先日は本欄で消防について取り上げました (『火の用心』)が、今回は救急の話です。
近年、救急車の出動件数は増え続けており、2015年には年間で600万件を超えました。およそ5秒に1回の割合で出動している計算です。
出典:平成28年版「消防白書」
2016年4月1日現在で、全国にある救急自動車は6,210台です。年間600万件以上の出動だと単純計算で1台あたり1日2~3回は出動していることになりますね。
ちなみに、救急隊員数は6万1,053人(うち、女性は1,199人)ですが、7割は消防業務も兼務しています。
救急車の出動件数の増加に伴い、通報から現場到着まで、あるいは病院に入るまでの所要時間が年々延びてしまっています。特に、病院搬送までの平均所要時間はここ10年ほどで10分近く延び、2015年では39.4分、1時間以上かかっているケースも全体の1割程度あり、非常に深刻な状況です。
【カーラーの救命曲線】
出典:平成28年版「消防白書」
特に緊急性の高い傷病者に優先的に救急対応していくためにはどうすればよいでしょうか。
2015年に救急車で搬送された人は547万8,370人でしたが、実は約半数は入院不要の軽症と診断されています。
いざ自分自身あるいは身近な人が急病や負傷、事故に遭ったりすると、不安になってとにかく119番通報したくなる気持ちは理解できます。ただ、中には病院までのタクシー代わりに救急車を呼ぶ非常識な人もいますし、年に何十回も通報するような“頻回利用者”も一定数いるのが実情です。
もちろん本当に重症であればためらわずに救急要請すべきですが、できる限り自分達で緊急度判定(トリアージ)できるようになることも望ましいでしょう。消防庁では『救急車利用マニュアル』を作成しています。
●総務省 消防庁 『救急車利用マニュアル』
https://www.fdma.go.jp/publication/portal/items/portal002_japanese.pdf
救急車の1回の出動には4~5万円の費用がかかっているといわれます。海外ではアメリカやオーストラリアなど救急車が有料の国も多いですし、日本でも悪質なケースには懲罰的に料金を課すことを検討してもよいのではないでしょうか。
最初のグラフを見ると、実際の救急車搬送人数は出動件数より少なく、間違いやいたずら等による通報もなかなか減らないようですね。
ちなみに、緊急通報用の電話番号「119」は、当初はダイヤル式の電話でも早くつながるよう「112」としたものの、かけ間違いが多かったため最後だけダイヤルを回すのに時間がかかる「9」に変えて「119」になったそうです。
なお、最近では4割近くが携帯電話からの通報とのことです。
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