昨年末にIR推進法案(カジノ法案)が成立しました。
今後、実施法案の提出に向けて、ギャンブル依存症対策を含めた具体的なルールづくりが検討されていくことになります。
IRとはIntegrated Resort(統合型リゾート)の略で、カジノだけでなくホテルやレクリエーション施設、国際会議場などを含めた複合観光施設のことです。シンガポールがカジノを解禁する際、ギャンブル色を薄めるためにIRという言葉を作ったといわれています。
ちなみに、カジノの語源はイタリア語の「casa(カーサ)=家」で、もともとヨーロッパの貴族が別荘で行ったパーティの余興・ゲームがカジノの始まりらしいです。今でも、ヨーロッパのカジノの中には入場の際のドレスコードが厳しかったり上流階級の社交場の雰囲気が残っている所があります。
さて、現在、世界では約140カ国でカジノが合法化されており、なんと北朝鮮にもカジノがあります。
カジノの市場規模を測るのはなかなか難しいのですが、世界全体でおよそ20~25兆円と試算している機関が多いようです。国土交通省が発表したデータによると、都市別のカジノ売上げランキング(2013年)は
①マカオ:4兆6,104億円
②ラスベガス:6,630億円
③シンガポール:6,222億円
となっています。
マカオはもともと世界有数のカジノ都市でしたが、2002年にカジノライセンスを外資系企業に開放すると、巨大カジノが次々と建設されていきました。
世界最大規模を誇る「ザ・ヴェネチアン・マカオ」は、カジノ面積だけで50,778㎡と東京ドーム(46,755 m²)を上回る大きさです。
中国経済の急成長もあいまって、マカオには本土からの顧客が増え続け、2006年にはラスベガスの売上高を超え、その後は(中国政府の反腐敗キャンペーン等の影響はあるものの)独走状態で他を圧倒しています。
アメリカは、1931年にネバダ州で初めてカジノが合法化され、砂漠の人工都市ラスベガスの発展が始まります。その後、1976年にはニュージャージー州においてアトランティックシティ限定でカジノ解禁となります。アトランティックシティは、“東海岸のラスベガス”として賑わいをみせました(トランプ次期大統領もかつて3軒のカジノを経営していました)が、他にもカジノを合法化する州が増えてくると次第に人気に陰りがでてきます。一方、ラスベガスはカジノ中心のビジネスモデルから脱し、ショー公演など総合エンターテイメント路線への転換がうまく成功しているようです。
シンガポールでは、2010年に2つの統合型リゾート「マリーナベイ・サンズ」「リゾート・ワールド・セントーサ」が開業します。シンガポールでカジノが公認されているのはこの2ヵ所のみなのですが、それで数年でラスベガスの売上高に追いつく勢いなのですから大成功といってもよいでしょう。なお、2施設の売上げ全体のおよそ8割はカジノが占めるそうなのですが、カジノ中心の収益構造と思わせないイメージ戦略も上手だと思います。
IR推進で後発の日本にもまだチャンスは残されているでしょうか。
カジノ収益に頼らないIRが非現実的だとすると、カジノ経営のノウハウがない日本では外資系のプロの力を借りる必要があるでしょう。ちなみに、マカオの「ザ・ヴェネチアン・マカオ」とシンガポールの「マリーナベイ・サンズ」は、いずれもラスベガスのカジノ運営会社「ラスベガス・サンズ」による運営です。
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