このところ新型コロナウィルスの新規感染者数は全国的に低い水準に抑えられており、このままの状況が続けば11月以降に行動制限が徐々に緩和されることになりそうです。
経済社会の正常化への道はまだ遠いものの、人流が増えれば必ず消費も活発化します。

日本銀行は、コロナ禍で抑えられた消費分を「強制貯蓄」と呼び、その額は昨年1年間で(10万円の定額給付金を除いて)20兆円程度と試算しています。

可処分所得と消費支出の推移

今年に入ってからも消費が抑えられている状況は続いており、「強制貯蓄」はさらに10兆円近く積み増されているとみられます。

「強制貯蓄」分が全てリベンジ消費に回るわけではありませんが、やはりコロナ禍前に比べ大幅に消費が落ち込んだ財・サービスは今後消費が急拡大する可能性が高いでしょう。

家計調査によると、2020年の2人以上世帯の1か月あたり消費支出額は277,926円で、名目・実質とも前年比5.3%減と大幅な落ち込みでした。

2人以上世帯の消費支出額の推移

そして、品目別に特に減少幅が大きかったのが、旅行、外食、衣料品、習い事などでした。

前年に比べて支出額が大きく減少した財・サービス

皆さんにも心当たりがあることでしょう。

なお、総務省では品目ごとの「支出弾力性」も発表しています。
支出弾力性とは,消費支出総額が1%変化する時にそれぞれの財・サービスの支出が何%変化するかを示した指標です。支出弾力性が1未満の支出項目は基礎的支出(必需品)、1以上の支出項目は選択的支出(贅沢品)に分類されています。


ちなみに、上記の支出額が大幅に減った品目は、いずれも支出弾力性が1を大きく超えています。

用途分類項目の支出弾力性

不要とはいえないまでも不急の贅沢品という位置づけになりますが、弾力性が高いということは、今後全体の支出額が増えてくればそれ以上に消費が伸びるということでもあります。

消費を我慢している度合いでは旅行、支出額の大きさでは外食の伸びが期待できますが、弾力性の値をみると英会話スクールやスポーツジムなどに通い始める(再開する)習い事も注目です。

なお、支出弾力性は以下の式で表されます。

ln(Y)=a・ln(X)+b

Y: 品目別の支出額
X: 消費支出総額
a: 弾力性
b: 切片

例えば、一般外食(弾力性:2.12069、切片:-17.55123)の消費額は、月の支出総額が30万円になれば

=EXP(2.12069*LN(300000)-17.55123)
=9,837円

になるだろう、といった予測的な使い方もできます。

ただし、弾力性はその時々の消費マインドによって変化するものですし、あまり細かな数値にこだわらず消費動向を先取りする際の参考にするのがよいでしょう。

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