マーケティングを担当している方の中には、アンケートデータを使って問題解決につながる情報を引き出したいが、専門的な分析は難しくて、なかなか手を付けられずにいるという方もいらっしゃるものと思います。
そこで「アンケートの分析で使える多変量解析手法」と題して、何回かに分けて、顧客ニーズの理解やセグメンテーションなどのマーケティング上の問題解決に役立つ、多変量解析手法についてご紹介していきたいと思います。
第1回目のテーマは「因子分析」です。
因子分析とは、一言でいえば「データの背後に潜む共通要因を見つけ出す」分析手法です。
下の図は、因子分析の説明資料でよく目にするもので、国語や社会の成績の背景には文系因子(文系的なセンス)があり、算数や理科の成績の背景には理系因子(理系的なセンス)があるという構造を表しています。
消費者対象の調査で、「料理の味」「お店の雰囲気」「店員の態度」などの評価を聞くことがありますが、こうした商品やサービスの様々な側面についての評価の背景には、いくつかの共通要因を認めることができる場合があります。
病気にたとえれば、評価は目に見える症状で、共通要因はその原因疾患です。
原因疾患を根本的に治すことが症状の改善につながるのと同じで、因子分析で探り出した共通要因への対応が、直面する問題の解決につながっていきます。
【因子分析の例】
近年、「シティ・セールス」や「シティ・プロモーション」といって、定住人口や流入人口を増やす取組に力を入れている自治体が数多くあります。
パブリック・セクターにおいてもマーケティングの重要性が高まってきています。
以下は、自分が住む街の暮らしやすさについて「よいと思う―どちらともいえない―よくないと思う」で評価してもらった結果です。
この評価データについて因子分析を行うと、以下の5つの因子を抽出することができます。
「利便性」因子・・・交通の便、買い物の便
「公園緑地」因子・・・公園や広場、自然環境
「行政サービス」因子・・・ゴミの回収日や回収方法、道路の整備、役所のサービス
「治安・イメージ」因子・・・街のイメージ、治安
「物価」因子・・・物価
因子分析によって得られる因子得点を使って、セグメンテーション(たとえば、利便性を重視する層、治安を重視する層などの分類) や、ポジショニング分析(競合との比較や、競合の少ないエリアの発見など)、さらには、因子の改善に有効な方策を特定する分析などを行うことができます。
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