待ち時間対策はどこまで必要か?

長い連休は絶好の行楽機会ですが、交通渋滞や行列待ちを考えると、特に人気スポットに出掛けるのはためらう人も多いかと思います。

待ち行列に関しては、電話交換の問題などで古くから研究対象となっており、人の行列だけでなく、道路・鉄道の輸送システム、工場の生産管理、コンピュータのシステム設計など幅広く応用・発展してきました。
身近なところでは、行列の待ち時間を推測するのに役立つ「リトルの法則」が有名です。

リトルの法則

待ち時間(分)=(行列に並んでいる人数)÷(自分の後ろに1分間で並んだ人数)

例えば、話題の絵画展を開催している美術館に入場するのに80人くらいの行列ができていて、最後尾に自分が並んだ1分後に後ろに4人並んでいた場合、およその待ち時間は80÷4=20分と推測されます。
長い行列だと先頭がどの位のペースで進んでいるか分かりづらいですが、行列の長さ自体があまり変わらないなら、「1分間で自分の後ろに並んだ人数」≒「1分間で行列が進んだ人数」と考えてもよい、というわけです。
実際にこの法則が正確に当てはまる機会は限られるかもしれませんが、だいたいの待ち時間を知りたい場合には目安として使えるでしょう。

さて、待ち時間を減らす対策としては、受付や対応スタッフを増やしたり、整理券を配ったり、予約制にしたりするなどして実際の待ち時間を減らす以外に、待ち時間はあまり変わらなくても長いと感じさせないようにする工夫も考えられます。

待ち時間の心理については「マイスターの8つの法則」というのがあり、それに対応する形で、待ち時間中の用件・注文の聞き取り、無料Wi-Fi環境、予想待ち時間の表示、フォーク並び等、体感の待ち時間を減らそうとする方法がいろいろ考えられてきました。

マイスターの8つの法則
①何もしていないと時間は長く感じる
②人はとにかく何かに取りかかりたい
③不安があると待ち時間は長く感じる
④待ち時間が分からないと長く感じる
⑤理由がない待ち時間は長く感じる
⑥不平等な待ち時間は長く感じる
⑦待つ価値があると思える時間には寛容になれる
⑧一人だと待ち時間は長く感じる

ただ、最も効果的なのは「⑦待つ価値があると思える時間には寛容になれる」ための対応ではないでしょうか。

許容できる待ち時間は、性格など個人差もあるでしょうが、シチュエーションによって大きく異なります。
前から行きたかった飲食店での入店待ち、どうしても入手したい商品の先着販売、テーマパークでの人気アトラクション等なら、多少の待ち時間は苦にならないでしょうし、むしろ行列に並ぶこと自体を楽しめるかもしれません。
一方、病院や役所、銀行、携帯ショップなどは、一般的に待たされるイメージが強いですが、ある程度覚悟していてもやはり待ち時間を苦痛に感じる人が多いのではないでしょうか。

お客様の求める製品・サービス品質と満足度の関係を示した「狩野モデル」という考え方があります。
東京理科大学教授だった狩野紀昭先生が提唱したモデルですが、サービス品質としての待ち時間はシチュエーションによって「魅力品質」にも「当たり前品質」にもなり得るのではないかと考えます。

【狩野モデル】
「魅力品質(満足要因)」は、不充足でも特に不満ではない(仕方がないと思う)が、充足されれば満足。「一元的品質(一般的)」は、充足されれば満足だが、不充足だと不満。「当たり前品質(不満足要因)」は、充足されて当たり前で特に評価されないが、不充足だと不満。

お客様に「待ち時間(分)」「待ち時間の満足度」「サービスの総合満足度」をリサーチすれば

➢待ち時間が長くても満足度は下がらないが、待ち時間が短いと満足度が上がる ⇒「魅力品質」

➢待ち時間が長いと満足度が下がるが、待ち時間が短いと満足度が上がる
⇒「一元的品質」

➢待ち時間が長いと満足度が下がるが、待ち時間が短くても満足度は上がらない ⇒「当たり前品質」

のどれに当てはまるかが分かります。

例えば、混んでいると思っていた有名レストランで多少待たされたとしても満足度は特に下がらないでしょうが、もしすぐに入店できたら満足度は上がることでしょう。
一方、病院の受付でいつも長時間待たされている患者さんは、たまにすぐに診察してもらえたとしても過去の不満足経験の蓄積からなかなか満足度は上がらないかもしれません。

このように、待ち時間が「当たり前品質」となってしまっている場合、どのような対応を取っていけばよいでしょうか。
過去の負の記憶を上書きするには時間がかかりますので、地道に待ち時間を減らしていく努力は続けていくべきです。
ただし、待ち時間をゼロより短くすることは不可能なわけですし、スタッフや設備費用など限られたリソースを優先投入して待ち時間を限りなくゼロに近づけることが満足度向上に効果的かどうかはよく検討する必要があります。

物理的に待ち時間を減らしていくだけでなく、マイスターの法則の「⑦待つ価値があると思える時間には寛容になれる」ためのサービス・接遇改善により体感待ち時間を減らしていくことにより、実際の待ち時間はあまり変わらなかったとしても、待ち時間の満足度を改善し、さらには「魅力品質」に転換していくこともできるのではないかと思います。

最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。