先日、Googleの人工知能(AI)「アルファ碁」が欧州チャンピオンのプロ棋士に勝利したニュースが話題となりました。
人間とコンピュータの頭脳対決というと、1997年に当時のチェス世界チャンピオンだったガルリ・カスパロフ氏がIBMのスーパー・コンピューター「ディープ・ブルー」に負けた(1勝2敗3引き分け)ことが思い出されます。この時の敗因はプログラムのバグによって適当に指された一手を人間側が深読みしすぎたためとも言われていますが、その後も人工知能の開発は進み、2011年には自然言語を理解・学習して人間の意思決定を支援するIBMの人工知能システムWatsonがアメリカのクイズ番組「Jeopardy!」で人間に勝利し、将棋の世界でも2013年に行われた第2回電王戦(現役プロ棋士5人と5種類のコンピュータによる団体戦)でコンピュータが勝ちました。
盤上のマス目の数(チェスは8×8=64マス、将棋は9×9=81マス、囲碁は18×18=324マスで交点(目)の数は19×19=361)だけでなく駒の役割や動かし方といったルールの違いから、チェスや将棋に比べると囲碁の打ち手のパターンは桁違いに多く(およそ10の360乗)、コンピュータが囲碁で人間に勝つようになるのはまだ先の話と考えられていただけに今回の結果は衝撃です。
10の360乗という数の大きさは想像もつきませんね。数の単位としては「億」「兆」「京」「垓」・・・「無量大数」と続きますが、無量大数でも10の68乗です。宇宙に存在する原子の数をすべて合わせても10の80乗くらいといわれていますので、囲碁の打ち手の数は天文学的なスケールをも遥かに超えるわけです。
ちなみに、英語ではさらに大きな数の単位があり、例えば10の100乗をgoogolと呼びますが、このgoogolのスペルミスがgoogle(グーグル)の社名の由来とされています。
「アルファ碁」にはディープラーニング(深層学習)という機械学習手法が採り入れられており、人間が経験を積んで学習していくのと同じように人工知能が学習を繰り返して自ら進化していくようになっています。3月9日から世界最強と目されているイ・セドル九段(韓国)との対局が組まれており、こちらの勝敗も非常に気になります。
人間の脳が生み出した人工知能がいずれ人類の知能を超える、というSF的状況はあまり想像したくないですが、2045年にはそうした「シンギュラリティ(技術的特異点)」に達するという予測もあります。今後10年、20年のスパンでも、進化した人工知能やロボットの活躍によって私達の生活は大きく変わることでしょう。
英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授は、『The Future of Employment(雇用の未来)』という論文の中で、今後10~20年で米国の全労働人口の約47%の仕事がコンピュータ技術により自動化されるリスクが高い、と発表しました。
また、野村総合研究所がオズボーン准教授と同様のアプローチを日本に当てはめて分析したところ、やはり日本の労働人口の半数近くが従事している現在の職業はAIやロボット等によって代替される可能性が高い、としています。
人工知能やロボット等による代替可能性が高い職業の中には既にかなり省力化が進んでいるものもありますが、必ずしも機械化により職業そのものがなくなって完全に雇用が失われてしまうというわけではないでしょうし、逆に代替可能性が低いとされる職業についても人工知能やロボットの活用が広がっていくことは間違いないでしょう。
人工知能やロボットと人間の付き合いはまだ始まったばかりであり、今後しばらく試行錯誤を続けながら「人間らしい働き方とは何か?」が見直され、今までになかった新しい職業がいくつも登場してくることでしょう。
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