社員の声の価値

社員を対象としたアンケートというと、まっさきに思い浮かぶのが従業員満足度調査(ES調査)でしょう。ESというと給与や待遇が中心のように思われがちですが、会社の方針や戦略も重要なテーマに含まれます。

また、商品企画やマーケティングのアイデアについて社員からヒアリングする調査を行っている会社も少なくありません。
社員は商品やサービスを最前線で扱う専門家であり、一般の顧客よりも会社や商品について深く理解していますので、彼らの意見は会社にとって貴重な財産です。

社員の声に耳を傾け、理解し、活用することが、事業の成長、革新、そして持続可能な成功への道を拓きます。

社内アンケートは質量ともに豊かな情報源となる

社内アンケートの価値は自由回答にあるといっても過言ではありません。

多くの社員は会社のために貢献したいと考えています。会社が頼めば、会社や商品の成功のためにじっくりと考え、率直な意見を伝えてくれます。
そのため、社員対象の調査では一般の顧客調査と比較しても協力率が高く、質の高い自由回答が期待できます。
そして、そうした回答からは社員一人ひとりの深い考えや具体的な改善提案を得ることができます。

また、一般顧客対象の調査では、自由回答質問は盛り込めても2~3問程度にとどめないと負担に感じられて回答してもらえなくなりますが、社員の場合には、多少数が多くなってもしっかりと意見を述べてくれることが期待できます。

社員から寄せられる回答は単に数が多いだけではなく、一つひとつの回答の情報量も多いのが特徴で、社内アンケートは質量ともに豊かな情報源なのです。

社員の声を経営資源として活用する分析アプローチ

社内アンケートで寄せられる社員の声を経営資源として活かすことで、社内の集合知を経営に反映させることができます。

では、社員からのフィードバックである自由回答情報は、どのように分析すればよいのでしょうか?

社内アンケートの分析においては、単に書かれた文章を読む以上の複層的なプロセスと論理的な思考が必要になります。
以下は当社での分析プロセスの概要です。

社内アンケートの自由回答分析フロー。第一段階:要素分類軸抽出、第2段階:読み込み分類、第3段階:集計と分析

第1段階:要素分類軸抽出

まずは自由回答のあら読みをします。テーマにもよりますが50~100件程度の自由回答をサクッと読み込んで大まかな傾向を掴み、いくつかの共通する要素を見つけます。

全体の回答件数にもよりますがこの段階では5~10個程度の要素をリストアップします。
たとえば、会社の組織変更についての意見の場合には、以下のような要素を分類軸としてたてておくと少なくともいずれか1つには当てはまります。

[例:会社の組織変更に対する意見の分類軸]

会社の組織変更に対する意見の分類軸の例。<好意的な意見>・・・1.業務分担の整理・明確化に期待、2.指揮命令系統の整理・明確化に期待、3.無駄の排除や決裁プロセスの短縮化に期待、4.新体制下での一体感醸成に期待、5.その他の好意的な意見、<非好意的な意見>・・・6.変更の必要性に疑問、7.部門の編成内容(担当の割り当て方)に疑問、8.権限・責任の過度な集中に対する懸念、9.業務量の偏在に対する懸念、10.その他の非好意的な意見、<その他>・・・11.その他の意見

この段階での要素抽出の出来不出来が分析の成否を大きく左右します。
最初から完璧な分類軸を作る必要はありませんが、じっくりと時間をかけて多様な意見の全体像をカバーし、かつ、回答者の真意を的確にとらえた要素を抽出することが重要です。

第2段階:読み込みと分類

要素の分類軸がまとまったら、一つひとつのコメントを読み込み、該当する要素に分類していきます。

社員アンケートの自由回答の中には、1,000字を超えるコメントもあります。実は、コメント量が長大なものほどそこに潜んでいる要素は1つだけという傾向があります。どうしても伝えたいことがあると、様々な具体例を示しながら繰り返し同じことを説明するため、文章が長くなるのです。

一方で、複数の要素を端的なキーワードにまとめて箇条書きにしたようなコメントもあります。こちらは文字数は少ないものの分類される要素の数が多くなります。

こうした要素分類を行いながら、気持ちの濃淡も読み取っていきます。

さらに読み込みと分類を進める中で、当初の分類軸に収まり切れない内容が増えてくれば新たな要素を追加します。また、複数の要素のうちどれに分類するか悩ましいコメントがでてくれば、分類軸の定義の具体化・明確化に取り組みます。

この第2段階は地道な作業を続ける段階です。ここでの作業を通じてはじめはおぼろげだった分類軸の輪郭がはっきりとしたものになり、要素のリストを見るだけで社員からのフィードバックの全体像を把握することができるようになります。

第3段階:集約と分析

ここまでで必要な情報はすべて定量化できていますし、要素分類の作業を通じて「気持ち」という定性的な重みづけ情報も読み取っています。分析のほぼ9割がたは終わっている状態で、あとはそれらの情報を整理して見える化し報告書にまとめるだけになります。

その際、各要素について特に重要なポイントを指摘しているコメントを選び出して掲載すると、集約した情報に具体的な展開事例が加わることとなり、分析結果についての理解を促進する効果があります。

社員の声は企業が直面する課題を解決し、新たな機会を見出すための鍵を握っています。
社員の声から新たな価値を引き出し、企業の成長と発展を加速させたいとお考えでしたら、お気軽にご相談ください。

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