私のオフィスはビルの4階にあるのですが、1階にエレベーターのかごが降りていなければだいたい階段を昇るようにしています。皆さんは、何階までなら階段で昇り降りしてもよいと思われるでしょうか。

建築基準法には、高さ31m(8~10階建てのビル・マンションに相当)を超える建築物には非常用エレベーターを設置しなければならない、と記載されているだけですが、各地の自治体では5階あるいは6階以上の場合はエレベーターを設置するよう条例で定めている所が多いようです。公共施設の場合は階数にかかわらずエレベーターを設置するバリアフリー化が進んでいますね。(一社)日本エレベーター協会によると、全国で稼動しているエレベーターの台数は73万台以上(2016年3月現在)とのことです。

エレベーターの起源は古く、人力でロープを引っ張るタイプなら2,000年以上前のギリシア時代からあったそうです。ただ、現在のような電動エレベーターが登場するのは19世紀後半になってからです。日本では1890年(明治23年)に凌雲閣(浅草十二階)に初めて電動エレベーターが設置されました。当時、1階から8階まで1分程度で到着したそうですが、故障続きですぐに運転中止となってしまいました。ちなみに現在、日本最速のエレベーターは横浜ランドマークタワーにあり、分速750m(時速45km)で2Fロビーから69Fの展望フロアまでの所要時間は約40秒です。

利用者の立場からすると、エレベーターの速さよりも“待ち時間”が一番気になるところでしょうか。
2013年にシチズン時計が実施した調査で、エレベーターで待たされてイライラする時間を聞いたところ、およそ4割が30秒以下、7割の人は60秒待たされるとイライラすると回答しています。

エレベーターで待たされるとイライラする時間


出典:シチズン時計株式会社
『ビジネスパーソンの「待ち時間」意識調査(2013年)』

エレベーターの設置台数が適切かどうかは待ち時間と輸送能力のバランス(エレベーターの交通計算)で評価されるのですが、特に「平均運転間隔」と「5分間輸送能力」が重要とされます。

「平均運転間隔」とは「1階からエレベーターが出発する時間間隔の平均値」のことで、待ち時間の目安となるわけですが、こちらは長くても60秒以内が望ましいでしょう。

「5分間輸送能力」とは「フル回転で輸送した結果、5分間で運び得た乗客数(の割合)」のことで、利用者が集中した時の最大輸送能力を表します。例えば、従業員1,000人が働くオフィスビルで「5分間輸送能力」が5%という場合、5分間で50人(1,000人の5%)しか運べませんので、出勤時や昼休みなどエレベーターが最も混雑する時間帯では何十分も待たされることになりかねません。非常時の安全面からも「5分間輸送能力」を高めることが求められます。

限られた台数でエレベーターの輸送能力を最大限に活用するためには、定員を増やしたり、階数によって速度を変える等、待ち時間や混雑度を最小化する効率的な運転制御が必要になってきます。場合によっては、利用者が待っている階を通過して、次に到着するかごに乗ってもらった方が、結果的に多くの利用者をより早く運べる、というようなこともあるわけです。最近は、エレベーターが何階にいるのかわからず、到着が近づくとランプや音声で知らせるタイプもありますが、目の前を通過される利用者の気持ちを考えると確かに階数を表示しない方がいいケースもあるでしょう。

エレベーターの定員増については、六本木ヒルズなどでダブルデッキ(2階建て)エレベーターが導入されたりしていますね。ちなみに、日本では1人あたりの体重を65kgと設定して定員を決めているのですが、海外だと75kgだったりするようです。荷重の偏り具合などによっては定員以下でも重量オーバーのブザーが鳴ってしまいますので、混雑したエレベーターに乗り込む際はご注意を。
また、階数ボタンを押し間違え、その階で誰も乗り降りしなかったりすると気まずいですし、ドアの開閉時間もやたら長く感じてしまいますね。メーカーによっても異なりますが、最近のエレベーターだとボタンの連打や長押しなどの操作でキャンセルできるみたいです。自分一人しかエレベーターに乗っていない時なら試してみたくなるかもしれません。

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