝くじも、高額当せんの確率は過大に認識され、その人にとって(夢を見る代金として)惜しくない金額の範囲内であれば、理屈ではなく感覚的に魅力と感じるからこそ購入する人が後を絶たないのでしょう。
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