将棋の藤井聡太四段が、デビュー後負けなしの29連勝で公式戦の連勝記録を30年ぶりに更新しました。
近年、将棋や囲碁の世界でトップ棋士が次々とAI(人工知能)に敗れる中、将棋ソフトも活用しながら研鑽を積んで異次元の勝負強さを見せる若き才能が突如現れたことは、人類 vs. コンピュータといった対立を超えたポストヒューマン時代到来の予感もする、と言うと少し大げさでしょうか。

それまでの連勝記録は、神谷広志八段のもつ28連勝でした。藤井四段の新記録達成をうけて神谷八段が「凡人がほぼ運だけで作った記録を天才が実力で抜いた」とコメントしたのが印象的でしたが、彼は「28という完全数は一番好きな数字」とも述べています。

「完全数」とは、約数をすべて足す(1を含め、その数自身は除く)と元の数に等しくなる数のことです。

「6」・・・約数の「1」「2」「3」の和は「6」
「28」・・・約数の「1」「2」「4」「7」「14」の和は「28」

等が完全数ですね。
完全数は「メルセンヌ素数」と関係があります。以前、本欄でもとりあげたことがありますが(「数の不思議」)、メルセンヌ素数とは「2n-1(2をn乗して1を引いた数)」の形(メルセンヌ数)で表される素数のことです。そして

2n−1が素数であるような正の整数 nに対して,2n−1(2n−1) は完全数

という関係があるのです。2n−1が素数ならnも素数なのですが、例えば

n=2の場合、2n−1(2n−1) = 2×3 =「6」
n=3の場合、 = 4×7 =「28」
n=5の場合、 = 16×31 =「496」
n=7の場合、 = 64×127 =「8,128」

となり、3、7、31、127はメルセンヌ素数で、「6」「28」「496」「8,128」が完全数というわけです。この4つの完全数は古代ギリシャの時代から知られていました。
n=11だと、2n−1の2,047(= 23×89) は素数ではないため、次のメルセンヌ素数はn=13の場合となり、「8,128」の次の完全数は「33,550,336」と一気に数が大きくなります。
ちなみに、これまでに見つかったメルセンヌ素数は49個です。すなわち、現在わかっている完全数も49個しかないわけです。

●メルセンヌ素数のリスト
https://www.mersenne.org/primes/

2016年に発見された49個目のメルセンヌ素数は、n=74,207,281ですが、この時に新たな完全数(とても書ききれません…)も見つかったことになります。

なお、メルセンヌ素数と完全数の関係は、完全数が偶数の場合に当てはまる、つまり今のところ完全数はすべて偶数なのですが、奇数の完全数が存在するかどうかは実はまだわかっていません。

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