トイレットペーパー買い占め騒動

トイレットペーパー買い占め騒動

トイレットペーパー騒動、再び

新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、マスクだけでなく様々な物資の品不足不安から買いだめの動きが続いています。

ただ、中には根拠の薄い流言(デマ)が発端となっているケースも多く、その象徴的な例が1973年のオイルショック時を彷彿とさせるようなトイレットペーパーの買い占め騒動ではないでしょうか。

2月のはじめに香港におけるトイレットペーパー不足が報じられましたが、そのうちSNSを中心に「日本でも中国からの輸入がなくなるとトイレットペーパーが品切れになる」等といった情報が飛び交うようになりました。

そして、2月下旬になると実際に買い占め行動が目立つようになり、28日には日本家庭紙工業会がホームページ上で、ティッシュペーパーのほとんどは国内生産である、と供給・在庫不安を打ち消すリリースを出しました。

●日本家庭紙工業会からのお知らせ

ただ、この内容だと具体的な数字もなく、不安を払拭するにはやや説得力を欠くように思います。

そのような指摘があったのかどうかはわかりませんが、3日後の3月2日には第2報のお知らせを発表しました。

●日本家庭紙工業会からのお知らせ(第2報)

※いずれも出典:日本家庭紙工業会ホームページ

こちらは前回に比べるとかなり情報量が豊富です。

1ヶ月のトイレットペーパーの平均的な消費量は一人当たり4ロール程度などと示すことにより、過度な買いだめは不要と訴えています。

トイレットペーパーの生産、消費の実態

経済産業省の生産動態統計調査によると、2019年の各月の国内トイレットペーパー生産量・消費量は以下の通りです。

2019年のトイレットペーパー生産量・消費量

生産量・消費量とも毎月8~9万トンで安定して推移しており、この傾向はここ数年変わっておりません。

一人ひとりがトイレットペーパーを使う量はそれほど変化しないでしょうから、月によって多少の増減があるとしても年間の消費量はかなり正確に予測できるでしょうね。

その需要量に合わせ、少し余裕をみるくらいで生産調整していることがうかがえます。

従って、買いだめなどにより急に消費が増える月があったりすると、一時的に供給が追い付かないこともあるでしょうが、一度買いだめした人はしばらく購入しないでしょうし、通常通りの生産を続けていれば品不足状態はいずれ解消されます。

ちなみに、1ヶ月のトイレットペーパーの平均的な消費量は一人当たり4ロール程度とのことでしたが、こちらは結構男女差があるようです。

(一社)日本トイレ協会の調査によると、男性は1ヶ月の使用量が1.6ロールなのに対し、女性は4倍以上の6.8ロールも使うそうです。

1回のトイレで使用するトイレットペーパーの長さ(日本トイレ協会)

従って、家庭のトイレットペーパー消費量を考える際には男女の家族人数も考慮しましょう。

個人差もあるでしょうが、男性の一人暮らしなら一年間で20ロールあれば足りるでしょう。それに対して女性が3人いる世帯では1ヶ月に20ロール以上必要かもしれません。

流言(デマ)に惑わされない

アメリカの心理学者、G.W.オルポートとL.ポストマンは、半世紀以上前に、著書『デマの心理学』の中で

R(流言:Rumor)=i(重要性:Importance)×a(曖昧性:Ambiguity)

という式を示して、特に災害時など不安な状況下では、内容が重要で、状況が曖昧であればあるほど、デマの拡散は大きくなると主張しました。

当時に比べると、今は情報の真偽を確かめるデータ量ははるかに多くなったと思われますが、デマの伝播スピードの速さにファクトチェックが追い付かなければ真偽不明な「曖昧性」は残ってしまいます。

また、今回のトイレットペーパー騒動では、SNS上でも割と早くにデマを否定するコメントが多く拡散されていました。それら自体は善意の発信だったのでしょうが、皮肉にも騒動の話題性を広げてしまい、さらにマスコミ報道の取り上げ方も不安に拍車をかける結果となってしまったように思います。

・SNSでは「トイレットペーパーは十分な在庫がある」というコメントが多いものの、実際にはどのお店も売り切れ状態

・テレビのニュースでは、トイレットペーパー不足の噂を否定するコメントを述べつつ、空っぽの商品棚を映している

といった具合では、目の前の現実が優先して冷静な判断が難しくなるのも当然でしょう。

特に、トイレットペーパーは、生活必需品でありながら価格も手頃で長期間保存できる一方、かさ張るので商品がないと品薄感がより強まる、ということで、買いだめの対象になりやすい特徴があると思います。

また、改めてマスメディアの影響を考えてみる必要もありそうです。

総務省で実施している「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」では、テレビや新聞など各メディアの信頼度を質問しています。

平成30年度の調査結果は以下の通りでした。

各メディアの信頼度

出典:総務省「平成30年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」

インターネットに対しては若い世代も含めて結構懐疑的である一方、テレビや新聞に対してはどの世代もかなり信頼度が高くなっています。

ただ、マスメディアとインターネットが相互に参照し合いながらトピックを増幅していく関係が強まってくるとすると、流言(デマ)に惑わされないメディア・リテラシーを身につけるためには、もう少しマスメディアに対しても批判的な目で見ていく必要があるように思います。