はじめに

日本の労働市場は変革の最中にあります。少子高齢化が進む中での働き手の減少、働き方改革の推進、そして賃金の上昇圧力。これらの要因が絡み合い、企業にとっての人材確保のハードルは日増しに高まっています。

しかし、この厳しい状況を乗り越え、業績を向上させるための鍵は何でしょうか?
答えは「人」にあります。獲得した人材がその能力を最大限に発揮できる環境を整えることで、生産性の向上が期待できます。

本記事では、従業員の心の声を正確に掴むための「従業員満足度(ES)調査」の価値と、それが経営にどのように貢献するのかについて解説します。

広がる人手不足の影響

人手不足の現状とその背景

日本は少子高齢化が進行中で、生産年齢人口(15~64歳)は年々30~40万人ずつ減少しています。2040年頃、団塊ジュニア世代が高齢者となるころには、この減少幅は年間100万人を超えると予想されます。65歳以上で働く人も増加傾向にあるものの、人材確保は経営の大きな課題として立ちはだかることは明白です。

コロナ禍と業種別の人手不足

特にコロナ禍で事業が縮小された業種では、経済の回復とともに人手不足が深刻化しています。ハローワークの最新データを見ても、介護・保育、飲食、輸送業などでは有効求人倍率が約3~4倍と、人手不足の現状が浮き彫りになっています。

職業別の求人・求職数と有効求人倍率(2023年8月)。ハローワークにおける求人数が多い介護・保育、飲食、輸送などの業種では、有効求人倍率が3倍程度かそれ以上で、人手不足が顕著なことがわかる。

求人と求職のミスマッチ

一方で、一般事務のような職種では、求人数は多いものの、求めるスキルにミスマッチが生じているため、実際には人手不足が生じていると考えられます。

物流業界の2024年問題

物流業界では、2024年問題が注目されています。働き方改革関連法により、2024年4月からの自動車運転業務の年間時間外労働が960時間に制限されます。
時間外労働の上限規制については、既に一般企業には適用されていますが、長時間労働が常態化していた自動車運転業務や建設業、医師などでは是正に時間がかかると判断されて猶予されていました。2024年4月からの時間外労働の上限規制が輸送能力の低下につながることが懸念されており、それによって、運賃の上昇や物流コストの増加といった形で、私たちの生活にも影響が及ぶ可能性があります。

働き方改革の必要性

少子高齢化が進む中、長時間労働が可能な労働者は減少の一途をたどります。このため、ワーク・ライフ・バランスの実現や労働時間の規制など、働き方改革の推進が不可欠です。そして、労働者が減少し、労働時間も短縮される中で、企業が業績を維持・向上させるためには、生産性の向上が求められます。

生産性向上の鍵

「生産性」という言葉は多岐にわたる意味を持ちますが、ここでは「労働生産性」、つまりヒトが関わる生産性に焦点を当てます。労働生産性は以下のシンプルな計算式で示されます。

労働生産性の計算式。労働生産性=付加価値額÷従業員数(総労働時間)。付加価値額は「売上高-経費」で、売上高は「単価×数量」とする。

この式をもとに、生産性を向上させるためのアプローチは以下の2つに絞られます。

  1. 付加価値を高める
  2. 従業員数(総労働時間)を最適化する

1. 付加価値を高める

付加価値は、売上から経費を引いた金額を指します。経費には人件費、材料費、外注費、輸送費などが含まれます。これらのコストは、人手不足やインフレの影響で上昇する可能性があります。経費削減には限界があるため、付加価値を高めるための主な方法は、単価の向上や販売数量の増加です。

2. 従業員数(総労働時間)を最適化する

日本の生産性が低い原因の一つとして、多くの人手と時間を必要とする労働スタイルが指摘されてきました。長時間労働や休暇の取得を控える文化は、生産性の低下を招く要因となります。しかし、人手不足や働き方改革の推進により、従業員数や総労働時間の効率化が進むでしょう。この変化を受け入れ、より効率的な労働スタイルを確立することが、生産性向上の鍵となります。

従業員満足(ES)と顧客満足(CS):生産性向上の二つの柱

生産性向上の課題

業務効率化と付加価値の向上は生産性を高める基本的なアプローチですが、これを実現するのは容易ではありません。特に労働集約型サービスでは、人員を増やさずにサービス量を増やすと、品質の低下が懸念されます。

付加価値の向上と顧客の評価

単価を上げることは付加価値を高める有効な方法ですが、サービス品質が顧客に認められなければ、結果的には売上が減少する恐れがあります。顧客の評価は、商品やサービスだけでなく、関わる従業員に対する評価も含まれます。従業員のスキルやモチベーションは、サービス品質の向上に直結します。

従業員のモチベーションと生産性

従業員のスキル向上には時間とコストがかかります。そのため、長期的に勤務してもらうことが企業の収益に直結します。モチベーションの高い従業員は、社内の活性化や生産性向上に大きく貢献する可能性があります。

ESとCSの関連性

従業員満足度(ES)と顧客満足度(CS)の間には強い関連性があることが知られています。具体的には、ESが1%増加すると、CSが0.22%増加するという研究結果があります。
従業員満足度が向上すると、社員のモチベーションも上がります。そしてこれは顧客満足度にも良い影響を与えます。さらに、満足した顧客からの感謝の言葉が、従業員のモチベーションや満足度に良い影響を与え、満足の連鎖が続くことで、ビジネスの基盤が強化され、業績の向上に繋がっていくわけです。

ESの改善とCSの向上が両輪となって業績拡大が可能となる

従業員満足度(ES)調査の重要性

従業員満足度(ES)調査は、ビジネスの基盤を強化するための重要なツールとなります。
ESとCSをうまく結びつけることができれば、2つの満足を車の両輪として業績を上げていくことができます。
ES調査の詳しい実施方法については、以下のページをご参照ください。

従業員満足度(ES)調査~よくある問題点と対処法

従業員満足度(ES)調査がビジネス基盤を強化します。ESとCSをうまく結びつけることができれば、2つの満足を車の両輪として業績を上げていくことができます。

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