「996(きゅうきゅうろく)問題」って聞いたことがありますか。
「朝の9時から夜の9時まで、週6日間働いている」ということで、中国の経済成長をけん引してきたIT企業などでの長時間労働の実態を表した言葉です。
他にも「907(きゅうぜろなな)」というのもあって、こちらは「朝の9時から深夜0時まで、週7日間働いている」ことを表しています。

「毎日、夜中まで」というと、バブル期の「24時間戦えますか」を連想しますが、バブルの頃は、「戦う」ほど、それに見合った給料や昇進を手に入れることができた(ような気がする)「古き良き時代」として記憶が美化されつつあります。

一方で、中国の「996」や「907」は、競争原理の下で長時間労働を強いられる若者の厳しい労働環境を告発する言葉となっているようです。

実際、バブルの頃ってどのくらい働いていたのか?デスクリサーチをしてみました。
ご紹介するのは、労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2018」に掲載されている年間平均労働時間の推移についての国際データです。

【一人当たり平均年間総労働時間(就業者)】
一人当たり平均年間総労働時間(就業者)の推移についてのグラフ
出典:労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2018」

国によって統計制度の違いがありますので、データの内容を詳しく吟味せずに、他の国と比べて多い・少ない
の議論をすることはできませんが、トレンドとして、日本やドイツでは労働時間が大きく減少してきていることがわかります。

日本のデータについてみると、バブル期の1990年は2,031時間あったのが、2016年には1,713時間と、30年弱の間に300時間以上、割合にすると15%以上、労働時間が短くなっています。

こうした労働時間縮減の努力とその成果が続いているにも関わらず、今なお、「働き方改革」や「ワーク・ライフバランス」など、長時間労働をめぐる問題への取組が最重要課題の一つとして存在しているわけです。
「単純な国際比較はダメよ」と言われても、上のグラフを見ると、「ドイツやフランスに比べると…」となりますよね。

もう1つ、なかなか興味深いデータがあります。
こちらは、経団連が、会員企業等400社、対象労働者1,876,341人(パートタイム労働者を除く期間を定めずに雇用されている労働者)の労働時間の実態を調査したデータです。

【KPIの導入と平均年間総実労働時間】
KPIの導入と平均年間総実労働時間グラフ
出典:経団連「2018年労働時間等実態調査集計結果」

労働時間等に関する「KPIを導入している」と回答した企業について、「PDCAを回しているかどうか」の違いによって労働時間をみてみると、「KPIを導入し、PDCAを回している」企業の方が、「KPIを導入しているが、PDCAを回していない」企業に比べると、労働時間が顕著に短くなっています。

経団連のレポートには、「KPIは設定するだけでなく、PDCAを回すことではじめて効果を発揮することが裏付けられよう」と指摘されています。

これは、調査にも言えることで、本来は改善取組の効果測定指標である「満足度」の定点観測そのものが目的になってしまうことがよくあります。
よく言われる「手段の目的化」です。

一見、面倒なようでもPDCAのサイクルを見据えてしっかりとした枠組みを作って取り組むほうが、結果的にはより大きな効果が得られるということを、あらためて確認したところです。

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